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栄通記

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2008年 08月 17日

731) 岩佐ビル2F ①「アフンルパル展 露口啓二・写真展」 8月11日(月)~8月18日(月)

○ アフンルパル(ahun-ru-par)展
    露口啓二・写真展

 会場:中央区北3条東5丁目5・岩佐ビル2F
     電話→フレメン写真製作所(011)281-5805
 会期:2008年8月11日(月)~8月18日(月)
 時間:11:00頃~17:00頃 

 問合せ:書肆(しょし)吉成 (080)1860-1085
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー(8・16)

 展示会場は2ヶ所。
 2階の広いメイン会場と1階の写真家・露口啓二さんのスタジオ・フレメン写真製作所です。

 2階のメイン会場は事務所の空き室といった風情で、窓が沢山あって何にもない部屋にただ写真だけが壁に並べられたり、立てかけられたりしている。強い日差しだけがある、光の部屋と写真との付き合い。

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 ↑:会場左側。① 「On-沙流川」シリーズ。
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 ↑:会場正面。② 「地名」シリーズ。
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 ↑:右側の奥の空間。③ 「ミズノチズ」シリーズ。

 写真展はアイヌ語との関連で成立している。

 そして、残念ながら写真だけを見て感動するという展覧会ではない。感動以前に写真だけでは何を「意味」しているのかは分からない。殺伐とした写真群だ。「On-沙流川」シリーズは沢の水があるから、少しは救われるが、かといって自然鑑賞という世界とは無縁だ。心象?・・・。
 代わりに撮影者のしっかりした説明書きがある。「アイヌ語ーアイヌ地名ー現地ー写真ー撮影者の言葉」。
 撮影者は写真作品だけの力で、感動とか何かを喚起させるということを拒否している。汚いとは言わないが、道内の何処にでもあるスナップ写真をアイヌ語の言葉と一緒に投げかけるだけだ。アイヌ語や地名に関心のない人間には「面白くない」展覧会だ。

 禁欲的な撮影態度、知識無くてはアプローチできない作品、作家の意図は何であろう?
 少なくとも作家の位置は想像できる。
 北海道の歴史や地名に関心を抱いた時に、切実な問題がある。生身のアイヌとの関わりだ。ある人は、その歴史の中での和人の行為を弾劾し、倫理的な真摯さでアイヌに関わろうとする。
 ある人は使われなくなったアイヌ語にロマンを感じ、日本語だけを考えていたら見えない「何か」を探ろうとする。

 露口啓二はアイヌ語への安易な美化を拒否する。風景としての被写体への感情移入を拒否する。その断絶と屈折は作品を「非人間的」にする。写真の「面白さとは何なのか」と自分自身に問うているようだ。今の彼は写真以前に、書物の中のアイヌ語という言葉と、その確認の為の現地踏査という旅の往復に意味があるような気がする。


 4枚の露口・作品を印刷した大きな通信誌が売っていた。600円である。とても安い。その裏に4人の男性による骨太な「露口・写真論」の記事がある。どれも素晴らしい論述ではあるが、結果的に4人全員が彼を言祝(ことほ)いでいる。結果的には4人が全て露口作品を同じ目で見ている。
 僕は彼の作品、彼の行為をただ褒めていたのではダメだと思う。おびただしいエネルギーでアイヌ語を調べて現地踏査を繰り返す。出された作品は、何かを否定したようで冷たい。露口啓二の意味を超えて断絶・屈折に迫らなければ、「アイヌ語地名考」以上のものは生まれないのでは?
 いまでも日本人には避けてしまいがちな「和人とアイヌ」の関係。そのいろいろな言葉を彼らから聞きたかった。
 

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 ↑:左から、「ヲコタノサル」、「エソロカン」。

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 ↑左から、「イラニツカ」、資料集よりのアイヌ語地名の羅列
 上掲は①の「On-沙流川」シリーズ。
 幕末の探検家(幕府のスパイ)・松浦武四郎の「東西蝦夷山川地理取調圖」より、沙流川流域のタイトル地名の由来と思われる場所を狭いアングルで撮影。最新作。
 

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 ↑:「俣落」 マタオチ 冬・群生するところ。

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 ↑:「祝津」・sikutut えぞねぎ。
 上掲は②の「地名」シリーズ。
 漢字として使われているアイヌ語地名、その言葉の由来と思われる場所を撮影。更に時期をずらして、そのスナップ写真につながるように隣接地域を撮影。それらの2枚一組で提示。メインは始めに撮った写真と思われる。非常に複雑な作業工程。5年前の「札幌美術展」に出品。

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 ↑:③では、いまは無きコトニ水系の跡地を撮影。北大構内を沢山撮っている。今週の「札幌美術展」に出品した作品群。

by sakaidoori | 2008-08-17 19:14 | ★その他


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