栄通記

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2008年 07月 30日

708) CAI02 「FIX・MIX・MAX!アワード入賞者展」 7月23日(水)~8月5日(火)

○ FIX・MIX・MAX!アワード入賞者展
    優秀賞=大島慶太郎 笠見康大 鈴木謙彰
    奨励賞=太田博子 織笠晃彦

 会場:CAI02 
    中央区大通西5丁目 昭和ビル・B2 (地下鉄大通駅1番出口)
    電話(011)802-6438
 会期:2008年7月23日(水)~8月5日(火)
 休み:定休日は日曜日
 時間:13:00~23:00

 主催:当館 ギャラリー門馬
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 なかなかハッピーな展覧会だ。
 ブロックむき出しの広い空間は「肉体以前の織笠君、可愛くいやらしくの太田さん、エロスまっしぐらの鈴木君」という部屋になっている。統一テーマなどはない選抜展なのに、「エロス・展」になっている。

○ 織笠晃彦の場合

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 織笠君は札幌市立大学の3年生だ。いささか栄養不良気味の体躯や風貌が、かえって学生らしく美や芸を愛するオタク的青年に見えて、僕には好感が持てる。飛び出そうな目、言わずにはおけない口元、愛すべき青年だ。

 本人の背景の作品は「くる」。今回の力作だと思う。コンピューターで細かく仕上げていった作品の上から、フリーハンドで目やぐるりを装飾している。おそらく、機械による操作での作品化は好きなのだが、機械オンリーになることに盲目的な反発があるようだ。「機械と生理」を処理できないでうごめいている姿に好感が持てた。「デザインー文明の利器ー直筆(生理)的表現」、今後の織笠君をそういう目で関わっていきたい。


○ 太田博子の場合

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 ↑:「ラブシーン」
 非常にいやらしい画題です。この怪しげな世界を刺繍で軽く表現していることに、非常に感心しています。江戸時代の「春画」を見る思いです。こういうのを20代前半の女子学生が表現しているのに驚きます。
 刺繍だから上手くいったのか、彼女の実力だから上手くいったのか今後も楽しみな作家です。

○ 鈴木謙彰の場合

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 ↑:「analgesics」。(「痛みを感じない」?)

 エロスそのものです。何が良いかと云うと、たじろがずに大きく表現していることです。2展1組、8点1組で空間を女を自分自身を見ている。金網をかけたりして、試行錯誤している。今展のテーマはエロスですが、鈴木君の現在の関心がどういうものかが気になります。


 さて隣室の白い部屋はムードを異にしています。映像と絵画ですが、それぞれがあまりに実験にこだわっている感じです。自分自身のテーマと美学的テーマでうごめいている風に見えます。

○ 笠見康大の場合

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 ↑:「夢のひだり」・2008 油彩。
 一応タイトルはついています。僕は彼の絵が今後どう変化するかに興味を持っている。彼の作品は勉学の一里塚だと思っている。今展のタイトルも「夢のひだり」というものがあって、創作されたものではないと思っている。絵画上の問題でカラフルにしたので、たまたまそういうタイトルにしたのだと思っている。絵画上の軌跡と笠見君の心の軌跡がどういう交わりを見せるかに興味を持っている。

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 ↑:笠見君がこういうのを見せるのはいい事だ。


○ 大島慶太郎の場合

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f0126829_23531155.jpg ガタガタと映写機の音がうるさく地下室に響いている。フィルムが怪しげに回転している。画像はせわしなく色と模様を見せている。何と言っても、映写機そのものを見せる展示だ。大島君はいろんなことを考えて、青年のおもちゃのような機械仕掛けの映写機装置を作る。時代の記念品のようにして作品化する。古き良き時代を懐かしむような大島君の感覚が、その映像作家としての実験的取り組みとは別にして、僕には好感が持てる。
 大島君は映写機のバタバタ音、パラパラ感覚が好きなんだと変に納得してしまう。
 青年のおもちゃ、そして段々と大人のおもちゃになり、「おもちゃ」が表から消えていくのだろう。



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by sakaidoori | 2008-07-30 21:15 | CAI(円山) | Trackback | Comments(0)
2008年 07月 03日

681) CAI02 ②「オープニング展覧会・サッポロ・アート展」 終了・5月24日(土)~6月21日(土)

