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栄通記

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2008年 12月 24日

862) テンポラリー 「中岡りえ展 『DNA DIRARY 1902-2008』」 終了・10月23日(木)~10月29日(水)

○ 中岡りえ・展
    『DNA DIRARY 1902-2008』

 会場:テンポラリー・スペース
     北区北16条西5丁目1-8
     (北大斜め通りの東側、隣はテーラー岩澤)
     電話(011)737-5503
 会期:2008年10月23日(木)~10月29日(水)
 休み:月曜日が定休日
 時間:11:00~19:00
ーーーーーーーーーーーー(10・28)

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 (↑:入り口の様子。カーテン風にして中と外を遮断している。会場内は暗室とまではいかないが、少し暗いのだろう。)


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 (↑:① 迷彩服模様の生地が二列に入り口を塞いでいる。)

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 (↑:② 正面の壁の展示。明らかに日本列島だ。見開きの大学ノート大の生地の裏表を使って、何かが刺繍されている。)

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 (↑:③ 左の壁。ただ3点のみ。)

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 (↑:④ 展示物の生地の作品を束ねて日記のような体裁。)


 恐ろしい展覧会だった。女、家族、家系の血の執念、怨念を見た。

 写真①の二列のカーテンはニューヨークのツイン・タワー事件を表わしている。だから迷彩服か?作家はニューヨーク在住。
 写真②が生地の日本列島だから、自分の生活圏を定点にして世界の政治経済を問うているといえなくも無い展示だ。

 だが僕にはそれらは作家の生理を包む飾りでしかないように思えた。人は裸で街を歩いたりはしない。防寒のためなどではない。自分に合った服を着て他人と交じり合う。迷彩服を着ているから右翼だ左翼だといっても始まらない。服は着ている人を飾っているのだ。社会性という安定した約束事の中で。
 ①や②の社会に発言するというのは中岡リエの服でしかない。その服を脱いだ下着の姿、それが④の日記としての生地の本だ。この展覧会はこの本を見るためだけのものだと僕は思う。他は飾りだ。

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 何枚綴じていたのだろう?光の射す窓辺で一枚一枚ゆっくりと見ていった。白日に曝け出された怨念針のその縫い跡。裁縫する時の濃密な時間が、それは過去の出来事だったのかと思うほどのどかに光が当たっていた。まるで思い出のアルバムを見る雰囲気だ。
 黒糸は髪の毛。それも生きたままむしり取られて復讐のように生地に模様を描こうとしている。
 赤糸は血。初潮という言葉は今の作家には無縁な言葉だが、制御できぬ己の体内の生命活動の過剰な姿は、今とはそんなに離れてはいないだろう。血がうずくのだ、汚れた血を吐き出したいのだ。
 家族の写真を切り刻んで縫い合わせている。特に目に対して攻撃的だ。両親の自分への眼差しを拒否したいのだろうか?拒否したいのは目だけであって、両親の存在は認めているのだろうか?

 過剰なまでの血や家族へのこだわり、自分へのこだわり。これらは他者と共有されるべき事柄ではない。「人前に晒す」、それは自己安定と自己満足以上のものではないだろう。
 「自己満足」と言った。この言葉で彼女の発表する態度、表現者の社会的位相を否定するものではない。だが、彼女の赤裸々な肉声は「美術、それを見る・見せること」に対して考えが飛び交う。果たして現在の美術(視覚)表現と社会一般には、繋がらなければいけない必然性などあるのだろうか?だからどうしてもグループ化する。群れる。離合集散が起こる。人間関係の中で作品が見られがちだから、人間関係が切れたら作品もどこかに行ってしまう。
 ギャラリーに集う人達、公募展、各種の師弟関係、先輩・後輩、国家レベルの受賞を目標にする人達、はどなど・・・。現在の表現の社会性とはそれらのグループを超えることは無いだろう。個が単に好みで作品に付きまとうー僕のようにー以上の関係、それは美術の妄想かもしれない。
 

 作品は2階にもある。まさに屋根裏展示だ。どこか東北の旧家の臭いがする。
 座敷牢で、与えられた生地と糸で毎日毎日縫っていく。糸が足りなければ漆喰の壁をはがして何かを探す。無意識に髪をむしっては糸にする。

 今展を「下着だ」と言った。妖しげな下着だ。裸体が透けて見えるがやはり下着だ。男にとって女とは分からないものだ、恐いものだ。

 彼女の明日は知らない。僕自身の明日を考えるばかりだ。


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 最後になりましたが、1階の作品を何点か載せます。


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by sakaidoori | 2008-12-24 12:50 | テンポラリー


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