2008年 03月 04日
○ この指とまれ展 ’08冬 ・・水彩&油彩 会場:ホテル・ポールスター ポールスタープラザAB 中央区北4西6(道庁北側・南向き) 電話(011)241―9111 会期:2008年2月16日(土)~3月1日(土) 時間:10:00~19:00 (最終日は17:00迄) 【出品作家】 石垣渉 伊藤延男 梅田真知子 川上直樹 川上町子 橘田君代 椎名次郎 村松鞠子 安田紀子 吉田博美 竹津昇 湯浅美恵 小路七穂子 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(3・1) 初めての場所はそれだけで楽しい。美術館など公共の施設は緊張しながら、この展示会のようにホテルの場合は少しうきうきしながら行くことになる。もっとも高中級ホテルというものは僕には敬遠気味のところだから、そういう意味では緊張感をともなう。ギャラリー廻りでの自己改造?の一つに、自分にとっての無縁の場所に積極的に絡もうという意識だ。そもそも、「ギャラリー廻り」という言葉にどこか有閑的な響きがあり、それを口にする自分に少しの恥じらいを抱くが、これも人生後半に入ったが故の、人生の選択のの一つだ。 DMの住所を一周するが道庁ばかりでホテルがない。探しながらあれこれ見るのもいいのだが、あいにくの雪模様と暖気で足元が悪い。携帯とは便利なものだ。 会場はホテルの地下1階(上段の写真)と地下2階(下段の写真)の中央部分の2ヵ所に分散。作品は1人1・2点の出品。多分、石垣渉さんだと思うが彼だけはネーム表示がない。これも一つの趣向だろう。 ↑:竹津昇。左から「雪明り」・200×270㎜・ワトソンに水彩・2008年、「立春」・630×51㎜・〃・1993年。 「壁と茶と白」の竹津さん。彼のモチーフは建造物とその周囲、そして人物だ。可愛い少女にロマンティシズムの強さを思ったが、15年前の作品だ。 新作は旧家だ。擬人化されたような建物で愛嬌がある。新旧作の並示と画題の組み合わせに画家自身の原点確認という作業を見た。竹津昇のロマンとヒューマンが正直にでた作品だと思う。 ↑左側:湯浅美恵、「OUTER SPACE」・サムホール。 水彩では数少ない心象的抽象作品。 「アウター・スペイス」とは屋外と理解したが、辞書によると「宇宙空間」である。星々はホワイト空間で青く輝き奏でているのだろう。この白は雪でもある。青は生きとし生きるもの、生命の象徴でもあろう。もう一点植物の作品がありましたが、こちらの方が抜群に好きです。 右側、村松鞠子、「夢に咲きし花」。 シャープな絵を描く人だ。理知的な鋭さと言ってもいい。身だしなみを崩さないない女性が凛として立ち、こちらを正視している感じ。 作品は花装飾によくある仕様で、楕円形の中に植物を描いている。白の特性で背景が目に迫ってくるが、花達はその白さに包まれながら更に飛び出す勢いで生命力を助長している。よくあるスタイルだが、画力が存在感を高めている。 ↑:左側、梅田真知子、「菜の花」。右側、川上町子、「春待つ日」。 この2点は写真のようなスタイルで並んでの展示。この辺がグループ展の良さだと思う。似た作品でありながら微妙に異なり、全体のボリューム感を大きくしている。 僕はこの二つをレクイエム(鎮魂曲)、私的献花に見えて仕方がなかった。泣きながら死者に手向けるというよりも、残された者達の余生への自覚的生の確認。大事な人は逝き、思い出をしまい春を待つ・・・。 ↑:吉田博美、「冬が降りてきた日」・SM。 印象的な絵でした。実景をモチーフにしていると思いますが、山水画的理想郷と理解しました。 雪に埋まった村落に日の出の光?日没の残光?が希望の象徴のようにかがやいている。雪の白さが暖かい。不思議なタイトルです、「冬が降りてきた日」、まるで雪と闇に閉ざされた世界を楽しんでいるようです。「オリル」・・心地良い日本語です。雪も光も冬も地上に降りて、生活が始まる。人のつながりが始まる・・・吉田さんの言葉が聞こえてきそうです。 ↑:川上直樹、(左側はメモミスにより不明、)右側は「残照」。 (作品は吊り下げられたワイヤーが壁で固定できない為に、前かがみになり見難くかった。川上さんの作品は油彩ということもあり分厚くて重たい額装なのでなお更であった。残念なことだ。) 油彩画家として気を吐いていた。水彩は白が際立つ為に、白色の特徴で目に迫って太く見える。作品以上に大きく見える。 川上作品は闇の世界である。黒である。背景は二次平面として深く沈み、画質感で存在感を出す。そこから静物としての物がこちらに迫り絵画としての三次空間、四次空間が見る者にイメージとして再構築される。物語が始まる。絵画を語るのに文学的説明的ということを作品・作家を貶めるという考えがある。僕はその考えをとらない。良い絵画は十分に文学的だ。音楽的哲学的で、それ以上だろう。ただ、その文学性・説明性が単に面白いか面白くないかだけだ。 川上絵画は画題の説明だけから何枚かの皮を剥ぎ落した感じだ。背景だけを、リンゴだけを、色だけを、形だけを描き始めたようだ。当然だが、何かの「そのもの」を描いた時には同時に他との関係での主張が生まれる。視覚芸術はそれらが瞬時に見るものの判断に委ねられるのだ。その時に面白くない絵は「説明的」だと言われるだけだ。 画家にはそれぞれの「リンゴ」がある。川上・リンゴはかじればひょうきんな味がしてユーモアな味がする。 (「壁あるいは背景」と「床あるいは物が置かれた空間」のことを考えている。前者は目から等距離な二次平面だろう。後者はどうしても透視画法的に遠近感による常識的三次元になりがちだ。両者は絵画では別の世界のような気がする。描く作家により視覚的価値が違うのだろう。表現の難しさだと思う。川上作品を見て、具象絵画の深みと楽しさを確認した。) とても全員の作品紹介はできません。以下何点か②で下に続けて作品写真だけ載せます。
by sakaidoori
| 2008-03-04 15:27
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アバウト
丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
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