○ オープニング展覧会
    「サッポロ・アート展」
        
  【出品作家】
 伊藤隆介 今村育子 岡部昌生 上遠野敏 黒田晃弘 鈴木涼子 3KG 清治拓真 仙庭宣之 高幹雄 高橋喜代史 武田浩志 中嶋幸治 端聡 坂東史樹 久野志乃 祭太郎 wabisabi・・・以上18名。
ーーーーーーーーーーーーーーーー(6・13)

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 ここは兎に角、地下2階に行くのです。地下に下りる階段が幾つかあり、見つけにくいとことですが、迷路を楽しんで下さい。1階、地下1階の店舗内通路をさ迷いながら、目指す地下二階のCAI02を見つけて下さい。

 階段を降りきれば、左側が①で紹介した第1室です。右側が上の写真の第2室です。(パンフにはこれ等の空間をraum1、raum2と名づけています。おそらくドイツ語で、「ラオム・1、ラオム・2」と公称は呼ぶのでしょう。raumはroomだと思います。オーナーのドイツ好みが分かります。)

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 ↑:仙庭宣之、「plane」。
 仙庭さん好みの飛行機シリーズの飛行機そのものです。
 飛行機をリアルに描きつつ、リアルさを壊さないでもう一つの世界を垣間見せたいということでしょうか。不思議な魅力のある絵画だとは思いますが、あまりに静かに深く同じ画題に取り組んでいて、表現にブレが無いのが不気味なくらいです。


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 ↑:武田浩志、「Afterward」。
 武田君は第1室で現在個展をしています。早急に載せたいと思います。コメントはその時に書きます。


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 ↑:wabisabi、「Flesh and Blood」・シルクスクリーン。
 「肉と血」という意味でしょうか。何ともドロドロしたタイトルですが、体の中の血流をユーモラスに表現しているみたいです。


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 ↑:中嶋幸治、「往来、なけなし」・2008年 紙。
 今展で注目すべき作品の一つだと思う。作品の全体図はただ白い絵にしか見えないので、次に部分図を載せます。

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 紙に鉄筆による線描画だと思う。間違いなく札幌の地図です。今春のCAI修了制作展でも、彼は同じような作品を出していた。その時は航空写真の模写として見た。何処かは深く考えなかった。今回は、海に面したラインも、札幌のメイン道路の線も明瞭なので札幌であることは間違いないと思う。札幌の西の川が、周りの直線の風景を斜めに曲がりながら遮断している。鉄筆の曲線が筋くれだって見えて印象的だ。
 その白さ美しさに驚かされる。それ以上に、一筆一筆の線に乗り移った、激しいエネルギーを感じる。美しく閉じ込められているから、その集合体は余りに痛ましい。紙を肉体に譬えることができるかもしれない。身を刻めば赤い血が流れる。地図としての札幌ならば、その白さは雪に譬えることができるかもしれない。赤雪(せきせつ)。だが、僕にはこの白さが雪に見えない。自然の雪、ボリュームという生命体のそれに見えない。風土としての時間軸の重なりを抽象化した白に見える。そこに記憶なのか、痛みなのか線を刻んでいく。ガリガリと音がする。静かな部屋に音だけがする。
 なぜ札幌か?それは知らない。彼にとって愛すべき街なのか、憎むべき街なのか?青春の磁場と言えば詩的だが、わからない。僕達は作品でどこまで作家に迫れるのか?彼は何かを言いたくて発表し、何かを拒否したくて、ただ鉄線を入れていくだけに見える。
 「なけなし」、自分を打ち捨てたさすらい人の響きがする。さすらい人が街を「往来」している。

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 ↑:中嶋幸治、「sanctuary sheet」、、「sanctuary sheet/view」・2008年 紙・インク。
 サンクチュアリは「聖域」ということだろう。この白い絵が聖域なのか、画家だけの秘密の場所がこの絵に閉じ込められているのか?
 都市における「サンクチュアリ」と聞けば「アジール」という言葉を思い出す。中世において宗教色の濃厚な治外法権地域だ。この作品の「サンクチュアリ」が、限りなく「個」を引きずる処なのか、「個と社会(制度・風習・因習)」の緊張を前提にしているのか・・・。
 「サンクチュアリ・シーツ」、中嶋君はテンポラリーで昨年個展を開いた。あそこは、今年に詩人・吉増剛造氏を常設展で長く紹介していた。氏の作品に「石狩・シーツ」がある。彼を意識した作品だろうか・・・。


