2009年 05月 30日
○ 熊谷榧・展 「北の山と人」 会場:テンポラリー・スペース 北区北16条西5丁目1-8 (北大斜め通りの東側、隣はテーラー岩澤) 電話(011)737-5503 会期:2009年4月21日(火)~5月3日(日) 休み:月曜日(定休日) 時間:11:00~19:00 ーーーーーーーーーーーーー(5・30・土) 熊谷榧さんが冬山に入り、荒天でテントに待機中に描いた絵です。 天気が悪くて絵も画けないから下山しようという画家の提案に、「否、好天は寝て待て」と言って、岩(がん)として動かない山仲間を恨み辛みの思いで画いた絵とのことです。 熊谷さんにしては珍しく燃えるような赤で山仲間(モデル)への怒りを表現しています。怒りの赤ですが、殺気はありません。画家自身の憤懣やるかたない怒りのエネルギーの発露の赤です。 おそらく天候が回復して、その後画家達は嬉々として山にチャレンジしたことでしょう。モデルの山仲間は、「ほら見ろ!俺の言ったとおりになったろう。待つの心、これが山では大事なんだ」そんな山男の声が聞こえてきそうです。 #
by sakaidoori
| 2009-05-30 10:15
| ★アバウトの写真について
2009年 05月 28日
○ カトウ タツヤ・絵画展 会場:ギャラリー・粋ふよう 東区北25条東1丁目4-19 (北東角地。玄関は北向きで、北26条通りに面す。) 電話(011)743-9070 会期:2009年5月25日(月)~5月30日(土) 休み:日曜日(定休日) 時間:10:30~18:00 (最終日のみ、~17:00まで) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(5・7) 時間に余裕が無いので、会場風景だけをを先に載せます。 感想記は明日の夜遅くになります。土曜日までです。 正規の美術大学を卒業したばかりの若い男性作家です。より独特の世界へと羽ばたいてもらいたい。今展では、ようやく色々な事をチャレンジする余裕を垣間見ます。 絵の中に人という存在をどう位置付けようか?そもそも絵に人を何故画くのか?人を描くこと事態にことさら悩みはないが、どうも絵における人のリアリティーに、いま一歩踏み込め切れない。そんなふうに今展の作家を見た。 男が人を見る時、どうしても女という対幻想を想定したくなる。そういう強い性的なものはカトウ絵画には薄い。絵全体の軽さが、もしかしたら性的な事を避けている反映かもしれない。 軽く淡く浮かぶように「色」がある、人の「形」がある。現在は絵画修行時代だから、一応は構成に拘って人と空間のあり方を追求している。特に大作にその度合いが強い。 ①、あまりにオーソドックスな面作り、線の組み立て、破調無き寒色中心の色調だ。大学美術教育を受けた人だから、教科書的に迫ることは仕方がない。 そして、気質かもしれないが何かを無意識に抑制しようとしていて、その抑制さとオーソッドクスさが物足りなさを強める。自分の感覚をもっと信じて「人という存在の所在無さ」を形に色に追求したらと思う。 ④は最近の作品で、⑤も比較的新しいとのことだ。 抑制気味の作家から、こういう絵の引き出しを見れる事はとても嬉しい。 ④は友達との旅行の思い出を自分好みにアレンジしたものだ。色が沢山あって良い。形にもいろんな動きがある。冷ややかさは影を薄め、人や物を信じて温かい絵だ。何より良いことは、素直な気持ちを絵にした事だ。素直に画けば良い絵ができるというものではないが、カトウタツヤ君はそういう経験を大作にまとめた体験が少ないのではないか。こうして、自分の発散エネルギーを確認する事は良い事だと思う。 ⑤の連作も面白い。伝統工芸と現代若者の絵巻物と言いたい。フワフワした「人という存在」をいろんなバリエーションの絵の中に入れている。おそらく、実験でもあろう。 顔の恐さと、若い女性なのに裸体のお尻の垂れ下がりのアンバランスが面白い。 時にはこの絵の女性のようにカトウ夜叉になるといいのだ。 今展は画家のいろんなバリエーションがあって興味深かった。本格的絵画実験段階に入ったのだろう。ドンドンいろんなことをしたらいいと良いと思う。若い作家との交流展などもして、外からのエネルギーも時には必要かもしれない。友と旅したように、何かを得るものがあるかもしれない。 最後に今展の「顔」を載せます。 #
