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栄通記

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2007年 04月 10日

135) 倶知安町・ST-GATTARY(徳丸滋私設ギャラリー)訪問記

135) 倶知安町・ST-GATTARY(徳丸滋私設ギャラリー)訪問記_f0126829_15451039.jpg○  ST-GATTARY(徳丸滋・しげる私設ギャラリー)

 場所:虻田郡倶知安町山田74
    電話(0136)22-1765

 油彩画家・徳丸滋氏のギャラリーを訪問した。
 正面に羊蹄山の東面を望み、ニセコアンヌプリの西麓に位置している。ニセコには美術館や登山できる山もあるので、その都度訪れることは無いが、いつも親しい気分で辺りをうかがっている。南の方に1000m足らずの昆布岳がある。2時間ぐらいで登れる安易な山だ。登る楽しみは少ないが頂上からの展望は素晴らしい。ニセコの山、羊蹄山、昆布岳に囲まれた平地地帯がすっぽりと見晴らされ、大地が波打った感じで目に迫る。そこから徳丸ギャラリーが建物は樹に囲まれて定かではないが、間違いなく位置が確認できる。氏は1978年に銀行を辞められ、以来その地で絵画制作中心の生活をされている。

 3回目の訪問。小川原美術館を4時頃に出てからだから、少し遅い。失礼とは思ったが、雪の残るギャラリーをどうしても訪れたかった。玄関先でバケツを持った姿で鉢合わせた。室内の掃除中のようだった。

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 見慣れた展示場を、一度は目にした作品を一渡り確認して、勧められるままに着座した。「見たことのある作品ばかりでしょう」という言葉を皮切りに、あれやこれやと雑談に花が咲いた。見たことのある作品といっても、製作者の手元に並べられた作品群は居心地よく鑑賞者を迎えてくれる。僕は当然に、氏と対座して話をしているわけだが、いつも僕の目には後ろにあるマツの絵が氏の顔と同時に飛び込んでくる。森の中に立たずむ幼木のような凛としたマツと、すべてが淡いピンクに覆われた世界。若い絵だ、瑞々しい絵だ。氏の絵は青で語られるのが普通だが、1色でおおい尽くすこと事が出来ないのが画家の世界だ。以前「空はピンクにもなるのですね」と氏の作品を見て感想を述べた時、「黄色にもなりますよ」と、直ぐに返事が帰ってきた。
 ところで、青の世界だ。近代美術館所蔵の「森」(1982年、50歳頃)という作品がある。夜中に羊蹄山を登山中に5合目辺りで出くわしたダケカンバの大木を描いた絵だ。青の夜陰に一本の大樹を生命力みなぎらせて、更に土からあふれた根っこをのた打ち回らせ、克明に描写している。孤樹を描いているのに、タイトルが「森」というところに画家の思想が現れている。「全体と個」が、「見えない森と描かれた樹」に、更に「幹と根」に。そうであっても、80年代の力点は一木一草の生命の秘密の真っ只中に入り込み、絵筆でえぐり出そうというダイナミックさがあった。ピンクのマツとは違った若さがあった。(そうなんだ、徳丸氏は常に若い絵を描いているのだ。)時期を確定することは出来ないが、氏は生命の末端に入り込んで格闘することによって、和解したようだ。本来の生命讃歌の願望を素直に表現されているようだ。全体と個の融和が図られ、画面一杯に生きとし生きるものをうたいあげようとしている。「ピンクのマツ」は完形としてはマツしか描かれていないが、もやったピンクの向こう側に楽しげに森に住む生き物達の静かなざわめきが聞こえるようだ。

 構図やデッサンのことをうかがった時に聞いた言葉である。
 「最近は厳密に構図は決めていないですね。いいかげんなんですから。下塗りをしながら、じっくりキャンバスに向き合って、向こうから出てくるものを表現するようにしていますね。・・・どこで筆を置くかですって。ついつい描き過ぎちゃうんですね・・・・」ニコニコと笑いながら応えていただいた。ゆったりと時間が過ぎていった。これほど画家との話が盛り上がるとは望外の喜びである。おそらく、僕のレベルに合わせて言葉を繋いでくれたのであろう。僕の方は何時までもいたかったが、長居は失礼と思い、違う意味で長く話し込むことに焦るようになった。やはりお邪魔しすぎたようだ。ニセコアンヌプリのスキー場が明るく点灯していた。

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 柱に挿まれた二枚の作品が壁の中でつながって見えてしまった。不思議に眺めていると咄嗟に外して二枚が合い寄り添うことになった。図像的には曼荼羅画です。八百万神的な一木一草の全体のありようを象徴的に表現した物だと思います。手前の川も象徴的です。

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by sakaidoori | 2007-04-10 16:21 | ☆(倶知安)小川原美術館


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