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 上遠野敏、「地の塩・・世の光」・2008年 原皮をなめした羊の毛皮 耳・おっぱい付き。
 タイトルと羊ということで、聖書好みが分かります。左側が「地の塩」で、聖書をモチーフに、右側が仏典をモチーフにした八百万信仰です。
 非常に硬いテーマですが、「おっぱい付き」というのが、上遠野風の遊びでしょう。


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 ↑:清治拓真、「対、空き巣メモ(改)~ピン!ときたら110番、の巻~」。
 一人我が道を行く清治拓真(せいじ・たくま)君です。ポップとアートとユーモアを模索しているようです。


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 ↑:高橋喜代史、「ア」。
 お馴染み「ドーン・男」の、別名「飛び出し野郎」の高橋喜代史君です。春は近美で大きな大きな飛び出し「富士山」を披露した。昨年はCAIで「ドーン」を僕の前に見せてくれた。「意味は無いが意欲はある」と、栄通記に書いた。続けてこのシリーズを見ていると、「意味はあるが意欲はあるのだろうか?」と書きたくなる。哀しい高橋君の性を思ってしまった。
 ところで何故「ア」かというと、円山のCAIオープン時に高橋君は墨を含んだ雑巾で、壁に「あ」と書いたとのこと。祝砲だ。その縁にあやかって今回はカタカナの「ア」。元気よく飛び出そう、ということです。

by sakaidoori | 2008-07-03 23:57 | CAI(円山) | Trackback | Comments(1)
2008年 06月 15日

677) CAI02 ①「オープニング展覧会・サッポロ・アート展」 5月24日(土)~6月21日(土)

○ オープニング展覧会
    「サッポロ・アート展」
        
 会場:CAI02
    中央区大通西5丁目 昭和ビル・B2 (地下鉄大通駅1番出口)
    電話(011)802-6438
 会期:2008年5月24日(土)~6月21日(土)
 休み:定休日が日曜日
 時間:13:00~23:00 (オープニング当日のみ、18:00~)

 【出品作家】
 伊藤隆介 今村育子 岡部昌生 上遠野敏 黒田晃弘 鈴木涼子 3KG 清治拓真 仙庭宣之 高幹雄 高橋喜代史 武田浩志 中嶋幸治 端聡 坂東史樹 久野志乃 祭太郎 wabisabi・・・以上18名。
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 (会場の割には大所帯の展覧会です。ですが、人数の割には思いのほかに面白い展覧会です。日々、書きたい展覧会もあるので、会期中ということで、少しづつ書き増して行きます。写真だけ載せて、感想記が後になる場合もあります。要するに、会期中に会場に足を運んで貰いたいという事です。その刺激の為の、栄通記です。)


 興味深々の場所ですので、地上からの道筋を載せました。その説明は明日します。個別写真も、暫時していきます。

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by sakaidoori | 2008-06-15 22:12 | CAI(円山) | Trackback | Comments(0)
2008年 06月 06日

645) 門馬 ①「上條陽子・熊谷悠子 『明日展』」 6月2日(月)~6月10日(火)

○ 上條陽子・熊谷悠子
    「明日展」

 会場:ギャラリー・門馬 
     中央区旭ヶ丘2丁目3-38・(バス停旭ヶ丘高校前近く) 
     電話(011)562ー1055
 日程:2008年6月2日(月)~6月10日(火)・会期中無休
 時間:11:00~19:00

 主催:当館(ギャラリー門馬)
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 期待は裏切られてしまった。

 2人展ということで、作品を知っている熊谷悠子を中心に見に行った。彼女は現・オーナー大井恵子の姉で、故・門馬よ宇子の長女だ。
 だが、彼女の展示は全体の導入的な存在で、実質的な上條陽子・展であった。熊谷悠子はあえて自作の発表を抑え、上條陽子の道内人への紹介、コーディネーターとして門馬ギャラリーへの里帰りだったのだ。
 
 ベテラン女性の味わいを期待して見に行った。だが、味わいの域を超えて、童画的自由さでストレートに「人間」を表現していた。それらはパレスチナ難民がテーマだが、絵画表現としてグサッグサッと見るほうに語りかけてきた。


 まずは公称アネックス(ANNEX)、乳白色の光で溢れる白き通路の作品から。

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 ↑:上條陽子、「境界」。

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 作品は厚紙による切り絵的なもの。児童工作と言ってもいい。床は白、壁は赤味がかった黒が(何の形だろう?)、人型模様を交えながら連続している。普通は人形の行進として、童話や絵本として理解したいのだが、壁の連続は列車の行進風にも見えて楽しそうなのだが、どこか違うのだ。タイトルは「境界」・・・床が境界としたならば、白の連続は境界から湧き出しているのだろうか。何が?

