2018年 09月 21日
ハーフカメラの写真展覧会 参加者:阿部雄 井上知彦 小野寺宏弥 ささきぱる 外崎うらん 橋本つぐみ 会場:ギャラリー犬養 2階 豊平区豊平3条1丁目1-12 (地下鉄東西線菊水駅より徒歩7分。 駐車場有り。) 電話(090)7516ー2208 会期:2018年9月19日(水)~9月24日(月) 休み:火曜日(定休日) 時間:13:00~22:30 ーーーーーーーーーーーーーー(9.20) 「ハーフカメラ」、フィルムで撮るカメラで、24枚撮りのフィルムが48枚撮影可能というものです。 一枚のネガで2枚撮れる、だから多く撮りたい場合は重宝です。半分のネガですから、大きく引き延ばすとクリアー度が下がって、ボケ・アラ気味になる。もっとも普通にスナップで楽しむ場合は全く問題ないです。 欠点は現像費が高くなることです。大きく引き延ばしてボケアラになるのは欠点というより特徴といった方がいいでしょう。 ですから、今展を見る場合、どれぐらいの大きさの作品仕立てかで、その人の参加目的がわかるでしょう。つまり、ボケアラを見せたくないのか、ボケアラ作品の個性として出すのか? 単に「ハーフカメラ」という機械自慢か?ハーフカメラの特性を生かした自己表現か? 処狭いとは言わないが、特徴のある壁を一杯一杯展示している。作品量の多さに一目で喜んでしまった。 以下、左回りで一人一人を簡単に載せましょう。 典型的な心象スケッチだ。 タイトルは、「生活は美しい(生きているって素晴らしい)」。そういう気分で淡々と撮っている、ではないだろう。 彼ははしゃぐことが好きなタイプだ。女の子大好き男の子だ。 そういう青年が人気を隠すようなスケッチをだした。何ともいえないこのタンタン(淡々)感。 「ちぇっ、仕方ないな-、誰も相手にしてくれない、だったらオレも誰も相手にしないぜ・・・」そんな呟きの一枚一枚だ。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ↑:橋本つぐみ、「たとえば/あるいは]。 おー、橋本つぐみは絶好調だ。心象風景には違いないが、「物語」ですね。どんな物語かというと・・・ふふふ、それは「秘密」・・・? 本当は「秘密」でも何でもないのだから、何とか説明しようとする。その時の言葉が、「たとえば・・」と言ったり、「あるいは・・・」と言ったりする。その「たとえば、あるいは」をハーフ見立てにタイトルにした。ようやく橋本つぐみも直接説明を卒業した。 「卒業」といえば、彼女はより「大人っぽい」雰囲気の世界突入したいのよ!本当は。でも、彼女自身の持つ「女の子(乙女)性」が「言い訳根性」が「嫌われたくない心理」がどっかで作品を引っ張っている。しかし、最近は作品自体が「橋本つぐみ」から離れて前に前にと押し進もうとしている。今回は「ハーフ」ということで「モヤモヤ感」が強くなり、一方で橋本つぐみはスパッと切り取りたいところがあって、このモヤモヤ感といさぎ良さが今展ではうまい具合に両立して、ちょっと大人っぽい世界が生まれたみたい。 今回はこの作品が一番のお気に入り。橋本好みの半分分割法と、床にもの置く「いじらしさ」と、カーテンの白さ膨らみに女の肉感に重なり、橋本版「処女からの脱皮」みたい。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 井上知彦はハーフカメラが普段着のようだ。 そして撮影スタイルも「何かを狙う・派」ではなく、普段着を等身大にパシッ!みたいだ。工夫された展示を無視して、作品だけを見ていると、特に強い拘りを感じない。 ハーフカメラ撮影スタイルはともかくとして、小さいとはいえこれだけ大きくすると、写真作品としての楽しみも見る方は持つわけだ。しかし、その気軽なシャッターチャンスにはあまり興が湧かなかったことも事実だ。つまり、今回の井上展示は「ハーフカメラ」と「普段着の僕」を楽しむコーナーだった。 ボートの作品、個人的には「ボート大好き派」だから気になるところフだ。しかし、女の子が背景にいるボートでは「弧」が楽しめなくて残念だった。 しかし、フロイト的精神分析でみると、「ボート」が男だから、「ボート(男)」を無視する「女」になるわけだ。「夕べ、きっと振られたのだろう」、と解釈するのだろう。 ~~~~~~~~~~~~~~~~ 彼の被写体なり、撮る姿勢はガンコなまでに変化はない。日常、目にする普通の世界を、やや接近気味に中央に収めて強く撮る!時折、チョット変わった被写体を、素直に強く撮る! 強く撮るから「心象風景」っていう感じはあんまりしない。そこが僕にとっては好ましい。愚直なまでに素直に強く撮り続ける姿勢が良い! だから、一点一点見るより、ある程度の量があったほうがいい。 この「量」ということで果敢なチャレンジをしていると思う。 彼はとことんマイペース派なんだ。