栄通記

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2007年 06月 24日

229ー2) ②市民ギャラリー 「全道展」 ~7月1日まで

 ①では主に会場風景の写真を載せました。②では一般入選者を中心に個別の写真紹介をします。

 f0126829_22365451.jpg ←:佐々木※(函館)、「大地の仔」。
 入り口ロビーにあります。背中が黄ばんで見えますが、照明の関係で変色しているだけで、全面同じ色です。安定しているような、していないような三角形のポーズが大仰な中にユーモアを感じられます。






f0126829_22461747.jpg →:新会友・山本美沙(札幌)、「蛹」。
 若い女性です。この人は自分の体がすっぽり入るような大きさを得意としています。棺桶とも、胎内ともとれる作風です。今回も同様ですが、蛹(さなぎ)になってから生まれ出ようとしています。単なる球体造形作家がより表現力を強めていて、好感が持てます。









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 ↑:新会友・佐藤艶子(幕別)、左の作品「処へ」。
 実は右の作品は昨年の作品で、「黒い鳥が飛ぶ刻」です。この作品を帯広に昨年行った時に、美術館横の記念館でのグループ展で覚えていたのです。一目で思い出し、随分よくなったものだと感心しました。十字の象徴性は好みではありませんが、仕方がないでしょう。鳥の表現が消え入るようでそこにいて、ぼやけた表情が全体の中で存在を強めているように思えました。

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 ↑:左側、宅実恭子、「生命力を感じる時」。
 宅実さんは札幌市の美術展で腕をあげた人です。自信を深められたのでしょう、最近は全道展を腕の振るい場所にしているようです。親しく観ていた人が思いっきり描いているのを第1室で観れるのはうれしいことです。大きく大きく、写実的に対称に迫る作風だと思います。タイトルが少し心もとないと思いました。

 右側、北海道新聞社賞・石本久美子(札幌)、「骨と人」F150。
 若い時に描ける絵というものがある。まさしくこの作品です。黒の飲み込む世界、人を寄せ付けない世界、「死と生」を込めているのでしょうか、「骨と人」。アー、黒が単なるクロで、色としてのクロになっていないのが拙さ故か、ガリガリに掻きむしるような浅いクロ。未熟なクロが不安よりも若き情熱を感じました。

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 ↑:全道美術協会賞・志田翼、「周囲の加速」F130。
 完成度の高い作品なのでしょう。しっかりとした描写力。貼り絵とは言えないのですが、描かれた物の描き方の違い、重層的配置による目くらまし効果。絵画の空間性の中に犬と人の仕草、特に人を二重に描いて動きと時間性の表現。画面一杯、四隅まで緊張感を緩めてはいません。どこかプロ好みの作品です。
 ですが、絵としては面白くないです。技術の高さに支えられた主張に破綻がなさ過ぎて、つまらない面も同時に持っていると思います。美大で修得した最良のものの集大成のような感じです。自然に出てくる若さの持つ相克のようなものが感じられなくて、「見る絵」としては「修得した絵」の高さに比して物足りなさを感じます。

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 ↑:左側、伊藤あけみ(函館)、「altro monodo Ⅰ」。
 タイトルが意味不明なので困ります。小文字だから都市名ではないのでしょう。訳のわからないときは勝手に見るしかありません。
 写実的に描かれたヨーロッパ的街並みと公園。そこにに天使のような子供が絵とはミスマッチのように立っています。この子供と風景の違和感と、違和感に基づいた全体の一体感が気に入りました。敢て、合わないかもしれない何かを風景の中に入れてみる、すると全体がどういうことになるのか、そんな絵の楽しみを持ちました。もっとも、作者はミスマッチと思って天子を描いているかどうかわかりません。見る僕がそう思ったのです。

 右側、池田正子(室蘭)、「TUGUMI」。
 近美で野田さんの個展をしています。僕は女体や頭骨という象徴性や具体性の強い物を描き込むことよりも、池田さんのように普通のものを森閑とした中に描いた絵のほうが好きです。もっとも卵と巣は命の象徴性なのでしょうが、さりげない大きさの分だけ好ましいです。しかし、こういう絵は難しい。是非是非精進されて、更に良い絵を描いてください。楽しみにしています。


