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栄通記

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2008年 07月 28日

706) S-AIR 「レジデンス2名のオープン・スタジオ」 終了・7月26日(土)~27日(日)

○ レジデンス2名のオープン・スタジオ
    ウエイド・マリノウスキー(豪州)&チャン・ヨンチア(マレーシア)

 会場:インタークロス・クリエイティブ・センター(ICC) 3階・アーティスト・スタジオ
    豊平区豊平1条12丁目1-12
    
    http://www.icc-jp.com/ja/access.html

 会期:2008年7月26日(土)~27日(日)
 時間12:00~19:00
 料金:無料 
   (1階受付にて、ご記名いただいてから3階にお入り下さい。)

※オープニング・パーティー:7月25日(金)、19:00スタート 


 主催:独立行政法人 国際交流基金、特定非営利活動法人S-AIR(エスエア)
 協力:インタークロス・クリエイティブ・センターICC、(財)さっぽろ産業振興財団

 問い合わせ先:特定非営利活動法人S-AIR(エスエア)
   札幌市豊平区豊平1条12丁目1-12 ICC-401号室
   電話(011)820-6056 、FAX (011)820-6057
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(7・27 日)

 非常に面白かった。かつ、有意義であった。

 まずはウエイド・マリノウスキー(豪州)君の作品を紹介しよう。

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 良い写真だ。惚れ惚れする。西欧人というものは、常に自己主張するものだと理解している。そういう彼らのステータスが、僕の単なるスナップ写真でも彼らの魅力を充分に出ていると思う。さて、本題。

 二人はレジデントとして札幌に来た。そして、生活した。そして、作品を作った。自分の生活の場を開放して、滞在中に制作した作品を見せる展覧会だ。


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 (↑:会場は3部屋です。上の写真が入り口の部屋で細長く、下の2枚の写真が右側の部屋。右側にはもう一部屋あって、普段はベッド・ルームかもしれません、今展では映写ルームとして使われていて、暗い部屋だった。)

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 (↑:本人の横の作品「恋の季節」、左から「ワイセツナロボット」、「ほたてパンチマシーン」、「非植林」。)

 入って直ぐの部屋。「森林・ルーム」と名付けられている。
 マリノウスキー君の作品は非常に言い易い。
 まず、丁寧で綺麗だ。皮肉とユーモアに富んでいる。それは、彼の作品の暴力性の為の安全弁にもなっている。コンピューターの利用など、現代文明利器に対する理解・利用度が高く、同時に現代文明・社会に対する批判精神も旺盛だ。自分の体を利用することによって、人間の内面の負に迫り、ショーマン性豊に振舞っている。エロスに関しては、遠慮がちな表現だが、破廉恥を武器にして暴れまわりそうな作家だ。

 スタジオの作品群は小品で、一貫性としての展示ではないが彼の才能・可能性のダイジェストにはなっている。現代風・マルチ作家だ。

 札幌滞在色はいかんなく発揮されている。
 市内のゴミを拾って、綺麗に色を塗り、あたかも中古品として展示している。そのデザインセンスは、やはり西欧的で作家の意図以上に異国情緒があって関心させられる。
 オーストラリアにはないという、火災用非常装置に大いに触発されたようだ。本物のように部屋に再生して、ペンキで火災のおまけまで描いている。デザイン・皮肉・ユーモア・暴力・文化の違和感と考えさせる作品だ。タイトルは「火災招来装置」と記憶するが、忘れた。

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 札幌人との交流をうかがわせるビデオ作品がある。
 祭太郎君を伴って、洞爺のサミット会場近くでの映写作品だ。警察警備員との交渉で、会場から可能な範囲の近い場所での録画だ。祭太郎君が坐臥の姿勢で20分間瞑想している現場を撮っただけだ。他にも映像が流れていて、静と動、自然と日本文化、文化の滑稽さなどを表現している。当然、「アンチ・サミット」というメッセージだ。見事なインスタレーション作品だ。
 インスタレーションを一回限りの場(空間)の展示、と理解するのは狭すぎると思う。実施されるまでのプロセスを含めて考えるべきだろう。そのプロセスで一番大事なのは人との交流・交渉ではないだろうか。人間同士の信頼関係の構築、制度を最大限に利用する為の関係機関との交渉という政治性だ。社会批判を秘めた美術表現は、「既存の国家や公共機関」との対決という側面があると思うのだが、「闘い」は交渉の中に埋め込まれているのだ。
 さすがにマリノウスキー君は西欧の血を持つ男だ。作品の本質を語ることはなかったが、西欧流美術のエッセンスを僕に示してくれた。


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 (以下、余計な雑談)

 僕は安易に「レジデント」と云う言葉を使った。僕なりにのその言葉の理解度を書いておきます。
 作家が生活基盤を離れて、海外なり国内なりに訪人(まれびと)として居住し、未知の世界で創作活動をすることだと思う。受け入れるほうが、何らかの目的があって成立する美術制度だと思う。つまり、未知の人間がそこで生活し、人々と触れ合い、相互に心の交流を果たし、受け入れる側は彼の創作の今後の糧になるようにいろいろと便宜を図ること。その為の滞在経費を応援するのです。当然、若い人が対象です。(交通費、滞在費、生活費、制作費と作家にとっては多くのお金が必要ですが、どこまで負担するかはケース・バイ・ケースです。)

 僕はこの展覧会を見るまでは「滞在」と云うことを中心に考えていた。それは明らかに間違いであった。レジデントの眼目は「そこの人達との交流」であり、作品はあくまでも結果なのです。作家の「芸術生活の過程」が大事なのです。
 だから、この展覧会を見る視点ははっきりしています。ひとまず、作品の質なり、今展のコンセプトを問うことではないのです。彼らが札幌でどういう人と交わり、この地の何に触発されたかを見ることです。その結果が今展の作品の集合です。
 もちろん、作品の質の悪さは、彼らが単に札幌で遊んでいたのではないかと受け止められるでしょう。だが、彼らを結果だけで見てはいけないのです。それは、受け入れるスタッフの力量が問われるべきなのです。なぜなら、作家は何が何だか分からなくて札幌に来たわけですから、彼らの好奇心や志向性を理解して、いろんな機会や場(サービス)を提供するのは受け入れスタッフの情熱・力量以外にはありえない。ですから、「レジデント・展」は作家自身の札幌での関わりを見ること、彼らに対して受け入れスタッフはどういうアプローチをしたかを見ることだと思う。

 今展の作家には札幌の税金が使われたと思う。厳しく暖かく関係者を見、今後も語りたいと思う。
 「彼らの作品の質は問わない」、と言ったが、今展はそうでは無かった。人間もハッピーで、好感の持てる青年達であった。
 それだからエス・エアーの広報活動に、「しっかりせいや!!」と言いたい。良い青年、良い作品を札幌市民に見せる場を考えるのはエス・エアーの仕事だと思う。

by sakaidoori | 2008-07-28 22:41 | S-AIR


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