栄通記

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2007年 12月 05日

424)  短歌 菱川善夫選「物のある歌」-18・12月2日

 短歌 菱川善夫選「物のある歌」
 (北海道新聞2007年12月2日朝刊、日曜文芸・P16より)

空の空その空の空さらにその空に空あるものぐるしさよ(冒頭歌)

・原爆を特権のごとくうたふなと慎みつつうたひきぬ
・九条を改むべしといふ声すおそろしや国の遷りゆく意思
・核武装せんとまでいふ 本気だな 一人ではない二人ではない


   竹山広
  「空の空(2007年、砂小屋書房)」。1920年(大正9年)長崎県生まれ。長崎県時津町在住。


 冒頭歌、素晴らしい。単に空の無窮さに心震わせてもの狂おしいのではないだろう。
 「空」ーのっぺんだらりとした一様な世界ではない。手前の空が青い空、その向こうは緑の空、その向こうが桃色の空、十重二十重に意味と質を異にした世界が、自分を中心に入れ子のように覆っている。手前からあれやこれやと理解したと思ったら、その向こうに自分のうかがい知れない世界がある。努力と経験でやっと知ったつもりになった時に、又違う世界が自分を覆い尽くす。見果てぬ夢にように襲ってくる他者の世界、ふと足元を見たら逆立ちしている自分の存在。存在と時空を前にして、「思う」「感じる」ということ自体に恐れ慄いてしまう。そんな気持ちを、駄洒落のように「ソラ」の繰り返しで、韻律により読む者を別次元に誘おうとしている。

 一方、歌人にとっての「空」は別のリアリティーがある。原爆の落ちてくる「空」でもある。闘い叫ぶ「空」でもあるのだ。被爆体験時は25歳。その後60年以上が過ぎた。被害者として、そのことを「特権」にしないと自戒して歌を作り続けたという。その慎ましさ、言わなければならない言葉に菱川氏は「学ぶべきだ」と仰る。ただ頷くのみ。


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by sakaidoori | 2007-12-05 23:37 | ◎ 短歌・詩・文芸 | Trackback | Comments(0)
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