2008年 01月 23日
487)エントランス・アート 「中村哲泰(てつやす)展」 1月7日(月)~1月27日(日) ○ 中村哲泰(てつやす)展 ~高みを求めて~ 会場:北2西2 STV北2条ビル・東向き エントランス・アート 電話(011)207-5062 会期:2008年1月7日(月)~1月27日(日) 時間:月~金 9:00~18:00 土・日 9:00~16:00 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「・・・。第48回は、ヒマラヤ登山に同行し、150枚ものスケッチから生まれた中村哲泰さんの油彩作品を紹介します」(DMより) 作品によって部屋が変わる。中村・風景画はホールを大きく変えた。 確かに異国の山容を大きく描いて、大きなキャンバスに張って展示したから辺りが一変したと言えるかもしれない。でも僕は中村氏の大きな気持ちというのか気迫が絵に乗り移って会場を大きな風景の広場にしたと思う。中村・風景画の迫力に負けないつもりで、会場風景を沢山載せることにした。(私事ですが上から四枚目の写真、お気に入りです。) 中村絵画の表現方法には二通りがあると思う。一つは今展の物そのもの(山)を描いた場合。唐突だが、「出っ張り作品」と名づけたい。一つは風景の中の空間そのものにせまる場合。こちらは「へこみ作品」と名づけよう。 大きな山、しかもヒマラヤだ。山に対する畏敬の念が伝わってくる。その山に接近する画家・中村の格闘の軌跡でもある。単なる山岳美だけをを描こうとしていない。山にへばりついて生きている人間社会を愛情をもって表現している。山と人と画家との対話でもある。その姿が、エントランス・ホール一杯に響いている。都市空間に色と匂い、人間臭さが充満している。 だが、中村作品の魅力の本質は、先にいった「へこみ作品」にあると思う。今展にその代表作がでていないので分かりにくいのだが、少し書いておこう。 「へこみ作品」、見た目はゆがんだ風景描写といえばいいのだろう。普通の風景に異質な空間を導入して不思議な感覚に陥る。見る人にとっては少しオーバーな表現と思うかもしれない。だが、この誇張は対象を表現する為のものではなくて、ぽっかりとへこんだような空間を作って、画家の見る位置を不分明にすることにある。見ていてどこか不安定なのだ。見る人はその不安定さと対話をするわけだ。例えば、「作家はどこから描いているのだろう?」「間違いなく風景に嘘があるが、この嘘さはどういう効果があるのだろう?」「空間表現は中村さんが描きたいことの何に寄与しているのだろう?」 僕の結論は生命の不思議さというか神秘を描きたいのでは。そこに迫る絵画上の方法でもある。そこには全ての力の源泉があり、絵画で顕わにしたいのでは。 今展の風景画は凹んだ部分が逆に飛び出している、「出っ張り作品」だ。前者が空間描写に意味があるとするならば、後者は描かれた物そのものに意味がある。それは、対象(山)に囚われる危険性をも内包している。山を飛び出して描くほど、あまりにも普通のことだ。だが、恥じらいも無く山を膨らまして大きく描く。山だから許されるのかもしれない。空間描写は画家としての探求の場であり、山は自然に対する畏敬の念の表白でもあろう。目に見える存在としての「山」を描くことは、目に見えない自然の生命を描く原動力なのだろう。 中村氏曰く、「へこむ事、空気の如くし。出っ張る事、山の如く」。 27日・日曜日まで。(1・22) ↑:「エヴェレストと対峙する山 ギャチュン・カン」F200。 出っ張りとしての「山」とへこみとしての山すそが組み合わされた大作。中村さんはへこみの象徴として湖などの青き水の溜まったくぼ地を好んで描く。 ↑左側、「ヒマラヤ チョラツエの巨峰」・F130、右側、「ヒマラヤ 断崖にへばりつく民家」・F100。 ↑:左側、「ヒマラヤ 高地の山里」・F100、右側、「昭和新山」・F10。 建設中の札幌ドームを画家の感覚で再構成したもの。それなりに古い作品だろう。新しい物、大きな物が地上に生まれるその時に立ち会える喜び、画題として素直に感情をを画家は表明している。ここまで書けば、両の手を大きく広げて天に声をかけている人物、想像してください。
by sakaidoori
| 2008-01-23 20:04
| STVエントランスホール
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アバウト
丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
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