 ドアを開けた時の童画風の景色はその普通でない人型模様の連続と、厳しいタイトルによって、静かにどこかに連れて行かれそうな気分になってきた。何処へ?

 白と黒はどこか禁欲的で、連続は何故か鎖に繋がれているみたい。何より人型がマティスのような人の動きなのだが、中江紀洋のような人の悶えに見えてくる。
 長く居てはいけない。本宅に行こう。

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 (②に続く)

by sakaidoori | 2008-06-06 22:31 | 門馬・ANNEX | Trackback | Comments(0)
2008年 06月 06日

646) 門馬 ②「上條陽子・熊谷悠子 『明日展』」 6月2日(月)~6月10日(火)

○ 上條陽子・熊谷悠子
    「明日展」

 会場:ギャラリー・門馬 
     中央区旭ヶ丘2丁目3-38・(バス停旭ヶ丘高校前近く) 
     電話(011)562ー1055
 日程:2008年6月2日(月)~6月10日(火)・会期中無休
 時間:11:00~19:00

 主催:当館(ギャラリー門馬)
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 写真は全作、上條陽子。

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 ↑:「レクイエム」・2007、「明日」・2008。

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 ↑:デッサン・2008年。

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【略歴】

1937年 神奈川県横浜市に長女として生まれる
1972年 夫と共に、ヨーロッパを車で1年間の走破旅行
1978年 第21回安井賞受賞
1981年 文化庁芸術家在外研修員として約1年ヨーロッパに滞在
1986年 聴神経鞘腫で手術(病気を克服しての画家として、テレビ化される)
2001年 レバノンのパレスチナ難民キャンプで、子供の絵画指導を行う。その後も継続して自費で訪問し指導している
 現在、相模原市在住

 自分にとって関心のある部分だけを画集より抜粋して略歴をかいてみた。


 会場には熊谷悠子さんが居られて、簡単に画家の人となりの話しを伺った。病気により絵筆を持つことが不自由とのこと。そのことが厚紙創作になっとのだろう。それらはオブジェとして、劇場空間になっている。しかも、厚紙作品は組み合わせや展示の仕方で、壁面作品にもインスタレーションにもなる。いかようにも千遍変化し、細部にこだわることなく画家の脳内世界が三次元化されている。   

 展示は玄関の上がり廊下に小品の熊谷作品があるだけで、部屋展示は全作上條陽子の壁面作品だ。主たる大作、「レクイエム」と奥まった喫茶ルームの「デッサン作品・ムーブメント」を見れば、今展の意味は了解できる。「上條陽子」を知ってもらいたい為の展覧会なのだ。
 会場には熊谷さんの古き友人が居られて、しきりに彼女の作品の少なさを残念がっていた。確かにそうなのだが、むしろ上條陽子・作品を持ってきた彼女の意思と情熱を賞賛すべきだろう。同じ画家が、自分を置いて他の画家を前面に押し出すということは稀だ。しかも、彼女が出来る範囲で、もっとも効果的な手段を考えたのだ。それも謙虚に。DMには一切の説明がない。安井賞受賞者だとか、レバノン難民だとか、戦争難民児童だとか、ヒューマンや名声を利用するのを避けている。
 私は作品にも大いなる刺激を受けたが、熊谷陽子の他者を立てる姿勢にはそれ以上のものを受けた。

 「レクイエム」と「明日」が示すように、黒と白で対比された過去と未来への画家のメッセージである。過去の事実の上に成り立つ、未来への希望、展望、願望でもある。それらはパレスチナの難民児童によって触発された現代画家の現在への直視であり、「パレスチナを見よ」という訴えでもあろう。それは人道的で美しい。だが、そういう政治的メッセージに関係なく画家の人を見る目、表現する力、いわゆる画家魂に魅入られてしまった。それに、こんなことを言えば誤解を生みそうだが、僕にとって「パレスチナ」はこの際あまり関係ないのだ。それに触発された上條陽子も、どうでもいいのだ。遠くに自費で絵画指導という姿も素晴らしいと思うのだが、一々人道的な人達を賞賛しても仕方が無い。結果としての画家の作品と作品から伝わる人間・上條が好きになったのだ。

