2008年 02月 13日
(以下、あくまでも私見ですので、認識の間違いの指摘を待ちます。) 【概要】 ○「アール・ブリュット」とは何か? 芸術家&収集家ジャン・デュ・ビュッフェの造語(1947年に提唱)。この言葉の英語訳が「アウトサイダー・アート」(1972年に批評家ロジャー・カーディナルが使い始めた)。日本ではアウトサイダー・アートの方が有名で、一般的に流布されている。 その意味は直訳的には、「生の芸術」。高い表現力をもった作品が前提だが、作家そのもののありようも問われる概念である。ジャン・デュ・ビュッフェが提案した明確な主張によって作品及び作家が関係者によって選定される。もちろん、アートはアール・ブリュットであるかないかを価値判断とはしていない。限りなくアール・ブリュットを限定することによって、「アートとは?」「創作とは?」「表現とは?」を人に問いただし、深めることが可能になるという価値判断だ。 ・正規の美術教育を受けていない ・メジャーな存在ではない ・見せよう、評価を受けようという意識の無いもの ・流行や社会や伝統の影響をあまり受けてはいない ・作家自身のやむにやまれぬ何かの思いが制作動機であること ・創造性に富んだ作品 ※今展の日本側の企画担当者と招聘された人たちとの違いは「障害者アート」の比重の違いだろう。日本側はその関係者と言ってもいいだろう。コレクション側は全く関係ない。作者に障害があるかないかは、この概念にとっては問題にしていない。もちろん、彼・彼女等がその担い手の一翼ではある。 ※一昨年(2006年11月10日~21日)、コレクション側が日本のアール・ブリュットの作家・作品の調査・発掘のために来日した。 日本側は福祉施設を中心に、50箇所の人数にして300人の作品を用意した。結果的には今展に選ばれた10人が今回のアール・ブリュット作家ということになる。選定には日本側は一切関係しない。勿論、手厚いアドバイスや配慮は当然である。日本側は福祉関係者で、視野には障害の有無という垣根を絶対にはしていないが、まずそこから出発したというのが実情だ。今後は美術館学芸員、評論家、地方の芸術愛好家たちによってアール・ブリュット的作品・作家の掘り起しがなされるだろう。美術・芸術を狭義の美術史に捕われない視点での関わりが進むと思われる。 ※日本側関係者にはたよしこ・女史がいる。肩書きは・ボーダレス・アートミュージアムNO-MAアートディレクター&絵本作家とある。 会場には要を得たキャプションが貼られてある。日本側担当は彼女の仕事であるが、素晴らしい。図録にはまとまったレジメ風の寄稿文があるが、難しい言葉も過剰な表現も無い。彼女自身の関わりと日本の現状を無駄なく書いている。 日本側を中心に個別作家のことを後日書いていきたいと思う。 17日・日曜日まで。 ![]() ↑:本展の図録。紀ノ国屋書展、はたひろこ編著「アウトサイダー・アートの世界」・定価2400円(+税)・P176。 一般書店発行の図録。会場風景はないが、ほぼ全ての作品を収録。会場キャプションの説明書も掲載。本の性格上、文章の全てに英訳があるが、文字や写真作品は大きくて見やすく読み応えがある。見れなかった人には良い資料・読み物だが、現物作品の伝わりやすい作品とそうでないのがある。それは仕方がないことで、是非観覧を。 (来週に③を書きます。)
by sakaidoori
| 2008-02-13 14:22
| ☆旭川美術館
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アバウト
![]() 丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
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