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栄通記

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2008年 07月 20日

694) 門馬 「クリストフ・パゴノ写真展 『最後の暗闇』」  7月11日(金)~7月21日(月)

○ クリストフ・パゴノ写真展 『最後の暗闇』
     <AF2008:キャビネ・ド・キュリオジテ(珍奇陳列室―06>

 会場:ギャラリー・門馬 ANNEX
     中央区旭ヶ丘2丁目3-38・(バス停旭ヶ丘高校前近く) 
     電話(011)562ー1055
 日程:2008年7月11日(金)~7月21日(月)・会期中無休
 時間:11:00~19:00
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(7・20)

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 DM作品を見た人には歌舞伎俳優の一瞬の美、静けさの中での張り詰めた緊張感のようなものを感じた人は多いのではなかろうか。確かに、日本の伝統芸能の中の静寂美や、俳優達の一瞬の動作に凝縮された緊張美や思想というものの影響は認められるだろう。だが、それらとは一線を画した明快な思想あるいは哲学が、作品全体を覆っている。

 日本人にはプロ・アマを問わず、写真だけに止まらず、思想性(哲学)に欠けた表現の弱さがあると思う。展覧会ごとのコンセプト(目的・観点)は持ちえても、バック・ボーンとしての思想(哲学)を我々はなかなか持ち得ない。心象的な作品、あるいは自然との関係でなりたつ作品を見る機会が多い。決してそれらを否定しないが、やはり多すぎると言わざるを得ないだろう。
 哲学少なき我々の精神が芸術的質の向上のネックになっていると思う。が、「よりよき生」が思想を常に必要とはしない。逆に不必要な場合もあるだろう。徹底的に個人主義でなければ生きられない欧米人の生き様が芸術を支えているのだ。
 個人主義に徹する必要のない日本人、一方で個人主義という腫瘍が我々を明治以来侵食しつつある。その最前線にいるのが表現者だと思う。「生きる」ことと、「思想を抱く」ことの乖離を我々の廻りの表現者は体現しているだろう。

 宗教(キリスト教)が細胞の一つ一つに組み込まれ、そこから哲学を持ち、詩を発するのがヨーロッパ人だ。フランス人写真家の作品を見て、哲学を持つ人間の作品のゆるぎなさに圧倒された。しかも、作品はフランス人特有の詩的ムードに覆われているのだ。


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 テーマは「死」だ。
 幾つもの死者のパターンがある。
 死んでしまって、肉体という物質性だけを残し風化しかかった顔。あたかも演技のように死に装束に顔を包み、人としての精神性を剥ぎとられつつある顔。最後の審判を前にして、何かに挑みかかるような鋭い目。諦めた顔。逆に断末魔の叫び顔。死を前にした顔の想像力が写真家の心を満たしている。僕は作品を見ることは出来るが、自分自身の「死の観念・死に顔の想像力」の乏しさを思い知らされる。

 写真家は「死」を前提に顔を撮る。「より良き生の確認」などという、ヒューマニティーを無視するかのようだ。日本的美の表現を利用しながら、「死」を見詰めている。それは写真家の恐れの反映なのか?事実として認めた諦念(ていねん)なのか?日本人にはわからない最後の審判の為の心の準備なのか?
 問うこと、それは哲学することであろう。「死」を哲学すること、何と厳しい作業なのだろう。

 それにしても美しく不気味に顔が死が僕に迫ってくる。

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 (↑:切られた顔。)

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 (↑:堕ちる顔。)

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 (↑:哀しき叫び顔。)

by sakaidoori | 2008-07-20 22:46 | 門馬・ANNEX


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