by sakaidoori
| 2009-05-28 23:55
| 粋ふよう
2009年 05月 27日
○ Wave 11人展 会場:市立小樽美術館・3F市民ギャラリー 小樽市色内1丁目9番5号 (小樽駅から5分ほど運河方面に) 電話(0134)34-0035 会期:2009年5月12日(火)~5月17日(日) 時間:10:00~18:00 (最終日は、~17:00まで) 料金:無料 【参加作家】 青木美樹 江川光博 深山秀子 水谷のぼる 福原幸喜 徳吉和男 高野理栄子 羽山雅愉 工藤英雄 末永正子 三宅悟 ーーーーーーーーーーーーーー(5・16・土) (980番の①の続き。) ◎ ③三宅悟の場合 ↑:左から、「冬の北手宮風景」、「台所」。 ↑:左から、「冬の余市川」、「吹雪の後」。 自然の風景と、古い時代を思わせる街の佇まいとその中の人景を画題にする作家。季節は雪に完全に覆われた頃と、全然雪の白さのない春や夏。 いずれにせよ作家の理想の世界であり、自然や人間を愛して止まない優しさに満ちている。 3度ほど個展を見たが三宅悟の魅力はなかなかグループ展では伝わりにくいかもしれない。作風が地味ということもあるが、どこか涅槃図のようなところがあるので、のんびりと時間を過ごしながら眺めるような感じで、時と共に対座した方が良いかもしれない。 三宅絵画の特徴は絵から発散する光と、絵に引き込ませる色の重なりせめぎ合いにあると思う。 光の発散と言っても子供がボールを上に投げても直ぐに落ちる程度の高みだ。 色の重なりと言ってもすぐに戻ってこれそうな深みで、非常に等身大なのだ。 極端を排して、どこか茫洋としていて気持ちを和ませてくれる。そんな和む気持ちで見ていると、絵という窓から向こうの世界に行きそうな錯覚を起こす、それを三宅トリックと言ったらいいかもしれない。 冬景の絵は白と光を、春夏景の絵は緑や色の重なりに注意しよう。川の絵、時間と光が交差しながら川は流れている。光と色の重なり、止まった時間と人間に注意しよう。 ◎ ④・羽山雅愉の場合。 小振りの作品ばかりだが意欲的な出品だ。内容も今までの画風から軽く距離を置こうととしているみたい。 氏の画題は街の風景が多い。ビルが立ち並ぶ、道路が水面のようにピカピカ鋭く輝く、スパッと伸びた横線が入り近代的流動感、そんな絵が多い。絵は素敵なのだが、実景のムードからはかなりかけ離れている感じだ。かけ離れてもいいのだが、少し綺麗過ぎて誇張華美だと思っていた。 ↑:左側。②「冬の小樽工芸館」。右側、③「黄昏・小樽ノマド」。 上段の①の絵は今までのパターン。 中下段の絵は①とは少し趣を異にしている。違いを一言で言えば、児童画風の遊び心で描いていることだ。氏の大作は横長が多いと思う。 風景は横広がりか基本だから仕方がないが、それに飽き足らない思いが強くなってきたのではないか。②のゴシック風の天に伸びる姿や③の取り組み。 ⑤のタイトルはいかにも遊んでいる。「小樽ルタオ」、画題をなぞるようなタイトルではつまらないと思ったのだろう。 遊び画的なムードはどこかキリコの若い時代に通じる。最大の違いはキリコは「人」や「影」が大事な要素だが、氏の絵にはほとんどそれらが無い。人など画く必要がないのだ。建物が人の痕跡であり、「人物」でもあるかもしれない。もちろん「不安」という要素からは遠い。 自由さを絵に意識的に取り込もうとしている。この傾向は大作にどう反映されるのだろう?楽しみなことだ。 #