 2階には厚紙コラージュとしての小品が壁に並んでいる。それを見れば、元々は色を多用していた画家だと想像される。禁欲的な白黒と人間の塊の世界から、色としてくつろいでいるのかもしれない。

 (熊谷悠子・作品は③にて) 写真は続く

by sakaidoori | 2008-06-06 22:00 | 門馬・ANNEX | Trackback | Comments(0)
2008年 04月 24日

613)テンポラリー 「佐佐木方斎展 『meta絵画』」  4月23日~5月4日(日)

○ 佐佐木方斎展
     「meta絵画」

 会場:テンポラリー スペース
     北区北16西5 (北大斜め通り・西向き 隣はテーラー岩澤)
     電話(011)737-5503
 会期:2008年4月23日~5月4日(日)・月曜休廊
 時間:11:00~19:00
ーーーーーーーーーーーーーーーー(4・24)

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 作品はキャンバスの白一色の世界。その白も抜けるような白とか、「あー、この白は綺麗ですね」と色の美を語るものではない。これだけの「白」を見せるのだから、作家が意図的に描いたものであることは間違いない。間違いないが、完結した「白」の世界としては僕には見れない。描かれた時は知らないが、今展の作品の表面はわざとか保管上の問題か汚れているのだ。僕は彼の版画作品を見たことがある。格子状の模様で、輪郭線や色が几帳面とも言えるほどクリアーな仕上げになっていた。そういう人が今展のような作品を最終的作品として提示することに信じ難い思いだ。

 三つのことを思った。
 一つは、「壁の前にも3年」という禅問答のようなこと。そして、見る人は誰かというと、画家自身だ。鑑賞家はこの作品を何年見ても埒があかない。作品を見ている画家の思いを想像することが鑑賞家の楽しみだ。

 一つは、作品は問題があっても展示されたからには最終作品だ。だが、これらは今から何かを描こうという下地のようである。また、描かれた何かに白く塗りつぶしているから、何かを閉じ込めているとも言える。そして、描く意思を棚上げにしている画家がいる。

 最後に、作品の白とキャンバスの枠ラインが展示会場の壁色やいろいろな線と妙に一体感があるのだ。部屋全体が支持体として見えてしまった。この入れ子状の仕上がっていない白の世界を、画家はこれから少しづつではあっても何かを付加しようとしているのではないか。
 タイトルの「メタ絵画」。絵画を超える絵画、あるいは絵画を語る絵画、ということだろう。僕には「メタ佐々木方斎」展であった。過去及び現在を越える(語る)佐々木方斎展だ。


 佐々木方斎といえば、1980年代の札幌現代美術の仕掛け人として有名だ。活動は「美術ノート」という言語活動、国や地域に捉われないグループ展などの企画・展示会活動、ギャラリー運営と話をお伺いすれば実に多彩だ。原点はぶれてはいないのだが、現象としては一つに落ち着くことなく蠢くタイプのようだ。それも激しく情熱的に。そして次から次へと。佐々木氏とは年齢的にはそんなに違いはないが門外漢の僕には彼の過去の活動の多くは語れない。
 知名度高き過去の業績、それは大事なことではあるが、こうして個展をするからには彼は現在進行形の人だ。病気であったが、体調は相当回復したようだ。過去の仕事は「情報」ということが大事な要素のような気がする。現在は体調のこともあり、情報からは一歩はずれた見地から新たな発信源であって欲しい。

f0126829_2205488.jpg 幸い何冊かの「美術ノートを頂いた。読み進んで行けば、時折り紹介したいと思う。「言葉」の利点は時空を超えて検証ができるということだ。だから、誤解や間違いも付随する。であっても、過去を今の目で訪ねるということは、相手が訪ねがいがあればスリリングのものになるだろう。不明なことがあれば、次の機会に問うことにしよう。


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 (佐々木氏は気さくな人だ。若い表現者との交わりを欲しているようだった。不思議な展覧会と同時に、氏との会話も楽しんではいかがでしょうか。)

by sakaidoori | 2008-04-24 22:15 | テンポラリー | Trackback | Comments(0)
2008年 04月 01日

