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栄通記

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2007年 05月 14日

182) 室蘭 「北浦晃個展」・油彩画 終了(5月13日まで)

○ 北浦 晃 個展  「北海道の風景」
     平成18年度室蘭市芸術文化功労賞受賞記念展

 会場:室蘭市文化センター展示室  
     室蘭市幸町6-23
     電話(0143)22-3156
 会期:2007年5月9日(水)~5月13日(日)
 時間:10:00~18:00(最終日は16:00まで)

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 (写真は上から制作年順、左側が古い作品。一番下の写真は全て今年の作品。)

 JR1日散歩きっぷで行ってきた。電車遊行は余裕があれば公開日記として残したいのですが、どうなることやら・・・。

 会場には予想通り、「作者本人による私的作品解説パンフレット」が置いてある。例えばこんな文章がある。

 「01.橋の見える風景(白鳥大橋)1998  F130号
     この年(平成10年)、白鳥大橋が完成した。美しい橋で、室蘭の自然によくマッチしていると思う。海と空の青と樹木の緑に白い橋・・・。白鳥台1丁目の高台からの眺めである。第63回室蘭美術境界展に出品のあと室蘭市に寄贈した。」

 出品油彩画30点全てに記載がある。作品配置は北浦回顧展では絶対の決まりがあって、制作年代順に並んでいる。入り口左側から時計回りだ。初めに挨拶文やらなにやら活字物が展示されていて、先に例文としてあげた「白鳥大橋」から順番に見ていくのだ。受付テーブルの関係で、よほどの天邪鬼でない限り制作順に歩くことになるのだが、僕はちらりと最新作を横目で確認しながら先に進んで行った。小雨模様の天気だが、最終日ということもあってお客は絶えることは無い。後で聞いたのだが、毎日多くのお客さんがこられたとのこと。作家は作品解説に、四方山話に余念がない。道新や地元の新聞に取り上げられたことではあるが、これほどの人気とは正直驚いた。北浦氏は忙しく楽しく、そこにいる。作家として、解説文を書いた解説者として、教え子の先生として、一人しかいない受付係として、普段の酒飲みや交流仲間のもてなし役として八面六臂の活躍だ。腰は悪いと聞いているが、背筋を真っ直ぐに伸ばし、にこやかながらもジェントルマン然とした態度だ。文化人、教養人として等身大以上の大きさを漂わせている。

 「どれを一番見てもらいたいですか?」と、訪問者が尋ねている。「それは今でしょう、最新作でしょう」。そして、その最新作は風景であっても山ではないのだ。今年描いた5点の作品が最後にテーブルに囲まれるように並んでいる。今記念展を想定して書いているので、画題などに制約があったことと思う。会期が5月だから華やいだ風景を描き、リクエストもあって一本立ちの桜を描き、室蘭には山が少ないので以前描いた室蘭岳は省略して、港町らしく海岸を描いている。画題、構成、色合いと随分と新たな試みをしている。
 北浦氏は基本的にあれやこれやと作風を意図的に変えたりはしない。何かのきっかけで、新たな画題・視点に取り組むということはあっても、何かにこだわり始めたら生一本になってうち進むところがある。この10年は山を描くという前提があるから大きなブレは無い。山に対するどんな思いを描くかにもそれほどのブレはないであろう。だが、絵画としていかに描くかは画家一生の課題で、あいさつぶんにある「まだまだ続くライフワークの中間発表といった気持ちです」という言葉になるのだと思う。北浦氏が下手な画家だと言っているのではない。絵を上手に描いて完成の域に近づくのであれば簡単な話である。そもそも、何が上手な絵なのかは判断の難しい問題を秘めている。画家・熊谷守一は「へたも絵のうち」と言っている。最近の北浦氏は何かにこだわるというよりも、こだわっていた自分自身の心の着物を一枚一枚脱いでいるようだ。画題で言えば道や標識、家などの人口物を始めはひっそりと、小品では大胆に、そしてあたりまえの風景の構成物として描き始めている。画面構成も抽象画に関心があるということで、風景の中のいろいろな要素を意図的に抽象っぽくしていた。例えば樹の陰を描くのに、ざっくばらんに色面構成にしたりして、一見新鮮なんだが、どこかに不自然というか堅苦しさがでてきて「あ~、絵って難しいものだな」と勝手に見ながら感じたことなどがあった。その堅苦しさは氏の求める精神性と絡み合って、絵を重く暗くしていた。今展の最新作は明るく輝くような岬だ。ススキがあるから、盛夏を過ぎた、からっとした太陽がまぶしく照らしているものだ。雪を頂く山容の白と空の青、風景の非白とのせめぎあいは無くなった。色と色との明るい掛け合いのようになっている。残念なのは手前に描かれたすすきで、つい画家根性がもたげて上手に描きすぎている。ススキなどあまり描いたことはないのと、雲に対比するかのように風による画面の動きを表現しようとしたものだろう。北浦氏は普通に描けば上手なことが露呈してしまった。あまりに手前に見る目の意識が引っ張られて僕としては不満な点だ。

 昨年から今年と、とても絵が明るくなったと思う。氏自信がこういう気持ちで絵に取り組んだことはそんなに無かったのではないだろうか。こだわりの心と向き合ったこと。それと今展ではじめて知ったのだが片方の視力が明かりはとらえられるがほとんど見えなくなったと聞いた。視力不足が絵を心を明るくしているのだろう。生活上にも大変でしょうし、画家として口惜しい思いでしょう。健康上のことは他人にはどうしようもない。秋の美唄展には観覧に行きます。報告も書くつもりです。来年は時計台で予定されていると聞いています。今展は本当に「中間発表」と思います。次も楽しみにしています。

 以下写真は近作から逆に何点か並べます。

 参考サイト:Ryoさんのいーとあーと
        栄通記、150番

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 ↑「室蘭トッカリショ海岸」 F100(130.2×162.0) 2007年作家蔵

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 ↑「斜里岳晩秋」 F120(130.3×194) 2003年 美唄市蔵

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 ↑「美瑛岳11月」 F120(130.3×194.0) 2001年 美唄市蔵

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 ↑「橋の見える風景(白鳥大橋)」 F130(162.0×194.0) 1998年 室蘭市蔵 

by sakaidoori | 2007-05-14 15:07 | []


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