209) さいとう 「渡辺貞之展」・油彩風画 ～６月１０日（日）

○　渡辺貞之　　　「イタリアの風展」

　会場：さいとうギャラリー
　　　　　南１西３　ラ・ガレリア５Ｆ室
　　　　　電話(011)222-3698
　会期：平成19年6月5日(火）～6月1o日（日）
　時間10:30~18:30最終日は17:00) 注意：DMに時間の表示がないので目安にしてください。


　「昨年、旅したイタリアの風景とエッセイなどをまとめてみました」（DMより）

　イタリアの風景の水彩画と、「知る人ぞ知る」子供達を描いたデッサン画が大半です。それと一目を惹く大作１点が華を添えています。その絵を油彩画と呼びたいのですが、困ったことにそう言いきれないのです。水性なのですがアクリルでもないのです。（タグには油彩と分けていますが、便宜上の分類で「油彩画に見える絵」と理解してください。）それでは画材は何かというと企業秘密ではないのですが文章紹介の許可を確認してこなかったので明言は避けておきましょう。ヒントはホーマックに沢山売っています。更に支持体が変な物を使っているのです。これは渡辺さんに怒られても構わないからお話しすると、１ｃｍに満たないウッドラック・パネル（ポリスチレンを主原料とした発泡ボード）なのです。だから軽い軽い。その辺を訪問者に説明しているのが上の写真です。渡辺さんは潔いところがあるから、油の乾くのを時間をかけて待ったりしないのですね。器用だから色々と工夫して、良いと思ったことは積極的に絵に取り入れる。この辺は演劇人に共通したメンタリティーだ。渡辺さんは演劇もしていて、大作は芝居の一こまと思って観た方がわかりやすいかもしれません。一様な背景と小道具に囲まれて、演技している子供達。その背景の壁のような部分に、いきなり爪を立てて、引っかいて模様を付けたのです。同席していた女流画家さんはいきなりの渡辺さんの振る舞いに、同じ画家として驚くやら、技法のお話しだけでも参考になるといって真剣に聞いていたのですが、渡辺さんの接客の真剣さにきっと画家魂を振るい立たせられたことでしょう。

　演劇をしているといいましたが、デッサン画のモデルは演技をしている子供達です。綺麗に描こうとか、可愛く描こうという意思はこれらの絵には有りません。目、表情、仕草を通して彼らの内面を表現しているのです。その子の不安、猜疑心、高慢さなどを描ききるのです。子供達は自分の絵を見て不満がるかもしれませんが、自分自身を観察することに演技者として不満以上のものを見出すことでしょう。これらのデッサン画は渡辺さんの画家、演劇人、教育者という面の明快な姿です。
　以前、僕は渡辺さんのことを「目の人・渡辺貞之」として感想記を書いたことがあります。目に人間の本質を見る人であり、強い目を描く画家ということが主旨でした。今展は本質的には変わっていないと思いますが、目を強く描くことを避けているようです。顔や全体の表現で目によるだけのメッセージを押さえ、より全体的にイメージを膨らまして表現しようとしているみたいです。この辺を書き始めるとまとめ切れなくなるので、今日は「目が優しくなった」とだけ記録しておきましょう。皆さんも「渡辺の目」に注目して鑑賞してください。

　「イタリアの風」である街中の建物などの紹介が後になりました。優れたデッサン力に支えられた風景を見る目はやはり素晴らしいものです。会場では旅行にまつわるエピソードも聞けると思います。そこまで書くと長々となってしまいます。次の機会にということで。

















　（デッサン画はガラスが反射して上手く撮れませんでした。１０点以上あるのですが、良い作品が紹介できなくて残念です。下の男の子が寝そべっている作品は意欲作です。好きな目も描かず顔もなく、目の変わりに「腕を見ろ」という作品です。）