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栄通記

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2008年 08月 21日

738)セントラル ③「2008 日本画の現在・展(企画・柴橋伴夫)」 終了・8月12日(火)~8月17日(日)

○ 2008 日本画の「現在」展
    『北に大地より新しい波(ウェーブ)
     日本画の今と「未来」を問う』

 会場:大丸藤井セントラル 7Fスカイホール
    電話(011)231-1131
 会期:2008年8月12日(火)~8月17日(日)

 【参加作家】 (性別 出生年・出身地 推定年齢 学歴等 現住所)

 駒澤千波  (女性 1980年札幌 28歳 道教育大学 札幌)
 朝地信介  (男性 1976年函館 32歳 道教育大学 札幌)
 羽子田龍也 (男性 1970年東京 38歳 東京芸術大学 岩見沢)
 平向功一  (男性 1964年函館 44歳 道教育大学 札幌)
 西谷正士  (男性 1963年金沢 45歳 金沢美術工芸大学 登別)

 小林文夫  (男性 1955年京都 53歳 北大理学部 札幌)
 伊藤洋子  (女性 1953年札幌 55歳 道女子短期大学 札幌)
 笹山峻弘  (男性 1946年礼文 62歳 札幌工業高校 札幌)
 羽生輝    (男性 1941年東京 67歳 道学芸大学釧路校 釧路)
 内崎さき子 (女性 1937年江別 71歳 東京にて修行 江別)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(8・12)
 
○ 小林文夫
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 ↑:左から、「叢」(くさむら)、「寒」・ともに180×130cm。

 作家の言、「私は、なにより力強い構成、美しい発色、流れるような線が表現できるように、日夜筆を動かしております。ただ、描いてみたいものは沢山ありますが、自分のテーマ、スタイルがなかなか定まりません。・・・。」

 暗と明、中に入り込んだ世界と遠方からの景色、対比的な2点1組の構成。オーソドックスの構成、写実的な描写、几帳面な線の追跡は力強さよりも、あるがままの世界からもう一つの向こうの世界を軽く垣間見ようという感じです。
 かすかにでも、どこかにブレというのか破調のないのが個人的には物足りない。「力強く、美しく、流れるように」、難しいテーマだ。


○ 伊藤洋子
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 ↑:「アルプスの庭園の秋」・97.0×145.5cm P80。

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 ↑:「ベルベレーデ宮殿の庭からの羨望」・同上。

 作家の言葉から、「・・・近年私はヨーロッパをテーマに制作していて、歴史ある土地に生活している人の人生が感じられる町の空気を描きたくて取材に訪れています。・・・」

 驚いたことがあります。今作に「人」が描かれていることです。
 2004年の大同ギャラリーの個展を見た時、やはりヨーロッパの街並だったのですが、「人」がいなかった。唯一、街のポスターに描かれた人(人形?)を間接的に描いていた。「人」を描くことにこだわりのある作家だと思う。おそらく、生身の人を描かないで人間の結果としての街並をいかに表現するかがテーマだと思う。以前の街並は美しいが冷え冷えとしていた。「歴史的産物としての化石の街並」と「人間臭い現実の街並」、この両極端な狭間で作家自身の位置を確認しているようだ。
 今、景色として「人間」を描き始めた。言葉としての自己説明とは別に、描くことの何かをつかんだのだろうか?

 油彩画のような絵です。特に輪郭が不鮮明な木々は洋画家・白鳥信之氏の影響を感じます。白鳥氏が求めている精神性やロマンと合い通じるものがあるかもしれません。


○ 笹山峻弘
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 ↑:「聖地へ Ⅰ・Ⅱ」・墨 岩絵具 177×88cm。

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 ↑:「KHAJURAHO」・55.5×91.5cm。

 すごい迫力です。「聖地へ」はチベットのポタラ宮でしょう。数ヶ月前に、笹山さんはチベット取材旅行による大作絵画を発表していました。(僕はその絵をここで見た後、あのエレベーターの中で『飛蚊症』を発症してしまった。そして現在進行形で不便でたまらない。忘れることが出来ない「笹山・宗教絵画」です。)

 マンダラと寺院と丘と・・・。今展の作品は笹山さんにとっては小品の部類でしょう。モノトーンの墨絵がセールス・ポイントだと思います。マンダラで表現された宇宙の根本原理を雄大な現代絵巻物として絵画化しているのです。
 毎年のようにインド近辺に取材に行き、胆力でドラマを仕上げていくのです。壮大な様式美も感じますが、こういう画家が北海道にもいるとは驚きです。出身地の利尻島には公共施設に氏の作品があるとのことです。


○ 羽生輝
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 ↑:「海霧(07.オダイト)」・2007年 板に彩色 181.8×227.3cm F150。
 笹山さんと全く別種の迫力です。岬が空に聳えている。実に大きい、存在の尊厳さがある。アメリカ・インディアンの住まいのような建物があります。人がそこに居るのです。人の住まいは小さいが、しっかりと大地にへばりつきながらも生きている、という感じです。気力充実した快作だと思う。

 「オダイト」とは尾岱沼のことでしょうか?「ota-etu:オタ・エトッ:沙・岬」。実在の尾岱沼というよりも、空想が生んだ土地への賛歌のようです。


○ 内崎さき子
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 ↑:「八ツ目鰻の頃」・2008年 194.0×130.3cm F100号。
 作家の言葉によると、寒さが厳しい頃に石狩河口で八ツ目ウナギの最盛期を迎えるそうです。
 ・・・ ・・・。驚きです。八ツ目ウナギ漁が内崎さんの住まわれている江別の川筋でおこなわれていたのですか!そもそも八ツ目ウナギ漁など考えたこともありません。今は・・・?調べてみなければ分かりませんが、おそらく捕ってはいないのでは・・・。
 語り部としての「絵画」です。
 作品は光に当たる朝靄での古き道具。古きを訪ねては回顧調に溺れず、写実による未来への希望を描いています。「この絵の場所に見に来い!」と言っています。江別側の石狩川筋、見に行きましょう。

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 ↑:「冬のアカシア」・2007年 第81回道展入選 194.0×130.3cm F120号。



 

by sakaidoori | 2008-08-21 22:12 | 大丸藤井スカイホール


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