by sakaidoori
| 2009-05-27 22:38
| ☆小樽美術館 市民ギャラリー
2009年 05月 27日
(絵にほとんど関係しない雑感です。) 5月16土曜日、「Wave展」を観に小樽に行く。 たぴおの写真展が最終日だったので、行く途中に立ち寄る。路上駐車での鑑賞だ。駐禁にハラハラしながら、しっかり見てきた。 道庁を目の前にしての交差点で、赤信号中の車内から撮影する。 昨年は右側のビルを建てていたが、今年は左側の工事だ。毎年変わる札幌駅前のビル景色、何階建てになるのだろう? 新川沿いを小樽に一目散。 新川の向こう側の手稲山。 豊平川を別にすれば、新川が札幌で一番水量が豊かもしれない。何の変哲も無い真直ぐな川で、川としては面白味に欠ける。川といっても人工のジャンボ排水溝だから仕方がない。この川の経緯などを調べたくなる。 手稲山、白石に住んでいるとこの山の魅力は分からない。札幌近郊の山に登っても見栄えのしない山だ。この辺りからの眺めは素晴らしい。左肩に力を入れて、右裾をゆったりと広げての姿は貫禄がある。アンテナ群も他の山との違いを目だ立たせて悪くはない。最後の雪が山の高さを示している。 時間に余裕があるので銭函駅前を通ることにした。 銭函市街手前の海水浴場。 穏やかな天気だ。波も静かだ。海の青さ、波の白さ、砂の色、波の音・・・。遠くで鳥が固まって、波打ち際で何かをついばんでいる。小走りに走りながら、波と遊んでいる。近づけば逃げていく。 何故だかここは貝殻が多く打ち上げられている。初めて見る風景だ。 瀬戸物の破片が小石や貝殻に混じっている。歩きながら4,5個見つけた。何時頃海の藻屑になったのだろう? 国道から小樽駅を避けるようにして小樽運河に行ける道路がある。そのバイパス的な道路に入って右側に何かの資料館の標識が目に止まった。立ち寄ったが土日は休館だった。 その建物の向かいに使命を終えたドックの工作物が展示?されている。「展示」という皮肉な言葉を使ってしまった。 こういう工作物は綺麗だ。必要なものだけで出来ていて、無駄が無い。合理的なだけの人工物は人目を惹く。かえって公園などの憩いの場で、良かれと思った意匠の何とグロテスクなこと。 (ようやく「Wave 11人展」の会場に着く。) 帰路、銭箱町御膳水というメイン道路沿いで見つけた記念碑群。 手前の白い柱は「3等基準点」の標識。当然、柱の根元には三角点がある。 その向こうの石の塊は句碑だ。 長谷部虎杖子。明治20年に宮城県に生まれ、幼少時に渡道し、昭和47年に札幌で死去。享年86歳。 「車組むや 一滴の油ちにひらく」 どういう意味だろう。制作年でも書いてくれると助かるのだが。明治・大正・昭和と長く生きられた方だ。ここでいう「車」とは何時頃のどんな車だろうか?句碑の所在地は車両がせわしなく行き交う大国道沿いで、駐車スペースも無くて散歩がてらに立ち寄る所ではない。そういう車社会の訪れと油文明を言祝ぐ俳句なのだろうか? その向こうの木目風の立て看板は「御膳水宮」の由来板だ。 明治14年に天皇が小樽まで船舶で来られて、できたばかりの鉄路に乗られて札幌に行かれた。途中で休憩をされて喉を潤した「清水」がここら辺りの沢の水だと書いてある。だから、この辺りの字名が「御膳水」になったわけだ。 何故天皇が北海道に来たか?日本で二番目に開通した手宮線に天皇を乗せる為だ。文明開化の象徴である鉄道、それを作らせたのは天皇の意思であり賜り物ということだ。北海道は天皇の統(す)べる大地だということを新聞や口コミで日本国中に触れまわす為でもある。当時の閣僚・官僚の知恵である。まさにその記念すべき行為を形を代えて後世に残すのがこの看板の意義なのだろう。 道内には「御ー」を持つ地名が沢山ある。全て戦前の天皇御料地か天皇に所縁のある場所と思って間違いない。 傍らに大理石の立派なミニュチアの井戸がある。可愛いいものだ。古い記念碑も隣の一番奥に並んでいる。 →:傍に咲いていたニリンソウ。 #