583)CAI②「CAIアートワークス12期生卒業制作展」 終了・3月23日(日)~3月29日(土)

○ CAIアートワークス12期生卒業制作展

 会場:CAI現代研究所
     中央区北1条西28丁目2-5・(中小路・東側)
     電話(011)643-2404
 会期:2008年3月23日(日)~3月29日(土)
 時間:13:00~19:00 

 【出品予定作家】
 秋田英貴 石倉美萌菜 haruka 泉尚子 今島花恵 加集麻奈美 柏倉一統 喜多香織 工藤航 國枝絵美 小林由佳 齋藤傑 (竹澤伸一) 内藤日奈 中嶋幸治 (古田知里) まつおなおみ 丸山悠 横山亜季 吉田千草 米森ヒデキ ワタナベカズミ・・・以上、20名出品。
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 ↑:小林由佳、「2008.3.13」(映像は柏倉一統)。
 コメントを頂いた小林さんの写真作品。
 かなりのセルフ・ポートレイトとおぼしき写真が下の方に貼られている。彼女の「栄通記」のコメントで分かったのだが、それらの写真は友人達との写真の撮り合いっこだった。

 「撮り合い」それは行為や交換のパフォーマンスでもあり、一回性という場のエネルギーやリアリティーを一瞬に取り込むことでもあろう。それらの展示の方法によって、作家の意識無意識の意図が反映される。
 写真は若き女性の笑顔が中心で微笑ましい。「撮り合い」という方法は、結果的には発表者自身の「顔」がかなりを占めることになる。「版」とは違った間接的方法で自己の表情を晒すことになる。「自分自身を見る自分の顔」、「他人が見る自分の顔」、「見られることを意識した自分の顔」、「演技としての顔」、「それらが記録として残る自分の顔」・・・自分自分自分・・・顔顔顔・・・(果てしなく続く永久循環運動)・・・・自分自分自分・・・顔顔顔・・・。
 笑顔に満ちた発表者の顔を見ることが、どれだけ見る側に「見るー見られる」という枠を揺さぶることが出来たか、そんなことを考えた。

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 ↑:CHIGU(吉田千草)、「内側」。
 絵画です。あまりにオーソッドクスなのでアピール感は少ないのですが、色合い、形のリズム感やおかしさと魅力的なところがあります。書き溜めて、まとめて発表したのを見たいです。

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 ↑:國枝絵美、「aluhi aluhi aluhi・・・」
 次の米森君の作品が並んでいたので、妙に落ち着いて見えました。

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 ↑:米森ヒデキ。(特にタイトルは無し。)
 アクリル絵画でしょうか?土に還るユーモア画といった感じです。作品の良し悪しというのではなくて、全体のムードから浮いた感じが却って良かったです。

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 ↑:泉尚子、「絶望の虚妄なること まさに希望に相同じい」
 実に難しいタイトルです。何かの借り物でしょうか?作品は実にシンプルです。誰かを人形に託して呪い殺そうとしているのでしょうか?それにしてもテンポラリーでシンプルな「風」や「自然」の擬似再現をしていた同じ作家とは思えません。共通項は「刺す」ぐらいでしょうか。


 中嶋幸治、「往来、なけなし」
 紙に何かを押し当て線猫したもの。色は白一色。綺麗です。ドローイングが街の航空写真のような上空からの模様になっています。少し「美的」過ぎるのが、見る僕にはジェラシーを感じてしまいました。なかなか出来そうで出来ない「白の世界」です。北海道の雪の白のボリューム感とは違った、白の中に歴史などの時間軸を食い込ますような感じです。

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 ↑:左から、アキタヒデキ・「肉体後の影響力」、マスコカズミ・「木曜日Ⅰ」鉛筆・板・石膏。


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 ↑:石倉美萌菜・「デッサンしたよ」・木炭紙・木炭・鉛筆。
 タイトルの可愛さに反して、力強く挑発的な絵です。帽子のように被るパンティー、右指はどこを触ろうとしているのでしょうか。何とも太い顔、唇。開いた股。優しさとは無縁なのが好きですね。

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 ↑:haruka、「記憶」・映像。
 展示会場としてはあまり使わない部屋を、物置のようにしての映像作品。 何かが映像として流れているのですが、スクリーン以外にも走る車窓の風景のように辺りの壁や物に雑然と映し出されて、見る・記憶するということを拒否しているような作品です。スクリーンの前に吊り下げられた物体や何やかやが表現者の手足のように上手く流れる映像を引き立たせたと思う。写真は暗室の一齣ですが、時間を切り取られた写真はあまりに空疎で、作家の意図からは遠い写真になりました。ゴメン!

