2008年 10月 03日
○ 梅田マサノリ・展 『Scenery of cell 細胞の風景』 会場:テンポラリー・スペース 北区北16条西5丁目1-8 (北大斜め通り・西向き、隣はテーラー岩澤) 電話(011)737-5503 会期:2008年10月1日(水)~10月7日(火) 休み:?(月曜日が一応定休日です) 時間:11:00~19:00 (最終日は、~16:00まで) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(10・2) 直径2mの透明ビニールボールが部屋の真ん中に吊り下げられている。 その中にも何やら怪しげに白い物がぶら下げられている。 在廊中の作家が展示品を説明してくれた。が、僕は入室した時の印象を引きずっていて聞き逃してしまった。 印象・・・ドアを開けるといきなり焦点が定まらないうちに何かが目にドーンと飛び込んできた。うろたえてしまった。巨大ボールが焦点を合わせる暇なく襲ってきたのだ。次に、更なる錯覚をしてしまった。ボールの中の白い物が、血抜きされた鳥の剥製としてぶら下げられていると。剥製は美しく白装束として化粧され、逆さづりされている。流れ出す赤い血は一滴も無い。一つの儀式がボールの中で進行している。他人から見られることによって、静かに無言劇のように。ボールは動かないが我々を自然に動かす力がある。我々はぐるぐる廻らせられる。人一人が通れる空間をボーとして歩くのだ。鳥の背後には子宮とも卵巣とも思える円いガラス球が屍からはみ出している。あまりにもむき出しにされた女の象徴とも命の証とも見える。 (そのガラス玉は目なのだ。中にはカメラが隠されていている。人の視野と同じだけの広がりを写す。インターネットに接続されてバーチャル空間として電波でこの会場の様子を送り届けるのだ。主に写されるのは壁の展示作品だ。標本のようなそれらには特殊溶液で満たされ、光に当たると色を発し変化していく。西日に当たる標本作品が時間の移ろいを外部に転写するのだ。) 大きくてシンプルな作品に凝った仕掛けをしているものだ。どこかアンバランスな二重構造だ。標本作品も爽やかで粘着的だ。箱と水と台のシンプルさに反して、余りに華美な容器のデザイン。ミスマッチのようなこの感覚は個性的でもある。 梅田マサノリ、不思議な作家だ。 巨大ボールは子供の遊戯としても使われた作品との事だ。そういう優しさが作品にはある。が、それに劣らぬアイロニーがある。 作家は数年前に大病を患ってようやく回復しての作家活動だ。体に水が溜まり、癌化してその腫瘍を摘出したとのことだ。その体の一部としての腫瘍の写真を利用しての作品が入り口脇の特陳コーナーに展示されている。左の作品だ。担当医者が撮ったそうだ。何とも薄気味悪い。決して単なる生命賛歌の人では無い。 ほとんど意味不明な器械がこっそりと置かれてある。チックタック・チックタックとせわしく音をたてている。部屋にはバロック音楽が流れているというのに。 作家に尋ねると気圧計との事だ。「音、良いでしょう。時限爆弾のようでしょう」。!!!。この言葉には本当に驚いた。あまりに全体とのミスマッチのような仕掛けを作家は軽く楽しんでいるのだ。 吊り下げられた「鳥」を始めとして、材料として真綿を多用している。美しくも優しい梅田マサノリ、その真綿で背後から首を絞める刺が魅力的だ。 閉所空間を利用した展覧会だった。どこを見ても閉所だらけ!狭い部屋に巨大ボールを閉じ込め、その中に入れ子のように何かを閉じ込め、壁には蓋として閉じ込め作品を並べる。 閉所からの反逆を見た。
by sakaidoori
| 2008-10-03 22:15
| テンポラリー
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アバウト
丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
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