2008年 11月 22日
○ 黒田晃弘・展 会場:ギャラリー・エッセ 北区北9条西3丁目9-1 ル・ノール北9条ビル1階 (南北に走るメイン道路の東側。隣はモスガーバー。) 電話(011)708-0606 会期:2008年11月11日(火)~11月30日(日) 時間:10:00~19:00 ーーーーーーーーーーーーーーーーー(11・21) 似顔絵を描き始めて5年。僕は彼の個展を見るのは3回目である。似顔絵画家として、ますますはじけた作品展だ。今回は画家としての心意気を感じる幅の広さがあった。 ![]() ![]() ![]() 黒田晃弘の似顔絵はコミュニュケート・アートとして語られる。似顔絵は画家と描かれる人のコミュニュケートの手段という意味だ。だから、彼が似顔絵を書く時は、相手と常に何かを語り合っている。 仮に、「あなたの右目は不安の固まりに僕には見える。左目はそれを隠そうとしているように見える」と画家が言ったならば、その言葉に触発されて描かれる人は占い師に相談をするように自分の内面を語り始めるかもしれない。 僕が画家ならば、目の前の輝く女性を相手に、「貴女は恋をしているでしょう?その喜びが前身を覆っている。恋人の背丈はどれくらい?面長?」と尋ねて、彼女の顔の横に彼氏を描くかもしれない。 比喩は悪いが、彼の似顔絵は描かれる人との心の交流が目的なのだ。もちろんそれは一期一絵だ。誤解だらけかもしれない。だが、真剣に画家は相手を見つめ、手は顔を作っていき、相手はその動きに日常とは異質な自己のさらけを意識するのだ。それをつかの間の「嘘」と言うこともできる。だがその「嘘」は傍観者の僕らにとっても刺激的だ。そもそも心の触れ合いとは高貴な嘘でもある。それを信じるか信じないか、その触れあいに満足出来るか出来ないか、心に「事実」という鏡はそぐわ無い場合がある。芸とは心と事実との隙間を埋める方便かもしれない。 今展、今までとの違いは展示された似顔絵に絵としての幅がある。作家自身の心象が強く投影された作品がチラホラと並べられている。更に、キュビニズム風の研鑽的作品もある。相手を描くというよりも、その時の画家自身の感情を抑えきれずに描いた絵もある。そういう絵は叙情的で魅入られてしまう。 つまり、相手を描くという段階から、画家自身と相手との関係で似顔絵が成立し始めたのだ。それは相手を見る画家の自信の現われでもあろう。突っ込んで言えば、いままでの似顔絵に満足しきれない画家の模索の一里塚でもある。 黒田晃弘、面白い男だ。北海道人なのによく動き多弁でグイグイと相手に襲いかかっていく。攻撃的な画家だ。充分に若い人だ。エネルギーは溢れんばかりだ。人に嫌われるのを意に介さずに、ドンドンと前に進んでもらいたい。似顔絵でどこまで出来るかは分からない。似顔絵の先にも何かは必ずあるだろう。 痛快な男との会話は実に楽しい。ベレー帽姿の彼の動きは、体が言葉と和してリズミカルに踊っていた。こういう画家との出合いは今年は二人目だ。 ![]() ![]() ![]() 左下、極く初期の作品。痛々しい。当時の画家の置かれた環境と心境の反映だろう。漫画的ではあるが記念すべき作品だ。 右上、カルメン・マキとのことだ。あまり似ていないが気になる作品だ。口元の線描は、製作中に雨が降って自然出できたものとのこと。苦痛ともエクスタシーともとれる。 ![]() ![]() 黒田君が貧民窟なり最下層階級の生活現場に行って描いたわけではない。彼はダッカ大学を中心に制作したからそれなりの階層の人間達が似顔絵の中心だろう。だが、人口過多で貧困層の厚き国で、弱者青年少年は垣根を越えていろんな所に出入りしているのだろう。その日の食い扶持を求めての命がけの彷徨だろう。 寂しい顔だ。少年の顔は普通に生き生きしていたという。生きることが懸命だから、一々寂しい顔をする暇はないのだろう。黒田君の心が寂しい顔にしてしまったのだ。 少年の顔を生き生きと迫真に迫って描くか、思わず寂しく描いてしまうか、画家の評価の分かれるところでもある。だが少なくとも人間・黒田が表に出てきた絵である。 ![]() ![]()
by sakaidoori
| 2008-11-22 22:04
| エッセ
|
アバウト
![]() 丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
検索
最新の記事
ファン
カテゴリ
