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栄通記

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2007年 04月 13日

138) 読書案内 「美術と新書本」

 以前、ミクシィーに「絵と新書本」という新書本の案内を書いたことがある(2006年10月4日)。相変わらず絵画の知識は新書本と図録等の記事からがほとんどだ。その後、新書本を10冊くらい読んだので、続編をと考えている。とりあえず、そのときの記事をそのまま載せます。何かの参考になれば幸いです。



◎ 絵と新書本
 
今日の道新朝刊に新書本のことが書いてあった。再びの新書ブームらしい。養老孟司氏のことを取り上げていたが、彼の本は未読である。「バカと絵」でも書いてくれれば、すぐ読むのだが。

 絵と新書ー僕の絵画に関する知識は新書からのものが九割以上だ。その大半がブック・オフからの購入。良い機会だから、本箱にある新書の目録を作ってみよう。出版年の後の数字は僕自身の好み度、関心度を点数化したもの。推薦度というより、栄通がどういうことに関心があるかと読んでください。長いから無視されるのが賢明かも。

<中公新書>

・「フィレンツェ  初期ルネサンス美術の運命」 高階秀爾 1966年  4点
 (何故、かの地が盛期ルネサンス美術を生めなかったかが通奏テーマ。)

・「近代絵画史(上)(下)ゴヤからモンドリアンまで」 高階秀爾1975年
 (高階さんの本は博学さと、こなれた文章で、どれをとっても読みやすく面白い。)

・「美術館誕生 美は誰のものか」岩淵順子潤子1995年
 (何を書いていたか殆んど忘れた。)

・「美の構成学 バウハウスからフラクタルまで」 三井秀樹1996年
 (フラクタル。雲の動きなど不定形な現象が構成学では定則可能であり、関係式に表示できるという。よく判らない点が多々あるが大事な学である。)

・「現代絵画入門 二十世紀美術をどう読み解くか」 山梨俊夫1999年

・「タイトルの魔力 作品・人名・商品のなまえ学」 佐々木健一2001年 5点
 (抜群に面白い。タイトルのことを考えている人にとっては必読書では)

・「美学への招待」 佐々木健一2004年

・「マグダラのマリア エロスとアガペーの聖女」 岡田温司(あつし)2005年
 (読んで損のない本。)

<岩波新書>

・「名画を見る眼 正・続」 高階秀爾1969年&1971年

・「絵で見るフランス革命 イメージの政治学」 多木浩二1989年
 (学的知識本で面白くありません)

・「謎解き洛中洛外図」黒田日出男1996年 4.5点
 (推理小説を読むようで、非常に面白い。学者で読ませる論考を書ける人とはたいしたものだ。)

・「芸術とパトロンたち」 高階秀爾1997年

<近美・ミュージアム新書>

・「神田日勝 北辺のリアリスト」 鈴木正実1984年

・「田辺三重松 絶景へのオマージュ」中塚宏行1991年

・「深井克己 未完のランナー」柴勤1994年
 (深井の紹介本が少ないだけに貴重)

・「画家達の札幌 雪と緑のメモワール」苫名直子1999年

・「山下りん 明治を生きたイコン画家」 大下智一2004年 4点
 (このシリーズでは面白い部類。航路によるロシア行きなどわくわくして読んだ。非ルネサンス風絵画としてのイコンをりんは嫌っていた。なのに、一生イコンを描き続けた。その理由の推論が欠けているのが残念。僕の推論、ニコライ神父との精神的関係、もしかしたら肉体的関係があったのではないか。あの高名な神父がそんなことをと思うかもしれないが、神父の性的乱れはおぞましいものがある。建前の強い人間は、その反動も人一倍だ。)

<講談社現代新書>

・「美について」 今道友信1973年

・「ナルシズム 天才と狂気の心理学」 中西信男1987年  4点
 (心理学書。美術書ではないが、岸田劉生、ダ・ビンチ、北大路魯山人などを事例研究にしているので興味惹かれた。ここにも極端な人間の非社会性を指摘していて面白い。)

・「イタリア・ルネサンス」 深井澤井繁男2001年

<光文社新書>

・「絵を描く悦び 千住博の美術の授業」 千住博2004年
 (画家自身の言葉だから、学者達の言説と違って聞きがいがある。若い画家達なら一読の意味もあるのでは、僕のように鑑賞歴の浅い人は読む値打ちもあるのでは。以前日本画の駒澤さんにプレゼントをしようと思ったが、却って失礼と思い機会を失った)

・「20世紀絵画 モダニズム美術史を問い直す」 宮下誠2005年  5点
 (新進気鋭の若手評論家。44歳の作。具象と抽象、わかる・わからないなどの言い古された二項対立を現在の視点で無化無用を論考している。故村岸君との会話が思い出される。彼は教授から現代ドイツの絵画が注目されていると習ったが、僕はこの本でその辺の事情を知っていて、話が弾んだ。三岸記念館の学芸員の穂積氏は世界美術に明るいから、話を聞きたいものだ)

<洋泉社の新書>

・「江戸の春画 それはポルノだったのか」 白倉敬彦2002年
 (ある日本画家との会話で「私は春画を描きたい」という言葉を耳にした。すぐに、たまたま古本屋で目にしたので、即買って読んだ。思えば手に入る好例。江戸時代というものを理解するためにも春画理解は大事なこと。古典の美術作品は建築、服飾、宗教などいろんな面から楽しめるのでこちらの受け皿を鋭敏にしていないといけないな)

<ちくま新書>

・「人はなぜ『美しい』がわかるのか」 橋本治2002年
 (才人・多弁の橋本の作。さすが、刺激的なタイトルである)

<有隣新書>(横浜の地方出版社)

・「萬鉄五郎 土沢から茅ヶ崎へ」 村上善男1991年 4点
 (土沢の萬記念館に行って買った本。著者は今年亡くなられました。享年73歳。58歳時の著作。彼は画家でもある。画家の文というだけで僕は好きです。更にこの本は評伝としても論としても素晴らしい。地方人でありながら、こういう人を東北は輩出するのだ。やはり伝統の差なのだろうか)
 

by sakaidoori | 2007-04-13 00:07 | ◎ 本


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