by sakaidoori
| 2009-05-27 15:36
| ◎ 風景
2009年 05月 26日
○ Wave 11人展 会場:市立小樽美術館・3F市民ギャラリー 小樽市色内1丁目9番5号 (小樽駅から5分ほど運河方面に) 電話(0134)34-0035 会期:2009年5月12日(火)~5月17日(日) 時間:10:00~18:00 (最終日は、~17:00まで) 料金:無料 【参加作家】 青木美樹 江川光博 深山秀子 水谷のぼる 福原幸喜 徳吉和男 高野理栄子 羽山雅愉 工藤英雄 末永正子 三宅悟 ーーーーーーーーーーーーーー(5・16・土) 明快?な抽象画と具象画が違和感無く並んでいる。かなりの広さの会場に各作家がそれなりの点数の作品を出品していて、それなりの画家の姿が垣間見える。会場は横長に伸びていて、その割りに通路は狭い。狭さが程よい作品との距離感を保ち親近感を強めている。 小樽在住作家11人のグループ展だ。札幌でも馴染みの作家もいるのだが、見慣れない作家構成が面白い。各作家の取り組みもそれぞれだ。多人数なので全員は書けれない。毎年あることだ。あせることなくその年のことを追跡することにしよう。 ○ 江川光博の場合 ↑:「SCENE 09 A・B」。 小品2点という少な目の出品。しかも、他の方とは違って額に入っていない。控えめだが、明るく燦々として目を惹く。黄色使いが眩しい。 右側の作品の方が手馴れた感じで自然な活き活き感がある。 個人的には左の方に興味が惹かれる。春の日差しを一杯浴びた野原の草むらの中を連想してしまう。生き物がうごめいている。「目」のような黒っぽい塊の大きさ形が少し変な感じだが、そこが個性的というか、作家がいつになく何かに拘っているように見えて好ましい。線のストロークよりも、面としての迫力や存在感に重きを置きたかったのだろう。それは普段とは違うようだが・・、氏の作品傾向を知らないので誤解かもしれない。 僕自身は江川氏のことを知らないので、もっと見てみたい。会場にご本人が居られたので、その辺を注文した。来年は願いがかなっているかどうか?確認せねば。 ○ 末永正子の場合 もしかしたら、栄通記読者の中で末永正子ファンが居られるかもしれない。そういう方は是非毎年この展覧会に行かれることをお奨めしたい。大作だけでは味わえない中品の作品もあり、かなり満足して帰れること間違いなしだ。 道展出品27年目にして協会賞を確保し、翌年の1999年に会友、2002年に会員になられた作家だ。1972年に札幌大谷短大を卒業しているから、おおよその年齢は分かると思う。 4年前にどらーるで企画個展を見た。協会賞作品からの画家の変遷を追っていた。 構成と写実性を重視した、いかにも道展的な人物画が出発だった。どうしたことか人物がどこかにいってしまって、女心が強く発散する抽象画家へと変貌してしまった。呆気にとられて鑑賞したのをしっかりと覚えている。 変貌は現在進行形だ。どらーる個展の時期は風船があっちこっちに乱れ飛ぶ作風で終わっていた。今回は小魚のような筆跡と色が画面を覆っている。オテンバ加減がさらに進んでいる。このオテンバ・じゃじゃ馬さは狂気にすすむことはない。明るく健康そのものだ。胸を張って我が道をいくというスタイルだ。男の目からみれば羨ましくてまばゆいばかりだ。彼女の軌跡は注目に値する。 ↑:「TSU・na・gu」。 (②に続く。) #
by sakaidoori
| 2009-05-26 22:12
| ☆小樽美術館 市民ギャラリー
|
アバウト
丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
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