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栄通記

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2007年 10月 01日

331)本郷新彫刻館 「前田哲明彫刻展」 8月25日(土)~10月14日(日)

○第13回本郷新賞受賞記念 前田哲明彫刻展

 会場:本郷新記念札幌彫刻美術館
    中央区宮の森1条12丁目
    電話(011)642-5709
 会期:2007年8月25日(土)~10月14日(日)・会期中無休
 時間:10:00~17:00
 料金:一般500円、高大生300円

 1961年 東京都に生まれる
 1991年 東京芸術大学大学院博士課程満期終了
 1997年 文化庁の芸術家在外研修制度による研修員としてロンドンに1年間在住
   現在、東京都渋谷区に在住

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 ↑:上から①、②、③。

 圧巻は二階の展示室に立てられたねじり棒だ。しかも8本。鉄棒が「ジャックと豆の木」の木のように、薄暗い天井から、まるで突き抜けているように並んでいるのだ。それは木ではなく、布の様な質感仕立てで、ねじって、高さ3m、幅60cmの円柱に仕上げているのだ。根元の床には、石が儀式の道具のように並んでいる。関係者によると、もっと石を並べたかったのだが、床の強度を測ってみたところ、これが限界だとのこと。授業の一環で小学生が沢山くる時には、二階への入場は制限しながら見てもらうそうだ。決してオーバーな話ではない。それくらい、この会場に運ぶには関係者も肉体的に苦労したであろう。何より、作家・前田哲明の今展に対する鉄のような強い思いが伝わってくる。
 彼の思いは半端ではない。写真②、③は野外に展示された作品だ。重たい。特に②は212×164×104cmでトン単位の重さだ。古代銅鐸を、「鉄だ、鉄だ、鉄だ、現代の鉄の銅鐸だ」と叫びながら、男が力勝負で造った様な作品だ。破壊することによって鉄が前面に出てくる。古代、破壊は葬送の場の崇高の儀式でもあった。

 そもそも、今展はこの2年間の間に発表された、優秀パブリック・アート作品の作家を紹介する展覧会だ。当然、そのミニチュアも展示されている。写真①は受賞作のパンフで、栃木駅北口広場に展示されている。しかし、何を前田哲明は思ったのか、本郷新彫刻会場を一大モニュメンタル会場に変えてしまったのだ。関係者が一番驚いているだろう。お金も使っただろう。作家の心意気によく応えたものだ。協賛は日本航空と日本文京出版と中西出版だ。

 ただ大きい、重たいと言っていたのでは申し訳ない。会場での作家のメモ範囲で理解したことを付け加えます。
 屋外の作品は1995年、1996年の作。作家はこの頃までは、作品の持つ力に全てを引き込むということに関心があったようだ。「彫刻とは何だ」という問いかけの中に、作品と場と人の有機的関係に思いが至り、その抽象的作品の成果が受賞作品であり、具象的作品の一つがねじり棒ではないだろうか。鉄という素材が辺りと見る者の心にどんな波風を立たせることが出来るか。今展の作品は過去の作品ばかりだが、重要な自己確認の場だと思う。もし、今後、更に前田哲明の評価が高まる作品が出てきたならば、間違いなく札幌の青空が、大地が彼を高めたことだと僕は断定したい。

by sakaidoori | 2007-10-01 22:02 |


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