人気ブログランキング | 話題のタグを見る

栄通記

sakaidoori.exblog.jp
ブログトップ
2007年 07月 08日

251) 短歌 菱川善夫選「物のある歌」-2・7月1日

 北海道新聞7月8日朝刊、日曜文芸(P25)より

 菱川善夫 選、「物のある歌」。

○ アップルパイ切り分けられてそのうちの一切れは血の通わぬ手にも (冒頭歌)

   どうか目を閉じないで蘇る者が人の形をしていなくても

   銀の針混じる夕立 未だ会わぬわが半身もうたれているか

 松野志保。「Too young to Die」(2007年、風媒社)、1973年山梨県生まれ、大阪市在住。


 菱川選歌に安易な日常瑣事の歌はない。
 冒頭歌、どこか自刃、自傷の空気が漂っている。選者はパイの分配に生者と死者の交感を指摘している。その死者に対して眼差しを向けてくださいと歌人は訴えている。そして、銀の針降る降る世界に、その見えない人(半身・分身)がともに夕立の針を浴びている。針は刺さり赤く肌を染め、更に目に見えない「心」をも撃つことだろう。その痛みを若き歌人は共感・共有したいと願っている。存在そのものを信じたがっている。

 若くセンチメンタルな歌だ。特に第3句は美しい作だ。今日の日の真夏の青き世界に赤や針の夕立が幻覚のように迫ってくる。
 

by sakaidoori | 2007-07-08 10:47 | ◎ 短歌・詩・文芸


<< 252) エントランスホール ...      250) タピオ 「星野修三・... >>