2008年 06月 06日
○ 上條陽子・熊谷悠子 「明日展」 会場:ギャラリー・門馬 中央区旭ヶ丘2丁目3-38・(バス停旭ヶ丘高校前近く) 電話(011)562ー1055 日程:2008年6月2日(月)~6月10日(火)・会期中無休 時間:11:00~19:00 主催:当館(ギャラリー門馬) ーーーーーーーーーーーーーーー(6・6) 写真は全作、上條陽子。 【略歴】 1937年 神奈川県横浜市に長女として生まれる 1972年 夫と共に、ヨーロッパを車で1年間の走破旅行 1978年 第21回安井賞受賞 1981年 文化庁芸術家在外研修員として約1年ヨーロッパに滞在 1986年 聴神経鞘腫で手術(病気を克服しての画家として、テレビ化される) 2001年 レバノンのパレスチナ難民キャンプで、子供の絵画指導を行う。その後も継続して自費で訪問し指導している 現在、相模原市在住 自分にとって関心のある部分だけを画集より抜粋して略歴をかいてみた。 会場には熊谷悠子さんが居られて、簡単に画家の人となりの話しを伺った。病気により絵筆を持つことが不自由とのこと。そのことが厚紙創作になっとのだろう。それらはオブジェとして、劇場空間になっている。しかも、厚紙作品は組み合わせや展示の仕方で、壁面作品にもインスタレーションにもなる。いかようにも千遍変化し、細部にこだわることなく画家の脳内世界が三次元化されている。 展示は玄関の上がり廊下に小品の熊谷作品があるだけで、部屋展示は全作上條陽子の壁面作品だ。主たる大作、「レクイエム」と奥まった喫茶ルームの「デッサン作品・ムーブメント」を見れば、今展の意味は了解できる。「上條陽子」を知ってもらいたい為の展覧会なのだ。 会場には熊谷さんの古き友人が居られて、しきりに彼女の作品の少なさを残念がっていた。確かにそうなのだが、むしろ上條陽子・作品を持ってきた彼女の意思と情熱を賞賛すべきだろう。同じ画家が、自分を置いて他の画家を前面に押し出すということは稀だ。しかも、彼女が出来る範囲で、もっとも効果的な手段を考えたのだ。それも謙虚に。DMには一切の説明がない。安井賞受賞者だとか、レバノン難民だとか、戦争難民児童だとか、ヒューマンや名声を利用するのを避けている。 私は作品にも大いなる刺激を受けたが、熊谷陽子の他者を立てる姿勢にはそれ以上のものを受けた。 「レクイエム」と「明日」が示すように、黒と白で対比された過去と未来への画家のメッセージである。過去の事実の上に成り立つ、未来への希望、展望、願望でもある。それらはパレスチナの難民児童によって触発された現代画家の現在への直視であり、「パレスチナを見よ」という訴えでもあろう。それは人道的で美しい。だが、そういう政治的メッセージに関係なく画家の人を見る目、表現する力、いわゆる画家魂に魅入られてしまった。それに、こんなことを言えば誤解を生みそうだが、僕にとって「パレスチナ」はこの際あまり関係ないのだ。それに触発された上條陽子も、どうでもいいのだ。遠くに自費で絵画指導という姿も素晴らしいと思うのだが、一々人道的な人達を賞賛しても仕方が無い。結果としての画家の作品と作品から伝わる人間・上條が好きになったのだ。 2階には厚紙コラージュとしての小品が壁に並んでいる。それを見れば、元々は色を多用していた画家だと想像される。禁欲的な白黒と人間の塊の世界から、色としてくつろいでいるのかもしれない。 (熊谷悠子・作品は③にて) 写真は続く
by sakaidoori
| 2008-06-06 22:00
| 門馬・ANNEX
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アバウト
丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
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