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栄通記

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2007年 04月 17日

143) ユリイカ 「川上直樹展」・油彩画 4月15日まで(終了)

○ 川上直樹展<2> 白の拍動・黒の呼吸

 会場:ギャラリー・ユリイカ
    南3西1和田ビル2F・北向き
    電話(011)222-4788
 会期:4月10日(火)~4月15日(日)
 時間:11:00~19:00 (最終日17:00?)

 川上さんは僕より一つ下で53歳。医療関係に勤務、50歳から本格的に絵を描き始めた。それまでの人生が「120%を仕事に注いでいたとすれば、100%に落として絵を描く」と決意したのが50歳の時。その成果が昨春のセントラルの個展であった。僕はそれを見たわけだ。それ以前の彼は全然知らない。木嶋良治氏に習われたそうだが、氏の作品を仲立ちにしてあれこれと話したことを覚えている。川上さんの絵は風景画だ。その時の印象は、空にしろ特に雪の白に表現された何にもない物をどう表現していくかということ、言葉に直せば川上さんが好んで使われる「たおやかなる物」ということになるのであろう。一方で、木嶋作品に顕著な空間を切り裂くような線の緊張感にも親和性をお持ちなようなので、どう消化していくのだろうというものであった。空や川や海の青、雪の白を仲立ちにして優しさと厳しさのどちらに画風のウエイトがいくのだろうと思った。

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 今展は急な開催ではあるが、この一年間の区切りにもなっていると思う。昨秋の道展に応募した風景画の大作を2点、30号で大きさ構成と統一された静物画3点が鑑賞の中心だ。参考作品の小品を何点か展示されている。公募作品は今までの延長で、大作としてどこまで表現できるかを試されたと思う。中品の3点は木嶋氏との関係の安易さを一旦ふるいにかけ、再出発をしようとする実験的作品になっている。それだけ、絵に対して厳しくなっている。同時に、今までの描きなれた手法から離れているわけだから、自信、誇張、中途半端さが随所に見られる。手法に大胆な取り組みをしているが、やはり空間へのこだわりは捨てがたく、この画題で30号の背景処理に相当にてこずっているようだ。もっとも、力を入れたと思われる画質感にこだわった暗い作品は、垂れ流し風の模様を付けて緊張感を出そうとしている。僕の川上絵画理解ではこういう誇張美ではなくて、どこまで塗りとして空間を表現するかにあったと思う。見た目は良いが、「川上らしく」無くて、残念であった。一方で、一旦は今までの自分らしさをかなぐり捨ててチャレンジしようとする姿勢に限りない好感を持った。
 それにしても空間表現とは何と難しいことか。日本美の伝統はかなりの力点をそれに置いていた。おそらく、豊かな自然美へのこだわりと、内乱の少ないことによる自然讃歌の伝統が空間に対して独自のものを生んだのだろう。ヨーロッパ絵画、本来の油彩画は違う。キャンバスを蔽い尽くし、作家の創造物として絵画として立ち上げる。わけのわからない空間は不安の対象である。背景は主要画題の引き立て役か、対立の役割しか与えられていない。日本(道内)油彩画家は空間(背景)をいかに描ききるかで、その人の特徴というか本質が垣間見えると思う。僕はそういう目で大きな作品を見ている。
 川上さんは50歳になって絵画に対峙しようと決意したわけだから、ある程度自分の表現したい事を携えて出発されたと思う。もちろん描くことによる変遷は起こるであろう。出発点の動機の一つに「川上空間の追求と明晰さ」があったと思う。30号に収めるには大きすぎる静物としての画題、おそらく半分にしたら、より心地良い絵になるであろう。それでは空間との闘いを避けるということにもなりかねない。・・・。
 今展であらためて思ったことは、白でも青でも空間からむっくりとした何かを絵として立ち上がらせたいのではということだ。30号の作品は描かれた画題そのものを立ち上がらせようとしている。何と克服すべきテーマの多くて難儀なことだろう。今の川上さんは意欲的である。意欲で全てが解決されるものでもないが、それなくしては何も生まれない。結果に関係なく、意欲的に取り組んでいる過程を見れるのは鑑賞者の喜びである。地元の作家を見る・見続ける理由でもある。

 来月は別の会場に移して個展をされるという。わずかな間隔ではあるが、また見に行って、別の角度から絵を楽しもう。


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☆次回個展のおしらせ。
   川上直樹展-3  2007年5月14日(月)~19日(土)  さっしんギャラリー(南2西3札信ビル西口)

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 (あまり写真は良くありませんでした。表紙右端のエキサイトブログの川上さんをクリックして下さい。綺麗な写真が載ってあります。)

by sakaidoori | 2007-04-17 00:30 | (ユリイカ)


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