181) ４プラ 「ringo,ring ２人展」・インスタレーション 終了（５月１３日まで）

○　足立詩織・吉備仁美　　ringo,ring展

　場所：４丁目プラザ　７階４プラホール
　　　　南１西４
　　　　電話（０１１）２６１－０２２１
　期間：5月8日～5月13日（土）
　時間：１０：００～２０：３０　（最終日は１9：0０まで）

　足立詩織
　　１９８４年　札幌生まれ
　　２００５年　札幌市立高専卒
　　　　　　　　　（有）寺島デザイン制作室入社
　　　　現在、グラフィック・デザイナーとして修行中

　吉備仁美
　　１９８４年　静岡県に生まれる
　　２００５年　札幌市立高専卒
　　２００７年　同校修了課程卒
　　　　　　　　　松下産業入社
　　　　現在、プロダクト・デザイナーとして修行中


　若い人たちはいろいろとやるもんだ。
　ニンジン、舞妓達を紹介したが、今度はりんごだ。いろいろと共通点を考えると楽しいのだが、際立った違いが有り、そのことが今展の特徴だ。

　一切の肉感性、生理的なものを切り捨てて表現している点だ。りんごの「赤」と「形」にこだわった展示だ。りんごを食べたいだとか、美味しい、すっぱい、りんごをまるかじりすると血が出るとかは興味が無いという姿勢だ。もちろんりんごの社会性や風土性、アダムとイブにまつわる神話などは何一つ語らない。しかも形といっても丸と、真ん中を開けたりんごの均一なシルエットにしか関心を示そうとしていない。デザイン・イラスト性の強い展示だ。デザインやイラストとは何だろう？仮に強烈な人間臭さやそのものらしさを薄めた色・線・面の構成・組み合わせと言っておこう。空間に流れるＢ．Ｇ．Ｍ．のようなもので和みの役目を果たすだろう。それと、「薄めた」と言っても対象を否定したわけではなく、軽く別のことに感覚が飛んでいくような働きがあるようだ。古典的なシュール・リアリズムが当然のことと思っていた椅子などを独特な表現で崩し、捉われの思い込みを否定し自由な精神活動を求めた。デザインは書かれた物を肯定も否定もせず、だらしなく全てをひきずって印象の世界に引き込もうとする。思考や言語化を否定しようとしているのかもしれない。イラストはデザインと共に歩みながら、時に都会的感覚・肉筆性でデザイン的無味乾燥の世界に反逆するかのような姿勢を持つ。・・・デザインやイラストを考えている人の意見をききたいものです・・・。

　プロダクト・吉備さんが「りんごでいきたい」と発案し、「面白い」とグラフィック・足立さんが応えてなった展覧会。４プラホールはＬ字型だが、奥の折れた部屋は使わずに、通りすがりの人に全容が見えるように展示されている。遠くから一見すると暗い壁の表具に赤の飾り物が配置されて、派手でくどく感じる。真ん中にはどっしりとしたテーブルがあり、その上に樹をあしらったうるさい存在物が塊のようにして、目立っている。まるで、秘密の部屋で魔女達がテ－ブルを囲み星占いに興じているようだ。飾り物は説明書を読んで「りんご」とわかり、りんごの味覚からは遠い展示になっているので彼女達の視点は達せられているのであろう。だが、非常に知的な面も滲み出ていて、その知的さが、やはり若い女性の情念というのか感性というのか、好ましいのだが、デザイン・イラスト性を徹底しきれて無いような印象だった。拙さ、粗さを伴ってはいるが、りんご性から非りんご性に誘おうとする強引さ、知性が好ましくて、恥ずかしくもなくやや長めにりんごの飾りを見てきた。

　パネル作品が足立詩織さん。一様な飾り物の間でデザインとしてりんごを見つめている。皮をむいている作品が皮の裏側、りんごのもう一つの世界を象徴させようとしていると思うのだが、もっと大胆にデザイン化したほうが僕は好きだった。静的になりがちな飾り物をパネルの中で動的にしようとしている。しかし、飾り物が薄くてひらひら感があり、それだけで動きがあるので、足立さんの意図が展示としては生かされていないような気がした。

　飾り物と真ん中のテーブル作品が吉備仁美さん。りんごの次は何が出てくるのでしょう。りんごらしさとは違った強い印象をりんごの力で発揮できたと思う。
　「プロダクト」。市場を対象にした生品、生品のデザイン、性能、形態、価格や販売に関わることも含まれるのかもしれない。