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 ↑:柏倉一統。
 会場の中央に置かれた作品。テーブルの上にはスケッチや植物標本の素材のような物がスクラップしてある。
 流れる紙が机の隙間に落ちて重なり、流れてはまた落ちて重なり、他の仲間の作品と一緒にいるという感じ。柏倉君はこの紙の重なりウエーブのようにサンドイッチになって会場に鎮座しているのでしょう。

by sakaidoori | 2008-04-01 23:37 | CAI(円山) | Trackback | Comments(8)
2008年 04月 01日

582)CAI「CAIアートワークス12期生卒業制作展」 3月23日(日)~3月29日(土)

○ CAIアートワークス12期生卒業制作展

 会場:CAI現代研究所
     中央区北1条西28丁目2-5・(中小路・東側)
     電話(011)643-2404
 会期:2008年3月23日(日)~3月29日(土)
 時間:13:00~19:00 

 【出品予定作家】
 秋田英貴 石倉美萌菜 haruka 泉尚子 今島花恵 加集麻奈美 柏倉一統 喜多香織 工藤航 國枝絵美 小林由佳 齋藤傑 (竹澤伸一) 内藤日奈 中嶋幸治 (古田知里) まつおなおみ 丸山悠 横山亜季 吉田千草 米森ヒデキ ワタナベカズミ・・・以上、20名出品。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(3・28)

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 20名という多数の出品。なかなか見応えのある卒業展だ。強く印象に残る作品もあった。いつになく多い卒業生だが、全体的に密度の高さを感じた。学生同士の相互研鑽もうまくいったのだろう。それと、この1年間に個展を開いた学生も多数いるようだ。僕の知っているだけで、泉尚子 中嶋幸治・柏倉一統・小林由佳(以上、テンポラリー)、米森ヒデキ(オリジナル画廊)と。他にもいるかもしれない。彼らの意識の高さの表れだろう。
 そうはいっても、表現者の一里塚としてのCAIだ。彼等が質を高めて僕らの前に再登場する保障など何もない。5年後、10年後、前途洋々とした海原になるのか、峻厳な山並に打ちひしがれうなだれて、別の世界に進むのか。あー、何て楽しみな学生達だろう。健闘を期待しています。

 個人的に興味深かった人を何人か載せます。(3・28)

 (②に続く

 明日の29日(土)までです。

by sakaidoori | 2008-04-01 21:24 | CAI(円山) | Trackback | Comments(7)
2008年 02月 13日

※)旭川美術館 ③「アール・ブリュット/交差する魂・・戸來貴規の場合」  1月16日(水)~2月17日(日)

 日本側出品者の特徴が分かるので、はたよしこ・さんの会場キャプションを全文載せます。描かれた模様(文字)と、その束と、今日までの「日記」の扱われ方に深い感銘を受けた。アール・ブリュットがどういう意味かが想像できると思います。
 以下。会場キャプションより

 B5版の紙に不思議な幾何学模様が描かれ、高さ約30cmに積み上げられて、事務用の黒い綴り紐で、中央部あたりで無造作に綴られている。それは1000枚以上もの束であった。描いたのは、戸來貴規(ヘライ・タカノリ、1980~)。知的障害者施設の職員によると、これは文字であり、彼の日記なのだという。よく見るとその「日記」は日付と気温の部分の数字が毎日違っているだけで、ほかは全部同じことが書いてあった。「きょうはラジオたいそうをやりました(中略)みそしる うめぼし・・・」そして裏面には「3月15日水曜日 天気晴れ気温16℃ へらいたかのり」。図形とも記号ともつかない模様を指でなぞりながら、職員が本人から聞きだした記述の翻訳だ。

 幼少のころはおとなしい少年で、千葉県にある普通学校の知的障害児特殊学級に通っていたが、小学5年生のとき、父親の転勤に伴い岩手県に転居した。そのころから大きな癲癇発作が起こるようになり、乱暴な行動に困り果てた両親は仕方なく児童養護施設に入れた。自閉症と診断されたのも、このころらしい。現在暮らす施設「やさわの園」は、成人の知的障害施設である。入所当初は態度も粗暴で、職員の誰もが理解困難でお手上げだという存在だった。そこに、彼の描く連続模様の美しさに心魅かれたふたりの女性職員が丹念に歩み寄り、薄皮を剥ぐようにして彼の表現の謎を一枚づつめくりはじめたのだった。

