2008年 01月 31日
○ 久野志乃と斉藤周・展 「かるいからだ」 場所:茶廊法邑 東区本町1条1丁目8-27 電話(011) 期間:2008年1月19日(土)~1月27日(日) 休み(定休日)・火曜日 時間:10:00~18:00(最終日は17:00迄) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「かるいからだ」・・・軽いタイトルだ。確かにかるい色合い、そういう画風の二人のハーモニーである。しかも若き麗しき女性画家と、若くはあるが女性画家とは相応に年齢差のある紳士との組合せの展覧会だ。心細い小さな作品の組合せと、ピンク色を中心に部屋がシャボンのようなふわふわ感に包まれていた。 二人の画風に対する先入観が「かるい」という言葉に敏感に反応する。 久野志野・絵画は全身をレシーバーのようにして、目を瞑り両手を重ねて胸に当て、光の世界に進みでて行く。目に見えない何かと感応しようというイメージ。 齋藤周・絵画は夢追う少年心で、女心に飛び跳ねるイメージ。 ![]() ![]() だが、ここには2人展としてのトリックが幾重にも用意されている。 まず、個展に見えるのだ。 奥の正面にドーンと広げられた明るく激しい絵、僕は一瞬齋藤作品と思い、直ぐに打ち消した。それは「かるいからだ」というタイトルと二人の画家への先入観の否定でもある。今展はこの大作を中心に空間が生まれ、物語が始まるのだ。 これは久野・作品。ーーこの作品に限らず、一切個別タイトルは無い。そして、彼女の作品はキャンバスに油彩だが、枠に収めることもなく、麻の縁取りもそのままにしての展示。だから、絵そのものが女性のワンピースにも下着にも見えてしまった。 彼女は二ヶ月ほど台湾・台中に滞在して、最近帰国したばかりという。絵と同様に本人も激しくオーラを発散していた。これほどピンクや黄色を多用する画家であったか?まるでここに飾ることを意識し、齋藤・絵画を挑発しようとしている。南の国の人と太陽が彼女自身の世界を広げたのだ。「私は女の子、あなたの好きな女の子、私の周りには蝶が踊っている、あなたはその蝶の一つになれますか?」顔をつぶして、白昼夢的姿で大地に立っている。見れば見るほど重たい。 齋藤・作品は本当にその大作を意識して付かず離れず、広い壁のあちこちにたむろしている。一応、小品の一塊が小世界を作ってはいるが、全てはあの大作を太陽のようにして存在している。 ところで、齋藤・作品が広々とした壁面空間で、離れ離れで飾られたことがあったのだろうか? 彼は絵画の枠を外した。キャンバスは組み木のようにモザイクになった。モザイクの一片一片は離合集散とい形をとり、その全体の形状で表現していた。若き画家たちに共通な映像的感覚でフイルム(写真)のように一齣一齣が流れていく。その全体が活き活きとうごめく。その一片のモザイクに重みが無いとは言わないが、全体の構成に重きがあったと思う。 だが今展は様子が違って見えた。始めから、個々の作品はあの久野・大作に引っ張られる、奉仕するという関係でしか今展は成り立ない。そのことが、逆に一個一個が独立的に主張しようとしているのだ。今展では意外にも齋藤周は小さな小品に全神経を使って絵を描いていた。その絵が僕には重たく見えるのだ。あまりにミクロ・コスモスを描ききっている、否、描こうとしている齋藤周というその人に共感を覚えた。 「かるいからだ」・・・それは決して「かるい」展覧会ではなかった。 久野志乃は異郷の地に身を置いて、明るく輝いていた。齋藤・作品に合わせることで、単なる自己発散を超えて新たな可能性を僕たちの前にさらけ出した。 齋藤・作品は常にマンネリという危険性をはらみながら、怪しきロープの上を歩いているようなものだ。「戻るのは危ない、立ち止まることはもっと危ない、落ちるとも前に進むしかない」小品に血の匂いを感じた。いつもは「女の子」に通じる甘さを伴う臭いであった。しかし、「かるい」という言葉を利用して、人の性(さが)としての血、思いという人間臭い重さがあった。(1・27) ![]() ![]() ![]() 今展は写真による再現性は非常に難しいと思います。作品同士の関係性や場の空気感を重視した展覧会になっている為だと思います。絵画展ですから、個々の作品で成立しているのに不思議ですね。そうは言っても何ほどかの役に立つのではと信じますので、拙い写真ですが見てください。 ![]() ![]() ![]() ![]() ↑:以上、久野志乃。 ![]() ![]() ![]() ![]() ↑:齋藤周。 ![]() この壁面は壁全体が支持体であるということを訴えているようだ。齋藤さんの小品の緑がやけに眩しい。
by sakaidoori
| 2008-01-31 23:41
| (茶廊)法邑
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![]() 丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
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