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栄通記

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2007年 06月 04日

207) 門馬 「前田育子展」・焼き物 6月7日(木)まで

○ 前田育子 展

 会場:中央区旭ヶ丘2丁目3-38
     門馬 ANNEX・バス停旭ヶ丘高校前近く 
     電話(562)1055
 会期:6月1日~6月7日(木)
 時間:11:00~19:00
 
 1968年 白老生まれ
 1989年 陽窯陶芸教室へ通う
 1996年 スペインへ遊学
 1997年 北海道工業試験場野幌分場にて釉薬研修 
 1998年 同上にて研修
 1999年 本州から沖縄にかけて窯業地を遊学
 2000年 小さな工房をたてる
 2004年 札幌スタイル認定「はし置」認定を受ける
    現在、白老在住


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 焼き物に主義・主張を込めた個展です。オーソドックスな展示になっていまっすが、インスタレーションと言い換えてもいいかもしれません。あえてタイトルを付けるとするならば、「崩れゆくものたち」、そして「それでも美しくそこにいる」といっているようです。

 砂という素材を使いながら、明確に2系統に分かれる展示になっています。
 一つは縄文土器のような形をして、すでに壊れかかって中を晒した焼き物です。中に見えるのは貝殻のような小さな焼き物です。壊れつつあるがしっかりと命あるものがあると表現しているようです。もっとも、この作品にくずれつつも顕になる別の形に親近感を持つか、汚さ・薄気味悪さを感じるかは鑑賞者によって分かれると思います。その作品は会場入り口の最初の作品と(上の写真の一番手前)と、最後尾に置いてあるだけで数としては多くありません。僕自身は一瞬、「汚い」と思いました。焼き物の表現としてあまりこういう物を見慣れていないからかもしれません。この会場の日の当たる場所に出くわすのには、驚きだったのでしょう。
 もう一つはケーキやりんご、家などを砂だけで作ったものです。個人的にはこちらの作品群が抜群に興味があります。「こわれる」、「くずれる」というよりも、砂のような大地から何かが形あるものとして生まれようとしている瞬間のように思えました。展示中の時の流れとともに、砂はいくらか剥げ落ち、はかなさをかもし出していますが、僕には逆で、生まれるための汗の結晶が小さな塊になってそこにあるように思えてなりませんでした。
 石をくっつけてガラスをちりばめて壊れそうな作品もありました。作家は石や砂や貝殻と子供の時に遊んだのでしょう。それらをいとおしむように使い、時の流れを封じ込めるようにして、くずれるもの達を形あるものとして残しておきたいのでしょう。美しく心の中に閉じ込めたいのかもしれません。
 ただ、この2系統が個展として整合性があるかは疑問です。作家自身を楽しむには好ましいのですが。別々の主張によって作家の気質のような物が想像できて楽しめます。

 普段、制作する販売用の器が秘密の部屋に展示してあります。得意とする技法は色の違う土(粘土)を薄く重ねて、バームクーヘンのような木目調の模様仕立てにするのです。かなり面倒な作業を伴って完形に仕上がるのです。粘着的作業を好まれているようです。同時に、剥き出しの荒々しさとでもいうのですか、力強さも秘めているようです。今展では「美」の中に作家自身の繊細さと荒々しさを同時に見れて、作品傾向ばかりでなく、作家に迫れる思いがして興味がつきませんでした。

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 (↑:販売用の作品。模様の技法に注目してください。面倒なことを大好きでしているようです。)

207) 門馬 「前田育子展」・焼き物 6月7日(木)まで_f0126829_23305085.jpg ←:釉薬をくるくるっと丸めて、巣のような形にしたお猪口。お猪口といっても呑むことはできません。呑めないから買うことは断念しましたが素敵な作品です。







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 ↑:芳名帳のところに置いてあった飾りのような作品です。光の当たるところでガラス質がどう光るのかを見たかったので、外に置いて写真を撮ってみました。



 

        

by sakaidoori | 2007-06-04 23:37 | 門馬・ANNEX


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