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 ↑:左側、丹野由紀子(苫小牧)、「テリトリー」。
 写真では細かいところが解らなくて残念です。アリがマンホールを覗いていて、マンホールへの排水口から生き物の尻尾が出ていて、下で子供が遊んでいます。テリトリーとは誰にとっての領域なのでしょうか。マンホールそれ自体の空間と異種混合の世界を遊んでいます。「何処にでも、どんな環境でも、生き物もいれば、楽しみもあるものだ」と、言っているようです。文明に対する皮肉を見る人がいるかもしれませんね。僕はそうは見ない。

 右側、田塚麻千子(函館)、「素」。
 牛です。顔を細密に描いています。特に目から鼻にかけての髭もじゃに作者は精魂傾けています。何の衒いもなく、牛の力強さ、生命力、美しさを描いています。気持ちのいい作品だと思います。

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 ↑:左側、林由希菜、「おかえり ただいま」・版画、平板。

 右側、山谷美由紀(札幌)、「幕開け 0204」。
 室町後期以降の洛中洛外図仕立てです。後ろを向く二人の子供がタイム・スリップして古き良き時代を眺めているようです。輪郭くっきりと、異物とわかるように描いています。何の幕開けでしょう。時代を色を楽しまねば。

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 ↑:東本恵、「座る女」。
 古風な絵です。力強い絵です。赤と白と黒。自画像的肖像画。油彩の魅力に肖像画・自画像があると思うのです。ビシッと人間を見る。人間を描く。日本には自画像作家が極端に少ないと聞きます。明治以降のヨーロッパ化の中で気付かされたジャンルです。「己を見る」という、病や狂に通じる世界。近代病といっていいかもしれません。古くからあり、これからも廃ることのない画題だと思います。

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 ↑:左側、佳作賞・高橋幸子(恵庭)、「Kの菜園」、版画、併用。
 ご夫婦で版画をされています。線描のような模様部分が腐食画法・エッチングだと思います。色の部分はリトグラフでしょうか。模様地は暗いのですが、色が軽くて、タイトルを見ると菜園となっています。模様地を菜園仕立てにしたことに意外性を感じました。

 右側、本間弘子(札幌)、「菫程」、版画・平板。
 菫程、キンテイ、スミレ道ということでしょうか。どこかイラストというか童画風の人物が物思いにふけりながら逍遥しています。チョッとセンチメンタルです。どうということはないのですが、いつも本間さんの版画を見ています。好みというものはどうしようもないですね。

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 ↑:左側、西澤光(函館)、「鼓動A」。
 何でしょうか?車が走っているような、人の顔がよじれているような、ユーモアと躍動感のある絵だと思います。明快な赤です。輪郭図太い黒です。すっきりした白です。デザイン、イラスト、絵とのせめぎあい。

 右側、松田寿美子(札幌)、「秋風」。
 風景画ないので一枚載せます。全道展は広々とした風景画が少ないのですね。風景作家は道展を目指すのでしょうか。この絵も細密的な風景画ではありません。輪郭を抑えて中間色をサッサッとさばいて心地良い秋風をかもし出しています。

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 ↑:佐藤雅奉(滝川)、「うねり’07」。
 やっと最後になりました。最後を飾るべく、可笑しく力強い作品を紹介したいと思います。本郷新の影響を感じますが、気合の入った意欲作です。この勢いをドンドン突き進めてもらいたい。上手くならないと困るが、上手さは後からついて来るのでは。斧や鑿や金づちを持って、木の前で立ち向かっているのを想像してしまいました。次はビッキを目指し、佐藤流を築いてください。


 とりとめもなく自分好みを紹介しました。文章のないのはおいおい書くとして、このくらいで止めましょう。おそらく③で会友・会員の写真紹介をします。6点以内に収めます。キリがありません。
 一応、観想を書き終えました。勝手なことばかり書いて、どうもです。

 

by sakaidoori | 2007-06-24 14:54 | 市民ギャラリー | Trackback | Comments(2)
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Commented by セス at 2007-06-23 23:58 x
こんにちは、始めましてセスと申します。もしかして、「座る女」の作者の名前を間違えてはいませんか?正しくは東本恵さんだと思うのですが。
Commented by sakaidoori at 2007-06-24 00:12
>セスさんへ

 そのとおりです。失礼しました。有り難うございます。


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