人気ブログランキング | 話題のタグを見る

栄通記

sakaidoori.exblog.jp
ブログトップ
2008年 04月 18日

605) 4月17日(水) 芸術の森・雑記

○ 西洋美術雑感

 芸術の森美術館に行った。
 目的は「イタリア美術とナポレオン・展」だ。もう終わったが、大丸ミュージアムでロココからバルビゾン派の絵画展を見た。西洋絵画史の勉強という意味合いで続けて見ることにした。

 ルネサンス絵画ー遠近法などによる写実描写は人類の視覚表現としては例外中の例外であろう。人体を切り刻んで、人の秘密を探ろうとした文明は古代エジプトや中国など幾多もある。だが、それらを詳しくありのままに描こうという動機は、いままでの「人類」にはなかった。ルネサンス絵画に現代人を重ねるのももっともな話だ。
 そして、短期間に「リアルに描き上げる技」を身につけてしまった。人にとって技術とは驚嘆すべきことだが、きっかけとその気になれば何でもできるということか。その証拠をラファエルやダ・ヴィンチに見る。ミケランジェロは長生きしすぎたが故に、完結した古典美だけで終われない悲劇を背負ってしまった。

 西洋人にとってもルネサンス的古典美は郷愁のようなものなのだろう。あまりに高みを成就したが故に、個人主義という病に犯されている彼らには満足できない大きな穴を作ってしまった。完結された集団的理想美からの逸脱が画家の使命になったのではないか。
 ルネサンスの古典主義を通奏低音のようにして、マニエリスム、バロック、ロココ、ロマン主義と続く。クールベなどのリアリズムは近代という衣を着た古典主義の再来だろう。印象主義とその前後は現代の出発と言われている。僕はルネサンスの現代人による再生と認識している。キリストという一人の神から、表現者一人一人が小世界の神になった。手の技は現代の機械や化学の技を取り入れてリアリティーの幅をもたらせた。

 西洋人のことをあれこれ行っても仕方が無い。
 地理的にふきだまり日本は外の知識・知恵を良しとして取り入れた。そんな伝統を遺伝子に組み込んでいる。ヨーロッパ文明は我々には半強制的ではあった。相手に飲み込まれるという危機感が、諸々のエネルギーを結集して逆に積極的に取り込んだ。このツケからいつになったら自由になれるのだろう?
 二つの美術展はあまりに僕等からは遠いはずだ。なのに、僕には親近感と違和感が残る。絵を見れば見るほど西洋知が無縁でなくなっていく。

by sakaidoori | 2008-04-18 11:35 | ◎ 個人記


<< 606) 4月17日(水) 芸...      604)市民ギャラリー ②「’... >>