全体 ★ 挨拶・リンク ★ 栄通の案内板 ★アバウトの写真について ★ 目次 (たぴお) (時計台) 市民ギャラリー (写真ライブラリー) さいとう 大丸藤井スカイホール (ユリイカ) ミヤシタ テンポラリー af 北専・アイボリー CAI(円山) CAI02(昭和ビル) (大同) アートマン アートスペース201 大通美術館 STVエントランスホール コンチネンタル 資料館 門馬・ANNEX 百貨店 (カコイ・ミクロ) 4プラ・華アグラ 石の蔵・はやし (シカク) ☆道外公共美術館ギャラリー (アッタ) 奥井理g. ★ 案内&情報 ★ 訪問客数 ◎ 樹 ◎ 花 ◎ 山 ◎ 本 ◎ 旅・飛行機・船 ◎ 温泉 ◎ 個人記 ◎ 風景 ◎ 短歌・詩・文芸 ☆★ ギャラリー巡り 写真)光映堂ウエスト・フォー (いろへや Dr.ツクール) JRタワーARTBOX ポルト 写真)富士フォト・サロン 道新プラザ 紀伊國屋書店 S-AIR ◎ 自宅 (ニュー・スター) 札信ギャラリー (マカシブ) (自由空間) 真駒内滝野霊園 サード・イアー (どらーる) 区民センター ★★ 管理人用 山の手 富樫アトリエ (プラハ2+ディープ) ★ギャラリー情報 ★ パンフより 創(そう) (オリジナル) ATTIC 美容院「EX]内 ADP 粋ふよう エッセ ◎ 雑記 ★「案内版」アバウトの写真 ☆北海道埋蔵文化センター ☆三岸好太郎美術館 ☆本郷新彫刻美術館 ☆芸術の森美術館 ☆函館美術館 ☆札幌・近代美術館 ☆モエレ沼公園 ☆旭川美術館 ☆北海道開拓記念館 ☆帯広美術館 ☆関口雄揮記念美術館 (☆夕張美術館) ☆(倶知安)小川原美術館 ☆(岩見沢)松島正幸記念館 ☆(室蘭)室蘭市民美術館 ☆北武記念絵画館 ★その他 【道外・関西】 ー [石狩] [ニセコ]有島記念館 [岩見沢]キューマル 他 [音威子府] [深川] [苫小牧]博物館 [洞爺] ☆小樽美術館 市民ギャラリー [美唄] [江別] [室蘭] [小樽] [帯広] [恵庭] 夢創館 【北広島・由仁】 [函館] [夕張] [三笠] [赤平・芦別] 【幌加内(政和)】 (くらふと)品品法邑 (茶廊)法邑 (カフェ)れんが (ブックカフェ)開化 (カフェ)アンジュ (カフェ)北都館 (カフェ)エスキス (画廊喫茶)チャオ (カフェ・soso) (カフェ)ト・オン (カフェ)アトリエムラ (カフェ)サーハビー 槌本紘子ストックホルムキ記 (画廊喫茶)仔馬 (ギャラリー&コーヒー)犬養 Plantation CAFE BLANC(ブラン) - コレクション ■ 複数会場 公共空間 ー ◎ 風景 新さっぽろg. ー ○ 栄通日記 学校構内 ー ◎ライブ路上パフォーマンス 道銀・らいらっく (コジカ) ▲個人特集 (風景)サイクリング・ロード (風景)札幌・都心 A.S.T(定山渓) 趣味の郷 公共空間・地下コンコース 六花亭 ◎今日・昨日・最近の風景 500m美術館 Room11 アルテポルト・ART SPACE サテライト 【2010年旅行記】 【2010年 ロシア旅行】 【海外旅行】 【2012年上海旅行】 【震災跡地2回目の旅】 【2013旅行記】 ◎ 川・橋 OYOYO コケティッシュ ・我が家 レタラ カモカモ 北のモンパルナス チチ クロスホテル札幌 黒い森美術館 Caballer ▲原田ミドーモザイク画 SYMBIOSIS (ハルカヤマ藝術要塞) 群青(2016) チカホ space1-105 100枚のスナップを見る会 北海道市民活動センター 群青(2018) HUG(教育大文化施設) 札幌グランピスタ 大洋(大洋ビル) - 未分類 タグ
個展(242)
グループ展(183) 油彩画(183) 企画展(153) インスタレーション(115) その他(98) 学生展(93) 現代美術(74) 写真(71) 公募展(70) 写真展(59) 総合・複合展(43) 温泉・山・旅行・雑記(42) 彫刻・金属・ガラス・陶(40) 日本画(38) 北海道教育大学(37) 版画・イラスト(31) シルクスクリーン(26) 藤谷康晴(25) 卒業展(24) リンク
○ 美術関係以外
古い日記 (サカイ・ヒロシさんのブログ) ○ 美術愛好家のブログ Ryoさんのイートアート (サカモト・キミオさんのH.P.) 散歩日記V3 (SHさんのブログ) ○ 表現者のブロブ(相互リンク?) Photo Foto Blue (コバヤシ・ユカさんのブログ) 水彩の旅 (タケツ・ノボルさんのH.P.) アートダイアリー (マエカワ・ヨシエさんのブログ) 画像一覧
最新のトラックバック
以前の記事
2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2017年 08月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 02月 more... ブログパーツ
その他のジャンル
記事ランキング
ブログジャンル
|
ファン申請 |
||