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栄通記

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2008年 05月 31日

635) コンチネンタル 「金工展」・学生展 5月27日(火)~6月1日(日)

○ 金工展
   (北海道教育大学岩見沢金属工芸研究室・展)

 会場:コンチネンタル・ギャラリー
    南1西11 コンチネンタルビルB1F・東向き
    電話(011)221-0488
 会期:2008年5月27日(火)~6月1日(日)
 時間:10:00~18:00(最終日のみ~17:00まで)

 【参加学生】
 院1年 佐藤あゆみ、4年 吉成翔子 杉田斐子(あやこ) 町嶋真寿(ますみ)、3年 清水愛美(まなみ) 佐藤有希、2年 上舘恵理 佐々木清美・・・以上、8名。
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 鉄を中心にした女子学生による金属作品展。非常に興味深く、面白かった。

 彼女達は学生だから、技術を習得中であろう。「造形」という美術概念も勉強し作品に取り込んでいることだろう。だが、あいにくと技術的には年齢を考慮してもたいしたことはない。作品を見ても、あらためて彼女達の作品から「造形」を考えるレベルにまでは達していない。
 それでは何が面白いのか?技術や芸術を勉強してはいるが、そんなことには関係なく、「今の私を、私達を見てよ」という、あまりにも無防備とも思える素直さが良いのだ。しかも、学校展にありがちな全体の不協和感がこの展覧会にはない。あたかも、全体のことを考えての作品になっている。おそらく、彼女達個々の感性に、通奏低音のような共通性があるのだろう。意図せずにでてくる共通感覚、これがこの展覧会の面白いところだ。

 もし総合タイトルをつけるならば、「異星人とのファンタジー」だろうか。
 そのメルフェン性や幼さ拙さに「まだまだ」という意見もあるだろう。だが、軽くでてくる創作精神に、僕は拍手を送りたい。

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 ↑:吉成翔子(4年)、上から「何時でもいい」・40×90×220cm・鉄、「かわいこさん」・12×12×15cm 16×16×15.5cm 19×19×21cm。
 
 吉成さんは他にも「雑貨やさん」という作品があります。彼女は田舎育ちで、幼い頃の古里の田園風景や家の周りのごちゃごちゃした物が創作原点になっているようです。自分の原体験を喜びでストレートに創作に結び付けれることは良い事だと思う。ここから作品上の変化球や深みが生まれると思う。卒業後、どう鉄と関わるかは気になる所だが、分野に拘らないで進んで欲しい人だ。
 「かわいこさん」、これは面白い。ただ鉄を卵形に作ってぶら下げただけだが、鉄をテングスで下げるという思いつきと実行がよろしい。一つの造形美学なのでしょうが、絵本的な発想の転換と、見る人に喜びを伝えることの出来る人だ。


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 ↑:左から、佐藤あゆみ(院1年)・「雲路」・30×70×148cm 鉄&たも、杉田斐子(4年)・「おしりのでっかい宇宙人のいす」・100×120×85cm。


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 ↑:清水愛美(3年)・「あなた たね」・70×70×150cm。
 優しい装飾的な曲線模様で、どれだけ完璧に球体が作れたか?その球体に閉じ込められて、透かし見られている卵の内部。愛の始まりなのでしょうか?


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 ↑:上舘恵理(2年)・「生活」・42×46×27cm・銅 アクリル ひも。
 一人異質な作品です。そして、僕はこれがとても好きなのです。
 足の太ももから折り曲げられた膝の一部と見れるかもしれない。そうすると、アテネ芸術のようなリアルで大きな人間が浮かび上がるのです。
 僕は正座させられて、その足を縛られて、腰を曲げている人を連想した。それは綺麗な女性で、白装束に自害させられる姿になってしまった。身悶えるエロスがお尻の部分などにほんのりと感じられて、随分と連想をたくましくして、なめる様にして見てしまった。
 あるいはアフリカン太鼓にしてもいい。実際、上部の平らなところを静に叩いて音色を確認した。
 ただ、タイトルがいただけない。もっと工夫が欲しい。「生活」という言葉で、「罪と罰」を思い出した。主人公がシベリア流刑になり、追ってきたソーニャとの関係の中で、「・・・生活が到来したのだ。・・・新しい物語が始まる・・」という言葉で小説が終わると記憶する。もし、この故事からの本歌取りならば、「ソーニャ」のほうがタイトルにはいいのだが・・・。


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 ↑:佐藤有希(3年)・「ex1stenc1a」・110×70.5×204cm・鉄 タイル 鏡。
 作品もいろいろと出していて、意欲的実験的傾向の強い人です。アール・ヌーボー風の流線好みなのかなとも思いますが、どうなのでしょう。
 
 
 他の学生は今回は省略させてください。
 会場には古風豪華な薪ストーブがあった。「2007年度 3・4年生共同制作」とあった。今展の4年生以上が関わっての作品だ。楽しい作品を作ったものだ。何を作るのかというアイデアと図面作りが大変だったろう。心温まる作品である。
 ふと、昨年のテンポラリーでの阿部守・作品を思い出した。勿論、鉄だ。その折に、彼女等の教官でもあろう坂巻氏とも会話が弾んだ。氏に「雪の持つ、色や季節感だけではない『造形性』」という、貴重な意見を伺うことが出来た。今秋、阿部守さんはテンポラリーで個展をされます。わざわざ九州からの来客です。是非勉強の為に訪問して下さい。

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 「鉄」、人類にとってそれほど古い金属ではない。だが、鉄は「文明」の構築という礎を気付いた。「都市国家」を超えた「国家」を作った。生産性を高めたが、人口の過度の集中や高度な武器をもたらし、「戦い」の世界に革命をもたらせた。支配構造を造ったといってもいい。
 その発見は近代的男の論理の出発でもある。その「鉄」の造形の学徒に男子が集まらないのは、現代の皮肉を体現しているようだ。

by sakaidoori | 2008-05-31 12:02 | コンチネンタル


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