115) 近美 「常設展 かるたdeこれくしょん」 ～３月２５日まで

○　常設展　かるたdeこれくしょん　

　会場：北海道立近代美術館
　　　　北1西17　　　電話（011）644-６８８１
　会期：2月６日～３月2５日（日）
　時間：９：３０～１７：００　（入館は１６：３０まで）
　休み：基本的に月曜日
　料金：一般・大学　４５０円
　企画・編集：淺川真紀（近代美術館学芸員）　
　主催：北海道立近代美術館
　　　　　ＮＨＫ札幌放送局

　ペルシャ展と同時に書こうと思っていたのに、とうとう明日で終了です。卒業の時期と重なって、春の気分でかるた展？はいかがでしょうか。


　４４作品の近美収蔵作品を選んで「絵札」にして、それに「読み札」を作ってかるた遊びをしようというものです。その為に立派な目録・図録兼かるたブックが用意されています。これは切り離して「かるた」として使えます。入場料でいただける訳ですから、今展の料金は格安です。
　読み札は「絵札としての作品に合わせて、モチーフ、色や形、素材や技法など、その作品ならではの表現のエッセンスを端的な言葉にした」とあります。鑑賞方法は「壁に貼られた読み札をヒントに、作品をじっくり鑑賞しましょう。そのあとかるたブックを開いて、読み札の裏面の解説をお読み下さい」とあります。

　何点か読み札を列記しましょう。


○　あ　　朝の祈り　照らす光　（林竹冶郎「朝の光」最初にある作品）
○　け　　元気のもとは　情報交換　（大井戸百合子「たちばなし・３」）
○　こ　　心を映す　室内風景　（神田日勝「室内風景」）
○　ぬ　　ぬげた靴が　もたらす幸せ　（ジュル・パスキン「シンデレラ」）
○　の　　野に咲く　ただひたすらに咲く　（能勢真美「うばゆり咲く」）
○　ふ　　ふくらむ力　おさえる力　（ドールとルイ・マジョレル「鉄枠吹込花器」）
○　り　　りんごを写す　宇宙を写す　（栃内忠男「コンポジション『群』＜りんご＞」）
○　ゆ　　ゆめもうつつも　照らす月星　（国松登「星月夜」）・・妻が選んだベスト読み札

　こんな具合です。シンプルで力強い読み札です。
　たまたま学芸員の淺川真紀さんが館内をうろうろしているので、引き止めて２，３の質問。「何人で読み札を考えたの？」「私一人です」「おー、それは凄い。すらすらと言葉は出ましたか？」「企画は１年前に決まりました。展示前の２，３ヶ月前に考えました。何点か困った読み札もあります」「食事も出来ないほど考えましたか？」「いえ、しっかりご飯は食べました」「企画も一人でかんがえたの？」「はい。だいたいこういう遊びじみた企画は私ですね」なるほど。良い企画ですねという言葉に、にっこり笑って「ありがとうございます」

　会場には２箇所でかるたができる場所があります。一つはござを床にひいて、座布団が用意されています。なかなか広い。一つは段差を作って、そこにテーブルを置いています。床敷きよりも少し狭め。しゃれた気遣いです。床敷きの方で夫婦でかるた遊びをしてきました。読みながら取った僕の負けです。１５年後もこうして二人で遊んでいるのでしょうか。

　楽しい企画なのですが、悲しむべき欠点が一つあります。かるたが面白くて、かるたの言葉と作品の関係が気になり、作品鑑賞がおろそかになってしまったのです。先日終わった市民ギャラリーの「札幌美術展　街の想い出、私の記憶」展のⅠ部も同じですね。風景画を楽しむのではなく、写真のほうに気をとられすぎになったのと似た経験です。でも、時にはこういうのも良いですね。

　かるたの裏に書かれている目録は作品説明を含めて実に詳細です。ここまで詳細だと一つだけ説明が抜けています。作家の生没年です。しかたがないので展示キャプションよりメモしてきました。

　展示は読み札のあいうえお順にならんでいます。展示作家とタイトルを何点か紹介します。

○一原有徳「ⅩⅡ１」　○木田金次郎「秋のモイワ」　○片岡球子「浮世絵師歌川国芳と浮世絵研究家鈴木重三先生」　○田中針水　「子供乃図」　○エミール・ガレ「鯉文花器」　○繁野三郎「樹間秋色（円山）」　○村井正誠「自画像（細い線）」　○伊東深水「『真美人十二姿』大島の女」　○菊川多賀「閑日」　○小谷博貞「春卵」


　※常設展２階はガラス造型「日本のグラス・アート」展。目録はＡ４版３連つなぎの片面カラー刷りです。説明も行き届き、金銭的余裕を感じます。