栄通記

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2007年 06月 11日

216) ②函館美術館 岸田劉生展」 ~7月29日(日)まで

 図録(2000円)より写真紹介をしながら、取り留めなく書き進めます。
 
 僕は劉生の実作品を見るのは初めてだ。彼の「切通しの写生」 (1915年・大正4年、24歳)に強い関心があった。肉筆油彩画が見れるので楽しんで函館に行った。
 名作「切通しの写生」が生まれたのは劉生24歳時、その2年前の作品が3点あった。

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 そのうちの2点が上の作品(左側・「男の像」、右側・「友の像」、ともに33.4×23.9cm、1913年)。実はこの作品は1枚の小さな板の裏表に描かれたものだ。劉生は裕福な家庭で育ったが、父の死後、意外な借金が判明し、キャンバスも思うように買えなかったのだろうか。この時期、自画像を含め多くの肖像画を描いている。麗子誕生後は彼女が肖像画の画題になった。日本では珍しい「自画像の画家」であった。上の2枚の作品を顔を中心に目をこすりつけて見てきた。遠視・近視・乱視で細かい描写は目を引っ付けないと見えないのだ。特に左の絵が面白い。板の黄色と重なり、顔が浮いて見えるのだ。細部は顔の毛穴まで描こうとしているのか、細216) ②函館美術館 岸田劉生展」 ~7月29日(日)まで_f0126829_21561699.jpgかい筆跡が砂にハケ目を入れるように丁寧に力を込めて描いていた。左の絵はほとんどそういう描き方で、右の絵はそういう描き方と、べたっとゴッホ風の描き方との融合だ。劉生の細密描写はこういうものかと納得しながら何度も何度も見比べた。あえて表現目的の違いを言うならば、左は描かれた人の顔を通して内面に迫ろうとしている、右は画家自身の思い込みを画面に重ねようということだろうか。
 左の絵は「自画像」(1913年、45.4×33.2cm)で先程の二つの描き方が顔を覆っている。どこかゴッホの自画像を意識しているようだ。自分自身をどう見ているかも表現されている。力強く、傲慢さも露出している。他者に対するおもねりは微塵もなく、22歳で自己中心の生き方を貫く決断の絵とも見れる。




 札幌の異才・三岸好太郎は劉生よりも一回り若く、上京後劉生に影響された絵を描いている。静物と風景ががあった。三岸との同異が確認できて勉強になった。
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 やはり麗子像関係は取り上げないわけにはいかない。今展の目玉の麗子像は「童女図(麗子立像)」(1923年、53・2×45・5cm)だ。小品だ。この絵だけ壁は赤くて重そうな布地であった。布地は天井から床まで垂れ下がり、幅2mほどであった。写真で見るほどには異様な顔には見えない、明るいという印象。照明が顔を照らし、しっかりと浮き出ていた。仏様ではないが拝むような気持ちになってしまった。先人の画業に対する敬服の念がそうさせたのかもしれない。
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 ↑:左側・「麗子之像」(木炭・コンテ・紙、30.6×23.4cm、1918年)。右側・「麗子十六歳之像」(油彩・カンヴァス、45.3×23.0cm、1929年)。絶筆ではないが最晩年の作品。

 劉生は西洋的写実表現から始まり、「写実の欠如の美」ということも言い出した。けっして前者を否定したわけではないが、当時の洋画壇からは後退と見られていたであろう。現在の評価はどうなのだろうか。マルチ表現者になればなるほど、文人趣味というのか東洋・日本の美の探究の度合いを深めていった。「麗子十六歳之像」など、全盛期(関東大震災以前)の凄みはない。中途半端な錦絵好みの作に見える。
 そうはいっても、彼の書・日本画は素晴らしい。

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 次に版画。
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 最後に装丁画。
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タイトル等コメントは後で。

by sakaidoori | 2007-06-11 17:06 | ☆函館美術館


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