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栄通記

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2008年 02月 13日

※)旭川美術館 ③「アール・ブリュット/交差する魂・・戸來貴規の場合」  1月16日(水)~2月17日(日)

 日本側出品者の特徴が分かるので、はたよしこ・さんの会場キャプションを全文載せます。描かれた模様(文字)と、その束と、今日までの「日記」の扱われ方に深い感銘を受けた。アール・ブリュットがどういう意味かが想像できると思います。
 以下。会場キャプションより

 B5版の紙に不思議な幾何学模様が描かれ、高さ約30cmに積み上げられて、事務用の黒い綴り紐で、中央部あたりで無造作に綴られている。それは1000枚以上もの束であった。描いたのは、戸來貴規(ヘライ・タカノリ、1980~)。知的障害者施設の職員によると、これは文字であり、彼の日記なのだという。よく見るとその「日記」は日付と気温の部分の数字が毎日違っているだけで、ほかは全部同じことが書いてあった。「きょうはラジオたいそうをやりました(中略)みそしる うめぼし・・・」そして裏面には「3月15日水曜日 天気晴れ気温16℃ へらいたかのり」。図形とも記号ともつかない模様を指でなぞりながら、職員が本人から聞きだした記述の翻訳だ。

 幼少のころはおとなしい少年で、千葉県にある普通学校の知的障害児特殊学級に通っていたが、小学5年生のとき、父親の転勤に伴い岩手県に転居した。そのころから大きな癲癇発作が起こるようになり、乱暴な行動に困り果てた両親は仕方なく児童養護施設に入れた。自閉症と診断されたのも、このころらしい。現在暮らす施設「やさわの園」は、成人の知的障害施設である。入所当初は態度も粗暴で、職員の誰もが理解困難でお手上げだという存在だった。そこに、彼の描く連続模様の美しさに心魅かれたふたりの女性職員が丹念に歩み寄り、薄皮を剥ぐようにして彼の表現の謎を一枚づつめくりはじめたのだった。

 一つの図形が言語としての姿を現す。まるで、古代文明の文字を解読してゆくように、人間としてのと戸來が立ち現れた。彼の孤独の営みが、少しづつ交信の回路となっていったのである。しかし、過去10年以上の日記は、すでに破棄されていて存在しない。(了・2月13日記)

※)旭川美術館 ③「アール・ブリュット/交差する魂・・戸來貴規の場合」  1月16日(水)~2月17日(日)  _f0126829_23522875.jpg



 (記は続く

by sakaidoori | 2008-02-13 23:48 | ☆旭川美術館


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