ところが、群青で毎年参加していると、良い意味で他人の世界が気になり始めたようだ。気になったからといって自分の世界を変えない。変えないのだが、他人の中で自己の世界を強く見せたい! 今回は作品を引っ付け気味にして、個々の作品よりも全体での「佐々木練・流」を見せつける。強く明快に見せるいつもとは違い、不本意ではないがボケ気味の世界は「佐々木練・流」になっているか?やや違っているか? 日常の、「どうでもいい、つまらない事ども」を撮り続ける佐々木練。 そもそも被写体に価値があるのか?写真で切り取って初めて我々は価値を見出すのではなかろうか?あとは撮影者の行為を含めて、他人の評価・・・評価する人の心に何某かの記憶として残るか否か、ではないだろうか。 左側のバス停の標識、傾いているのが佐々木流です。傾いていてどこか可愛い。擬人化しているのでしょう。 標識、それは標識として、ある崇高な価値あるものとしてそこにある。でも、単なる置物だよな~、だってバスは一日何本通るの?ここで止まるの?あ~、そんなに利用されてもここにある!いとおしいな~。 右側、佐々木流にしては「藝術っぽい」作品だ!やっぱり擬人化しているのだろう。忘れ物・・・でもここにある・・・でも、忘れ物、もうすぐ無くなってしまう・・・でも、並んでいると可愛いな~。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 今回、外崎うらんは正直すぎるほど正直だ。 これは悪い意味での指摘だが、祭が被写体なのだが、担ぎ人だけを作品にしている。祭のうねりと、その後の閑散としたのを表現して、「祭囃子は過ぎていく」だと思う。「動と静」、「人と物」、「叫びと無言」などなどが交差して・・・「過ぎていく」。祭の「哀れ」を見るか、「人の営みの激しさ」を見るか、などは撮影者の表現力が問われるところだ。 今作は祭を営む人にしか意が行かなかったようだ。 外崎うらんの作風は、王者の堂々とした威厳みたいなものがあるのだが、そこにアマノジャク的な女心、いたずら心、今風の軽い心、この堂々さと遊び心の重なりが特徴であり面白いと思っている。 今回は「ハーフ」ということと「祭」という環境のほうで遊びすぎて、作品で遊ぶのを忘れたみたいだ。 何故か・きっと今展が楽しかったのだろう。制約がなさ過ぎて、緊張感が弛んだのだろう。今はそういう時期なのかもしれない。 多分、外崎うらんにとっての今展は上掲の2作で言いたいことは尽きているのだろう。特に、左の語り合いの場が全てかもしれない。 上掲が全てということは、撮影者の指向は「祭」そのものにはないのかもしれない。大仰な道具立ての人混みの中で、「悲哀に通じる喜怒哀楽」が主要な関心なのだろう。 以下の作品群は良い意味で撮影者からのプレゼントだ。 以下の作品はそれぞれ独立した展示だ。上の群れる作品とはムードが違うから分けたのだろう。 分けることは構わないのだが、撮影者のキチッキチッとした性格が反映されて、今展のように「動的祭」の作品群の前では影が薄くなってしまった。 昔の風景を見ているようだった。それだけで懐かしい気分になってしまった。最後の写真などは炭住を思い出させる。全く炭住には似ていないのだが、黒白のボケアラ感は細かい記憶を削いで、一気に人の記憶に辿りつかせる。 ~~~~~~~~~~~~~~~~ ↑:阿部雄。 ↑:2点とも、「Light Dance」。 タイトルは「光の踊り(踊る光)」だ。全くそのとおりだ。 阿部雄がこんなにロマンティックで私的な青年とは知らなかった。 今展の主宰者は彼だ。さすがに「ハーフカメラ」の特性を知り抜いているという感じ。 こういう作品はゴチャゴチャ言っても仕方がない。実作を見て、その世界に堪能するしか無い。山岸せいじ氏ならば「天国からの光」とでも言うかもしれない。その山岸せいじ個展が街中で開催中です。今展の「阿部雄パラダイス」との違いを楽しんで下さい。 「合図する小鳥たち」?要するに、「僕に微笑む可愛い子」という意味です。右側の作品、女性の顔が埋め込まれている。この女性が「Bird」鳥なんでしょう。どうして複数形なの?もしかして、みえないところに他にも女性がいるのかな? 二つの英語読みタイトル、今回の阿部雄は限りなく詩人になりきっている。撮影すると言うことは、発表すると言うことは、普段の普通人を越える体験だ。
by sakaidoori
| 2018-09-21 18:42
| (ギャラリー&コーヒー)犬養
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アバウト
丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
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