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栄通記

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2008年 03月 26日

572)ADPギャラリー ①「小樽商科大学写真部三月展」 終了・3月16日(日)~3月23日(日)

○ 小樽商科大学写真部 三月展
    『お前は今までに食べたいパンの枚数を覚えているか』 
    
 会場:ADPギャラリー
    中央区南2西10丁目1番地 アラゼンビル3F(東北角地、中小路の南側に入り口)
    電話(011)214-8411(担当・北野原)
 会期:2008年3月16日(日)~3月23日(日)
 時間:10:00~18:00 (最終日17:00迄)

 協賛:㈱アラゼン
 後援:ADPギャラリー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー(3・23)

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 会場はビルの3階。若手の表現者を支援する為に、無料で会場を提供している。真四角な場所で事務所という感じだが、利便性も良く、適当な広さだし、是非個展でもグループ展でも利用されてはどうだろう。詳細は会場を見学するついでに、上記の担当者と相談されたらいいと思う。

 小樽商科大学、美術にはあまり馴染みのない大学だ。それと、小樽は歴史もあり美術館内の市民の発表の場など充実しているから、ダイナミックな札幌ー小樽の交流は少ないのではないだろうか。こうして、学生ではあっても、わざわざ札幌で開催されることを嬉しくもあり、応援したくなる。彼等自身が札幌の学生・表現者と積極的に交流されたことであろう。

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 今展の記は少し大上段的ですが、展評風に書き進めます。ほとんどの意見は当日会場に詰めていた岩村君と話したことばかりです。思いっきり自分の意見を述べました。文章で丁寧語や歪曲表現はかえって失礼と思い、美術愛好家の断定意見を述べます。

 名前から判断して男性6名・女性2名、一人1点から10点の展示構成。  敢えてくくって言えば、男性陣は「人物」との距離感に特徴がある。女性陣は「美」に特徴がある。

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 ↑:佐々木貴博
 カラー2点を含めて7点の展示。上の写真が強烈に迫ってくる。人の痕跡を一瞬の強烈な光の中に閉じ込めようとしている。閉じ込めずにはおれない強い意志を感じる。それと、佐々木君の特徴は絵画的構成美を写真の白と黒と輪郭・光で表現している。
 上の写真と絵画美という視点に立って、展示を見直す。僕にはカラー作品は邪魔だと思う。白黒のメリハリの強さがカラーはボケてしまっている。強い1点の視点で作品の取捨選択の余地がある。

 
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 ↑:高橋隼人。被写体はインド、チベットと旅先で出会った英国人。
 自分自身の体臭をもろともせず、相手にグイグイ接近して、ゲタゲタ大笑いして「パチリ」。人間大好きの典型的な作品だ。揺らぎがないのが良い。 更に良いことは、メインのインド・チベット人とは違って、知り合った西洋人青年を撮っているのだ。それは西洋人が旅先で現地の人達とくつろいでいる光景で、それ以上に西洋人を自分の分身の様に扱い、展示空間に「高橋隼人」を忍ばせているのだ。憎い演出効果だ。
 問題はこういうカメラマンが「日本の人」をどんな風に収めるかだ。外国だから可能、許せることがある。その手腕を日常性の中で見たいものだ。

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 ↑:中津川道也
 小振りの作品4点を斜めに並べての展示。
 一見たゆたゆしく心もとない写真だが、僕は繊細な強情さを感じる。特に、上の写真の様に子供を撮った写真が2点ある。良い写真だ。道路を一人歩く少年の強い意志、孤独・・それをカメラマンは睨みつけるように後追いしている。そこには叙情性はない。もちろん、その可能性をカメラマンは体質的に備えてはいるが。小さいがピンと張り詰めた心という風船、カメラマンは執拗に追いかける。5・6点程度の組写真でいいから、もっと沢山発表経験を積んで、中津川君の感性を確信として発表してもらいたい。経験を積むべきだ!

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 ↑:岩村亮太
 岩村君と人の距離、それは着かず離れず、傍観者にも当事者にもなりきれない中途半端な位置を取る。それは現代青年気質を正直に表明している。好きな女の子に「お茶飲もうよ・・・それじゃ、また明日」と笑顔で分かれる。人生はそれでいい。被写体との距離感もそれでいい。ダメなのは表現は徹底しなければならないということだ。中途半端な位置が自分の距離感と見定めたのならば、その距離感で作品の全体構成をすべきだ。幅のない展示は面白くないという批判を受けるかもしれない。だが、ぶれない定点を自分なりに掴むことが先だ。その自信が少数作の発表の時に、自分なりの幅・変化を入れる呼吸を生むと思う。
 今展、いろいろな要素を入れ過ぎた。文章説明が多すぎた。バスの写真、良い写真だと思うが全体との整合性に疑問だ。気に入った作品だから挿入したのだろうが、断腸の思いで排除の選択もあったのでは。
 「人との関係が中途半端な距離」と言った。だからと言って彼は人間不信ではない。「覚めた目」、「温かい目」の自覚と、作品に対しては冷たい態度をとるべきだ。君の被写体は身の回りに沢山ある。君の目を通して僕自身が「人間」を再発見したい。

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 ↑:芳岡完祥(ひろただ)、「ZZZ ~親愛なるkkk へ」
 彼はこの作品1点だけだ。
 KKK(クー・クラックス・クラン)とは、アメリカの白人至上主義団体だ。おぞましい黒人排斥・暴力主義は止まるところを知らず、行き着くところまで行って消えてしまった。アメリカ南北戦争の南部敗戦を契機に生まれ、1929年の世界恐慌の中で社会的存在意義を失った。現在はどういう形で生き残っているのかは詳しく知らない。
 そういう政治色の強い「人物」の一枚勝負。ことさら展示方法に異を唱えないが、あと何枚か連作として見たかった。芳岡君の主張が皮肉にあるのか、ユーモアにあるのか、チュッとした冗談にあるのか、そういう芳岡ワールドを楽しみたかった。そういう意味で、僕にとっては論ずべき対象ではない。昔を思い出して簡単な勉強はさせてもらった。
 残るのは写真の出来栄えとしての技術的なことだが、僕には皆目分からない。

 (②に続く

 

by sakaidoori | 2008-03-26 14:34 | ADP


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