 一つの図形が言語としての姿を現す。まるで、古代文明の文字を解読してゆくように、人間としてのと戸來が立ち現れた。彼の孤独の営みが、少しづつ交信の回路となっていったのである。しかし、過去10年以上の日記は、すでに破棄されていて存在しない。(了・2月13日記)

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 (記は続く

by sakaidoori | 2008-02-13 23:48 | ☆旭川美術館 | Trackback | Comments(0)
2008年 02月 13日

530) 旭川美術館 ②「アール・ブリュット/交差する魂」  1月16日(水)~2月17日(日)

 (以下、あくまでも私見ですので、認識の間違いの指摘を待ちます。)

【概要】

 ○「アール・ブリュット」とは何か?

 芸術家&収集家ジャン・デュ・ビュッフェの造語(1947年に提唱)。この言葉の英語訳が「アウトサイダー・アート」(1972年に批評家ロジャー・カーディナルが使い始めた)。日本ではアウトサイダー・アートの方が有名で、一般的に流布されている。
 その意味は直訳的には、「生の芸術」。高い表現力をもった作品が前提だが、作家そのもののありようも問われる概念である。ジャン・デュ・ビュッフェが提案した明確な主張によって作品及び作家が関係者によって選定される。もちろん、アートはアール・ブリュットであるかないかを価値判断とはしていない。限りなくアール・ブリュットを限定することによって、「アートとは?」「創作とは?」「表現とは?」を人に問いただし、深めることが可能になるという価値判断だ。

 ・正規の美術教育を受けていない
 ・メジャーな存在ではない
 ・見せよう、評価を受けようという意識の無いもの
 ・流行や社会や伝統の影響をあまり受けてはいない
 ・作家自身のやむにやまれぬ何かの思いが制作動機であること
 ・創造性に富んだ作品

 ※今展の日本側の企画担当者と招聘された人たちとの違いは「障害者アート」の比重の違いだろう。日本側はその関係者と言ってもいいだろう。コレクション側は全く関係ない。作者に障害があるかないかは、この概念にとっては問題にしていない。もちろん、彼・彼女等がその担い手の一翼ではある。

 ※一昨年(2006年11月10日~21日)、コレクション側が日本のアール・ブリュットの作家・作品の調査・発掘のために来日した。
 日本側は福祉施設を中心に、50箇所の人数にして300人の作品を用意した。結果的には今展に選ばれた10人が今回のアール・ブリュット作家ということになる。選定には日本側は一切関係しない。勿論、手厚いアドバイスや配慮は当然である。日本側は福祉関係者で、視野には障害の有無という垣根を絶対にはしていないが、まずそこから出発したというのが実情だ。今後は美術館学芸員、評論家、地方の芸術愛好家たちによってアール・ブリュット的作品・作家の掘り起しがなされるだろう。美術・芸術を狭義の美術史に捕われない視点での関わりが進むと思われる。

 ※日本側関係者にはたよしこ・女史がいる。肩書きは・ボーダレス・アートミュージアムNO-MAアートディレクター&絵本作家とある。
 会場には要を得たキャプションが貼られてある。日本側担当は彼女の仕事であるが、素晴らしい。図録にはまとまったレジメ風の寄稿文があるが、難しい言葉も過剰な表現も無い。彼女自身の関わりと日本の現状を無駄なく書いている。

 日本側を中心に個別作家のことを後日書いていきたいと思う。

 17日・日曜日まで。

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 ↑:本展の図録。紀ノ国屋書展、はたひろこ編著「アウトサイダー・アートの世界」・定価2400円(+税)・P176。
 一般書店発行の図録。会場風景はないが、ほぼ全ての作品を収録。会場キャプションの説明書も掲載。本の性格上、文章の全てに英訳があるが、文字や写真作品は大きくて見やすく読み応えがある。見れなかった人には良い資料・読み物だが、現物作品の伝わりやすい作品とそうでないのがある。それは仕方がないことで、是非観覧を。

 (来週に③を書きます。)

by sakaidoori | 2008-02-13 14:22 | ☆旭川美術館 | Trackback | Comments(0)