栄通記

sakaidoori.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
2008年 08月 04日

711) 夕張市美術館 ③「夕張美術館と石刻画・山田光造・展」 7月1日(火)~9月15日(月)

○ 2008 G8サミット記念特別展
    『石刻画 山田光造・展』
   
 場所:夕張市美術館
    夕張市旭町4の3
    電話(0123)52-0903
 期間:2008年7月1日(火)~9月15日(月)
 休み:会期中無休
 時間:9:30~1700
 料金:大人・700円 中高生・500円 子供(4歳~小学生)・300円

 主催:山田光造展開催実行委員会 夕張YUBARIの会
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー(7・23 水)

 ○山田光造氏のH.P.こちら
  上記H.P.内の「安井金比羅宮・著作権侵害差止請求事件についてこちら
      ・・・以上、2012年11月30日追記。


      ~~~~~~~~~~~~~




 前回は山田光造・展の会場風景を載せました。今回は個別作品の写真掲載と記です。

 その前に、民間運営とはいえ、公営の美術館の会場風景や個別作品の紹介が実現できたのかを簡単に報告しておきます。
 実は、「栄通の案内板」にこの個展を載せたところ、ご本人から「案内、ありがとう」とのご連絡を頂きました。いつに無く間髪を入れずに個別作品の写真撮影と、ブログ掲載の件をお願いしたところ、快く快諾を頂きました。ありがたいことです。ですから、以下の文章は山田光造さん、ご本人も間違いなく読んでおられるわけです。恥ずかしい限りです。
 写真掲載だけならば簡単なのですが、作品の感想を書かねば「栄通記」らしくありません。失礼でもあり恥ずかしくはあっても書かねばなりません。(以下、敬称は省略させていただきます。)


 作品からは概ね三つの印象を得た。
 一つは(①)、日本伝統美・芸術とがっぷり四つに組む迫力と気概。
 一つは(②)、過去の伝統と呼応しながらも、「山田光造らしさ」を造形美としていかに表現するか。
 一つは(③)、形あるものから形なき絵画への変遷、それは色を含めて明るく開放的になっている。

 全ての作品を上記の分類で分けることは出来ません。あくまでも、全体を見た時の僕なりの分析です。僕自身は②に惹かれ、③に今後の山田・ワールドの可能性を見た。妻は③を楽しんでいた。
 以下、②を中心に僕好みの作品です。


711) 夕張市美術館 ③「夕張美術館と石刻画・山田光造・展」 7月1日(火)~9月15日(月) _f0126829_12511746.jpg
 ↑:「相生 楽」・1991年 紙本彩色2曲屏風 134×134cm。
 誇張された山。どこか心躍る。大きな山だが、等身大の親しさがあります。ユーモラスで、ヤジさんキタさんがこの絵を見たならば、チンプンカンプンの物語を作るかもしれない。

711) 夕張市美術館 ③「夕張美術館と石刻画・山田光造・展」 7月1日(火)~9月15日(月) _f0126829_1302129.jpg
 ↑:「相生 覚(かく)」・2005年 紙本彩色 141×69cm。
 バックの金色の無地に、清々しい立ち姿。細密描写と無装飾の背景とのコントラストが鮮やか。心大きく伸びやかになります。

711) 夕張市美術館 ③「夕張美術館と石刻画・山田光造・展」 7月1日(火)~9月15日(月) _f0126829_137501.jpg
 ↑:ともに「相生 来(らい)」・1992年 紙本彩色2曲屏風 137×136cm。
 2点1対の作品。円形は樹の枝振りで太陽や月が重なっているという想像上具象画ですが、明と暗、色と形のみの抽象画として鑑賞した方が楽しい。奥行き、拡がりと想念が膨らみます。この形のアイデアは画家の想像の基になったようだ。会場のほかの作品に生かされているのを見ることになる。

