2016年 05月 03日
「群青」(ぐんせい)展 ぐんじょうと読まないで下さい。 ぐんせいと読んで下さい。「群れる青い人達」です。 ーーーーーー ●第3回 丸島均(栄通記)企画 群青(グンセイ) 八つの展覧会 〔写真、絵画、書、ドローイング、テキスタイル、立体〕 「群れる青い人達」による自己表現展です。 雪固まる1月、2月・・・ 寒い・・・ 少しでも元気になれれば・・・ ●会場:アートスペース201 札幌市中央区南2条西1丁目山口ビル5&6階 電話:011―251―1418 ●会期:前期⇒2016年1月28日(木)~2月2日(火) 後期⇒ 2月4日(木)~2月9日(火) (前期は6階3室のみ。後期は全館5室の展覧会。) ●時間:10:00~19:00 (各会期最終日は、~18:00まで) 前期・6階B室 ○「鉄の灰」(写真2人展) 阿部雄 千葉貴文 前期・6階A室 ○「男展」(写真展) 金侑龍 小林孝人 佐々木錬 松尾泰宏 前期・6階C室 ○「対展 Ⅰ」(写真中心の美術展) 西口由美恵 小野寺宏弥 加藤良明 黒澤智博 笹谷健 篠原奈那子 鈴木悠高 加藤エミ 橋本つぐみ 庄内直人、佐々木練・・・(以上11名。) ーーーーーーーーー(1.30 2.1) ![]() 上掲写真の左側が千葉貴文、右側が阿部雄。 展示場所は左右で独立しているが、撮影取材、タイトル、展示など、綿密な話し合いで構成された融合展。 二人は札幌大学OBで、先輩後輩の関係。要するに仲間だ。その親しさをベースにしながら、お仲間展に陥らずに、いかに緊張を保つか!なにより、今の写真表現力、自分の美学・主義主張の確認と向上を目的にしていた。 モノトーンという共通性はあるが、有り様は随分と違う。千葉貴文はわかりやすい。「鉄塔大好き、線が大好き、ただそれだけでいい」という感じ。もっとも、それに徹しきれない発表姿勢が愛おしい。 対する阿部雄は、凄く地味だ。千葉貴文が分かりやすいだけに、千葉ワールドの背景あるいは補完と間違われそうだ。 あえて二人を言い切れば、千葉貴文は、「人のいない無味乾燥な幾何学世界を理想としつつ、やっぱり人の息吹に愛と未練を残す人」。 阿部雄は、「極々普通の田園風景が大好き、その風土の中の人のささやかな生き様に愛を感じる」ではなかろうか。 同じ場所に取材に行き、共通の場を共有しながら、本当は全く違う二人だ。それなのに融合できたのは、自然をベースにしながら、人への拘りがあるからだろう。 ◯千葉貴文 の場合。 ![]() ![]() ![]() 千葉貴文、自慢会心の一作だ。線描のような鉄線、鉄塔のみの美学、空に向かう上昇思考、空と鉄だけの美学、無駄を排除した緊張感。この感覚で作品を貫けば、明明快快なテーマ展になっただろう。コンセプト中心主義だ。 しかし、愛すべき千葉貴文はそれでは「つまらん」と思ったの?次の作品を千葉美学のピークにして、鉄美学路線から脱線していく。 ![]() ![]() そして次が愛すべき青年ワールドだ。 ![]() ↑:左側は「瞳に映る美しい世界」。 あ~、やっちゃった!右側は狸小路だ。鉄塔美学となんと異なることか!もし、「鉄無味乾燥美学」と「人混み人間社会」を対比的に表現したいのならば、問題はないだろう。ところが、あきらかに鉄の美学中心に展示はなっている。だから、幾人かの鑑賞者は、「鉄の緊張感が良いから、この作品、いらないんでないの」と指摘していた。そのとおりだろう。 だが、僕は青年・千葉貴文を見る。「理想としての美学」と「『人間、好きなんだよな~』という生理」が素直に出ている。それは美学一本勝負で見せることへの恥じらい、衒い、自信のなさかもしれない。きっとそうだろう。一方、「あの鉄塔美学は好きなんだけど、あれだけっていうのは、どこかもの足りないな~。ウソがあるのかな~」そんな、気持ちだろう。正直な青年だ、愛すべき青年だ。 ◯阿部雄の場合 千葉貴文作品鑑賞の流れに沿って載せていきます。 ![]() ![]() ![]() ![]() 鉄塔作品、これは相棒の千葉貴文に呼応してのものだろう。今回の阿部ワールドは暗くていささか宗教じみている。内側に連れて行かれそう。鉄塔は気分転換なりアクセントみたいで脇役だ。無ければないでも構わないし、あればあったで役立っている。 というわけで、鉄塔以外の個別作品を何点か載せます。(タイトルはこちらの記録ミスで不掲載です。) ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() この写真心は・・・「ミレーの『落ち葉拾い』」と言い切ろう。自然に包まれて人がいる、人の営みがある。自然を成り立たせている空気、そこを見つめたい、見えない向こうの世界と共にありたい、そんな願望も聞こえる。表現したいこと、そのムードは伝わる。 今展の良さは、真剣白羽で自身の宗教心を写真行為に重ねたことだ。作品としての遊び心は薄い。幸いにも千葉貴文とのコラボだから、彼との間合いが遊びになった。 これほど真面目な作品であるならば、問われることは一つだ。写真技術だ。 作品に宗教心というムードはあるが、それは平板な薄さによるものだ。その薄さにこちらの意識が吸い込まれるのならば成功だろう。残念だがそうはなっていない。写真という「機械」の表面で立ち止まっている。 おそらく撮影者はピンボケとか、露光一杯とか、細部への拘りとか、強烈な人工的写真を手がける人ではないのだろう。「自然」が好きだから、「普通に自然に撮りたい」。それは良い。しかし、結果が普通オンリーでは見向きもされない恐れがある。ましてや宗教心一杯だったら、日本人には敬遠されるだろう。 千葉貴文とは違って、ようやく「写真作品」が露わになってきた。若者にとって、「写真技術」は分かってはいても面倒なテーマだろう。こだわるべき時期かもしれない。 ![]()
by sakaidoori
| 2016-05-03 14:21
| 群青(2016)
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![]() 丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
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