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栄通記

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2007年 07月 26日

271) テンポラリー演奏会・・馬頭琴を弾いてしまった

○ 嵯峨治彦ライブ・喉笛、馬頭琴   石川亨信版画作品を挟んで

 会場:テンポラリー スペース、 「石川亨信 凹版画展」会場にて
     北16西5 北大斜め通り・西向き 隣はテーラー岩澤
     電話(011)737-5503
 日時:2007年7月24日(火)
     18:00~

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 馬頭琴を弾いてしまった。演奏者が馬頭琴を変更する時に、今までの馬頭琴を指で弾きながら、僕の膝の上に置くのだ。何をしているのかと思うのだが無言で同じリズムで止めようとはしない。ハッと気が付いて、「僕が弾くの?」と驚いて静に聞くと、ただ頷くだけで、渡した後は大き目の馬頭琴に持ち替えて演奏は続いた。弓は使わずに、ギターのようにリズムとメロディーを演奏していく。僕はその間、約束の手渡された時のリズムを弾いていくのだ。人差し指を下から上に、ただポンポンと。嵯峨さんの低音のリズムとメロディーと僕のやや高音のリズムがハーモニーを奏でるわけだ。5分位だったかな。嵯峨さんが弾(はじ)く演奏から、弓で弾(ひ)く演奏になって僕の出番は終わった。止める合図など無い。メローディーだけの演奏に飛び入り参加の栄通馬頭琴は参加不能なのだ。楽器を静に石川作品の横に立てかけた。聴衆は音が膨らんで聞けたかしら?高音のリズムが聴きざわりでは無かったかしら?

 午後6時半ごろに慌てて着いた。展示作家の石川さんから陽の沈む頃合を計っての演奏開始時間だと知らされた。お坊さんらしく悠長な態度だ。日の沈む頃、最後は没して照明機だけの光で当てられる作品の発色を演奏の流れと共に確認し、楽しみたいのだろう。

 演奏はムックリから始まった。紐の弾(はじ)きと強弱の余韻を抑えたような弾(ひ)き方。ムックリと口を左手全体で蔽って、音が口の中で溜まって共鳴して静かに漏れていく感じ。結局、このムックリの弾き方のように馬頭琴やホーミー(喉笛)の音色が終始したと言ってもいい。1時間ほどの演奏、気分転換の為の変調や強いリズミカルな音で奏でるということはなかった。吹き抜けの民家の空間の広がりに合わせて音が繋がれていった。ホーミーの起源は知らない。おそらく、モンゴルを含めた草原性大陸の中で、見渡しても山一つ見えない地平線の中で、「オレはここに居るぞー」と目に見えない仲間への叫びだろう。「岩山を吹き抜ける風の音」を起源と聞く。風の音色が心地良く、、無方向的感覚に陥るのは聞き分けできない無数の音が含まれているからだろう。嵯峨ホーミーは狭い部屋を静に静にゆするようであった。途切れることの無い重奏低音に幾つかの音が同時に聞こえた。鈴虫か遠くのチャルメラのようなかん高い音まで聞こえた。馬頭琴は太さの違う二弦で、弓を片方ずつあるいは同時に引いて高音低音の使い分けとハーモニー効果を出している。ホーミーと重なり狭い部屋が聞き取れない音とも交じり合っていた。目をつぶればパオの中か、夕闇に外で火を囲って聞き惚れている自分の姿が連想された。仲間たちも居た。

 車で帰りしな、急に誰かの顔が窓から飛び込んだ・・・。嵯峨さんだ。「さっきは有り難う。助かりました」。嵯峨さんは演奏後も姿をくらますという存在感の薄い振る舞いをしていた。細身で見るからに優しそうな物腰。最後に彼の肉声を聞くことができた。

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by sakaidoori | 2007-07-26 14:38 | テンポラリー


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