栄通記

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2008年 06月 04日

642) たぴお 「札幌現代美術展」 終了・5月19日(月)~5月24日(土)

○ 2008 札幌現代美術展

 会場:ギャラリーたぴお
    中央区北2西2・道特会館1F (中通り・東向き)
    電話(011)251-6584
 会期:2008年5月19日(月)~5月24日(土)
 時間:11:00~19:00(最終日は18:00)

 【出品予定者】
 林教司 脇坂淳 宮本市子 小林孝人 西城民治・・・以上5名。
ーーーーーーーーーーーーーーー(5・24)

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 5人の展示でしたが、最終日の5時過ぎには脇坂さんの作品は本人の時間的都合で撤去されていました。小さなハプニングで、本当の意味での全体の様子は語れないのですが、以下の「語り」をお許し下さい。


 男性作家群は、小さくとも真面目な試み、自分の殻を少しでも広げようとしている感じです。総合タイトルは少し硬いのですが、実際昨年までのこの展覧会は男臭くて、勝負しようと意気込んでいる感じでした。今年は写真や木のオブジェ(見ていない脇坂さん)や女性の参加で、彼らは内向的であったり、軽い感じでメッセージ性の少ない「現代美術展」になっていると思いました。タイトルは方便として見たほうが楽しめたのではないでしょうか。

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 ↑:小林孝人

 小林さんの写真は白黒の風景で、回顧調とまではいかなくても、どこか過去調で優しく時間の中にいるというのが今までの印象です。今回、カラーでしかも色付いた花を撮ったり、風景もそのもの表現というより、どこか幻想的・心象的世界です。決して、この数ヶ月に撮った物ではありません。普段からこういう写真も撮っているのですが、発表していないだけだったのです。この辺が面白い。個人には幾つかの顔があるものですが、発表となるとある種の幅で勝負する物です。小林さんの場合は、その幅が揺らいだのか、暖めていたのかは分かりませんが、「人間・小林」の顔を見れていたく感心もし、嬉しくもありました。
 きのこは彼の仕事の顔です。「きのこのコバヤシ」と覚えてください。あるいは、「きのこのこのこ、コバヤシさん」。


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 ↑:西城民治、「矛盾に立ち向かう火の玉ごころ」。

 この会を主宰している西城さんです。軽いのりが西城さんの特徴です。写真を撮ったり、紙を人型に切って黒くスプレーで塗ったりと、いろいろとしています。当然インスタレーション的なことも好きな人です。
 今回は「油彩で勝負」です。マチエールと計算された斜線がポイントです。彼の軽さはタイトルの深刻さに比して、作品からのイメージとのギャップです。「矛盾に立ち向かう火の玉ごころ」は仁王の様に力強く立ち向かうというよりも、「あー、人生っていろいろあるなー、チキショー。俺だって俺だって、この社会の荒波に気持ちは強く立ち向かっているんだー」と心で小さく叫んでいるみたいです。男の小さくとも正直な「戦い」。
 火の玉の上部の赤い部分がエロスに見られることに、西城さんは不満の様子でした。同時に、今後の表現の方向性も見えて、意義のある展覧会だったと仰っていました。


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 ↑:宮本市子

 ハート型の大きな作品は、先日の抽象派協会展への出品作と同じです。(下の写真は、その部分図。)違いは、4個の部分でなりったって居るのですが、今回は隙間を空けなくて引っ付けて、完全に一つの作品にしていることです。この作品のことは以前に語ったので省略します。
 同じ作品が、場所や違う作品と並べられる時にどういう変化を起こすかも、作家にとっては気になる所でしょう。今回は西城さんと林さんに挟まれて、男性作品が妙に真面目な作品だけに、若々しさが目立っていました。ハート作品とピンクの作品の印象の違いも面白い。ハート型が「箱入り娘」あるいは「昼の上品に振舞う娘さん」としたら、ピンクの作品は、「ちょっとアバンチュールを楽しんでいるおてんば娘」って言う感じです。
 ピンクの作品は完成度はまだまだな感じですが、そもそも作家はどの辺を完成と捉えているのか、気になる所です。


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 ↑:林教司、上の作品「イカロスに捧ぐ」・2004年 80×58cm。

 二作とも旧作です。
 「イカロスに捧ぐ」は凧です。イカロスはギリシャ神話にでてくる話です。父親の戒を破って、あまり高く飛びすぎて蝋の羽根が溶けて墜落するという悲劇物語。基本的な意味は高いところや低いところを避けて真ん中の安全なところを飛べ(歩め)というもの。極端を避けて「中庸」を教える教訓ですが、物語は膨らみいろいろな象徴や暗喩として「イカロスの翼」は使われます。
 物語に物語を生ませる一人として林さんは登場するのです。もはや「中庸」としてのイカロスはいません。「蝋の羽根でダメなら、イカルスよ!この凧を使って飛んで行け!」ですが凧は紐につながれて存在する物。紙だから太陽に近づきすぎては燃え尽きてしまうかもしれない。あまりに強い風でもダメです。西城さんの「矛盾に立ち向かう火の玉こころ」と同じなのです。証拠に、凧の模様には傷ついた「手」が刻印されています。ピンク色は林さんの悲しい遊び心。自虐的な手、ご自身の手でしょう。イカロスの矛盾は林さんの矛盾です。どこか宮沢賢治の「夜鷹の星」も連想されます。憲治は法華経という末法臭い人だった。林さんは紳士ですが、賢治的な宗教色をお持ちだと思います。・・・

 この凧を見ていると、どこか狂言芝居的な涙がでてきます。タイトルに成功しているが故に、秀作だと思います。こういうのを「現代美術」と理解しています。

by sakaidoori | 2008-06-04 23:36 |    (たぴお) | Trackback | Comments(0)
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