711) 夕張市美術館 ③「夕張美術館と石刻画・山田光造・展」 7月1日(火)~9月15日(月) _f0126829_1317494.jpg
 ↑:「相生 良(りょ)」
 崖から鳥が飛び立とうとしている絵だとおもいます。この絵も具象的に見るよりも、大きな塊の上とその上の小さな塊との組み合わせと、相互関係と見てしまった。屏風全体の誇張と省略、造形美がお気に入り。

711) 夕張市美術館 ③「夕張美術館と石刻画・山田光造・展」 7月1日(火)~9月15日(月) _f0126829_9452076.jpg
 ↑:ここのコーナーは非常に密度が高いのですが、石彫刻の陳列棚やバックの可動式壁面がみすぼらしかった。石作品は棚に裸で見せた方が良い。盗難防止のためにありあわせの陳列棚を使ったのが惜しまれる。
 石彫刻はびっしりと字が彫られている。ただただ感心して石ばかりを見たので、写真を撮るのも説明書きを読むのも忘れてしまった。何かのお経か物語だと思う。これを見れただけでも夕張に行く価値はあった。

711) 夕張市美術館 ③「夕張美術館と石刻画・山田光造・展」 7月1日(火)~9月15日(月) _f0126829_9544781.jpg
 ↑:「相生」・2005年 紙本彩色 455×530cm。
 きらきらと飛び出て見えるのは貝殻や鉱物です。混沌から秩序へと美しく世界が変貌する時空を表現したものでしょう。大振りでないコンパクトな美です。見る人と同次元の位相です。

711) 夕張市美術館 ③「夕張美術館と石刻画・山田光造・展」 7月1日(火)~9月15日(月) _f0126829_1023159.jpg711) 夕張市美術館 ③「夕張美術館と石刻画・山田光造・展」 7月1日(火)~9月15日(月) _f0126829_103557.jpg











 ↑:ともに「相生」、左から・2006年 紙本彩色 379×455cm、2005年 紙本彩色 455×530cm。


 きりがなくなりました。以下簡単ですが・・・
 
711) 夕張市美術館 ③「夕張美術館と石刻画・山田光造・展」 7月1日(火)~9月15日(月) _f0126829_1074179.jpg


711) 夕張市美術館 ③「夕張美術館と石刻画・山田光造・展」 7月1日(火)~9月15日(月) _f0126829_1095590.jpg



  ~~~~~~~~~~

 以上は作品自体の感想です。
 それとは別に、「石」にこだわる制作姿勢に抜群の関心が呼び起こされる。細かいことは全然分からないのですが、石に絵を描いて、版画のように紙に写し捕られて絵画は制作されていくとのこと。「石」という物へのこだわりと愛情、版と云う間接的な行為の繰り返し。最後に絵画作品として紙の上で顕わになっていくのです。

 かつて「字」は石に刻まれていた。それは単に事件を記録として後世に残すとか、為政者の事跡・尊厳を賛美するということだけを意味しなかった。「字」は単にかかれるだけではダメなのだ。「石」に刻まれることによって、言霊が実現するのだ。形骸化しているが、「印鑑」とはその歴史的なごりだ。本人しか書けないサインよりも絶対的な価値があるのだ。そういう時代があり、それを文化的に蓄積して、「石の時代」を後にした。
 字は「書」として発展する中で、「石」の物理的制約、精神的縛りから開放され「紙」の中で自由度の高い芸術へと昇華した。
 山田光造の世界は文化表現としての、「石」、「版」、「紙」ということを考えさせられる。それらは東洋美として、あたかも遺伝子に組み込まれていて忘れていたことが、一人の作家によっていろいろと気付かさせられる。


※ 山田光三の栄通記内関連サイト
    ⇒企画展)夕張市美術館「2008 G8サミット記念特別展 石刻画・山田光造・展」(「栄通の案内板」から)
      700)夕張市美術館 ①「夕張美術館と石刻画・山田光造・展」
      705)夕張市美術館 ②「夕張美術館と石刻画・山田光造・展」

by sakaidoori | 2008-08-04 10:11 | (☆夕張美術館)


<< 712) 画家のアトリエ 「第...      710) テンポラリー 「久野... >>