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栄通記

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2017年 01月 17日

2540)「Traffic Moment 村岡陽菜 橋本知恵 二人展」 HUG 1月15日(日)~1月29日(日)  

Traffic Moment 
村岡陽菜 橋本知恵 二人展

北海道教育大学大学院油彩画研究室修了生、
村岡陽菜(2014年修了)、橋本知恵(2015年修了)による
二人展です      

    
 会場:HUG 北海道大学アーツ&スポーツ文化複合施設
      中央区北1条東2丁目4番地 札幌軟石蔵
   
      電話・011-300-8989

 会期:2017年1月15日(日)~1月29日(日)
 休み:火曜日(定休日)
 時間:12:00~21:00
     (最終日は、~18:00まで。)


------------(1.15)


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 ほぼにた年齢の女性2人展。道教育大+院で油彩を学んだ。
 実は、僕は彼女たちの学生時代の作品をかなり見ている。個展で見ることはなかったが、同期の作品群の中で親しんでいた。
 この日、記帳をしたのをきっかけに、村岡陽菜さんと話し込むことができた。といっても、昔から感じていたことを思い出しながら、今日の作品の感想を述べた。

 そんなわけですから、初めに彼女を掲載します。語りも必然的に彼女中心です。


 (以下、敬称は省略させていただきます。)

◎ 山岡陽菜 の場合


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 今展を代表する大作だ。二紀展に所属しているとのこと。その出品作が中心か。

 都会の街角風景。黄昏れすぎの「ネオンの七色、人の黒きシルエット、夜空の青・・・そして意図的な影」が全てだ。影は線から面へと膨らみ始めた。より大きな闇のムードを漂わせている。だが、「闇」と言うには不思議性に欠ける。メインは健全な七色の世界。影はその明るさを引き立たせる役目のよう。

 都会のネオンの下の人の織り成すドラマ、それを村岡陽菜に求めてはいけないようだ。
 僕は求めたくて求めたくてウズウズしている。だから、闇にドラマが薄いのを不満に思う。絵画の構成において、マイナスの人間関係である三角関係のような浮き沈み、立体感が乏しいのを不満に思う。しかし、それは彼女に即した不満ではない。無い物ねだりというものだろう。

 黄昏時の闇夜に人の断絶苦悶を彼女は見ない。生きている一つの証、明日も生きることがあたりまえのように、淡々と良き日を終えた安堵を見ている。

 闇夜に健全な希望を見る!それは僕とは違う。違うが、言葉で示されたら間違いなく反発する。しかし、絵画は美しくそこにたたずむだけ。幸せな闇夜もあると信じたくなる。



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   ↑:「On the way」・2016年 キャンバス 油彩。




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   ↑:「weekend」・2016年 キャンバス 油彩。


 昔に比べれば自信を持って描いているみたい。学生時代は中途半端にロマンがかっていた。今は強く描いている。気持ちがスッキリしたのか?描くこと、見ること、生きることに変化が起きたのだろう。画面に幸せ感が強くなったみたい。



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橋本知恵 の場合




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   ↑:右側・「此処では喜劇ばかり」、2015年 キャンバス 油彩(以下同じ)。
   ↑:中央、「そこにいること」、2013年。
   ↑:左側、「誰がうそだといえましょう」、2014年。



 橋本知恵の人体といえば、どうしてもミケランジェロを思ってしまう。きっと彼女は随分と研究したと思う。力強い筋肉美、他を圧倒させる肉体のボリューム感、その肉魂が他者と絡み会って個の尊厳を発揮する。

 ミケランジェロの場合は神に対峙する人間がテーマだった。「個」の独立の問題が常にあった。
 キリスト教的神に無縁な橋本知恵にとって、この力強さは何と闘っているのか?おそらく、そういう問題設定が間違っているのだろう。ヨーロッパ美学を明治維新以来、いかに自分のものとするかと闘った日本人。その末裔の北海道の女子がパワフルなミケに魅入った。憧れた。一所懸命に彼を追っかけた。そこから逆に彼女は何かと闘い始めたのだろう。無意識下にあった青春の悶々と反逆精神に目覚めたのだろう。その途中経過が今展の作品群・人物群だ。

 テーマは「女である自分」と「他者との関係」と、決めつけよう。他者とは「家族という他者」だ。





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   ↑:右側、「はじまりのおわり」・2015年 油彩 キャンバス。
   ↑:左側、「だれがほんとを」・2016年。



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   ↑:「Amicus」・2016年。


 Amicus・・・どういう意味だろう?辞書によれば、ラテン語の「法廷助言者」あるいは「終生の友」を意味する語群の一部だ。



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   ↑:右側、「なつがとおりすぎていく」・2014年。
   ↑:中央、「スケッチ」・2014年。
   ↑:左側、「ものさし鳥の巣」・2016年。


 大学院修了後、旧作を交えてではあるが、こうして現在の絵画研鑽を押し出すことはとても良いことだと思う。
 職業画家でない限り、一年で描く絵画作品量はしれている。描き続けること、僕のような鑑賞家が若き表現者に願うのはその一点のみだ。

 確かに彼女たち二人の表現は古典的だ。しかも、中央の今風とは違い泥臭く野暮ったい。北海道内の画家として、海に囲まれて古き良き時代の古典絵画を純粋培養的に取り組んでいる感じが強い。しかも真面目に素直に実直に。絵描きとしてその気質は良い。しかし、現代の豊かで意味曖昧な不安な環境の中で、しかも全てが軽い中で、彼女等の実体的絵画を見ていると決められた絵画的約束時の中で個的ロマンを追っかけているだけのようで歯がゆい感じもする。
 しかし、無い物ねだりはできない。研鑽のこの時代をくぐり抜けて、よりなまめかしい個性的作品の誕生を楽しみにしよう。
 ルネッサンスから印象派まではヨーロッパ男性の美学だ。根本精神は「他者の支配」だ。根本的に、今の若き日本女性の感性と反すると思っている。
 「若き日本女性の感性としての絵画」、本当はこの2、30年に陽の目を見始めたものだと思う。可能性は狭くはないはずだ。僕自身を含めて、男の絵画感もこだわらないで突き進んで欲しい。

by sakaidoori | 2017-01-17 13:15 | HUG(教育大文化施設)


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