５６） 市民ギャラリー 「道都大学建築学科卒業展」 （終了）

○　第１１回道都大学美術部　建築学科卒業設計展

　場所：札幌市民ギャラリー、１Ｆ
　　　　　南2東6
　　　　　電話（０１１）２７１－５４７１
　期間：２月６日～２月１１日（日）

　（デザイン学科は次回に報告します）
　建築学科の卒展の面白さー各学生が社会的関心なりユートピアを建物を造るということで言葉で語っていることです。一応それらは現実社会の建築物として計画化されますが、どんな設計図面を描いたとか、ミニチュアを作ったとかいう技術的なことは素人目には関心ありません。若い学徒の着眼点、関心事に「気付き」「確認」をしています。

　道都大学の学生は全国から集まっているようです。卒論の課題は「地元を良くする建築物、そのための基礎研究論文」でしょう。

○　もっとも興味を惹いたのは、伏見知華さんの
　「女性における快適な洗面所について　－百貨店における化粧という行為と洗面所に関する研究」

　男にとってトイレとはほとんど用を足すところです。確かに女性が化粧直しをするところという認識はありますが、「化粧直しの一部としてのトイレ」、そこまでは言っていませんが、そういう着眼点にハッとしました。論者は洗面所を「トイレ（手洗い）－洗面台ーパウダーコーナー」の有機体と捉えて、札幌市内の百貨店のトイレの使い勝手を調査し論を進めています。情報化社会の進展と供に都会の商業ビルは商品の提供の場以外に、美的デザインと有用性の個別化で差異を計ることになるでしょう。買い物は女性が主流です。彼女達の行動規範をトイレという視点で眺めたことに、いろいろ気付かされました。

○　沖縄出身の瑞慶山美雪さん。
　「ニライカナイ　　いちゃりばちょーでぇー」

　論文パネルから論旨を書きます（余りにメモ書きが悪く意味不明な箇所があるため文意を損ねない範囲で若干僕の追加説明があります。主にアンダーラインの部分）。
　「沖縄には３７箇所の米軍基地があります。人口１１０００人弱の金武（きん）町には米軍基地が４箇所あり、面積の６割を占め６０００人から７０００人の米兵とその家族が住んでいます。金武町のことを『アメリカの文化を多く受けた治安の悪い町』と言われています。近々、基地所在周辺整備事業として８４億円が支給されます。
　インターナショナルな街づくりの中核施設コミュニティーセンターを計画しました。基地の米兵住民や観光客のふれあいの場として、平和と文化を考える人的交流の場です。明るく安全な場所でもあります。夜はラウンジとしても使い２４時間オープンです。・・・」現在の米軍基地及び軍人を受け入れて住民、観光客と一体となって明日の金武町を異文化交流の場、負の遺産を全否定することなく一緒に街創りを考えようと論じています。論点の不整合、矛盾や主張の是非は問題ではありません。沖縄出身者がいかに現実と関わるかを正面から語った文章に思わぬところで出会うことができた。心に留めおこう。

　参考：金武町は３７．７６ｋ㎡を有し、約６０％の２２．４５ｋ㎡が米軍基地。４自治体にまたがるキャンプ。ハンゼン（写真のピンク部分）が最大で５１．４０４千㎡、代替地の条件でキンバル訓練所（６０１千㎡、写真のだいだい色部分）が返還予定。当然町も跡地計画を思案中であるが観光大規模レゾート施設を考えている模様。