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栄通記

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2014年 07月 22日

2421)「川上りえ個展 蜃気楼MIRAGE」 茶廊法邑 終了/7月12日(水)~7月21日(木)

  




川上りえ個展 蜃気楼MIRAGE 
     

        
 会場:茶廊法邑
      東区本町1条1丁目8-27
      電話(011)785-3607

 期間:2014年7月12日(水)~7月21日(木)
 休み:火曜日(定休日)
 時間:10:00~18:00
      (最終日は、~17:00まで)

ーーーーーーーーーーーーーーーー(7.20)





 目を皿のようにして以下の写真を見て下さい。

 同じような風景が続きます。気分を川上モードにスウィッチして下さい。



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 (以下、敬称は省略させていただきます。)



 細い針金で檻のような網?構造物?が会場狭しと陣取っている。壁側に近い通り道あたりに出入り口がある。左右に二つあって、そこから普通に檻のような中に入ることができる。
 「構造物」と説明したが、今展はこの構造物に意味があるのか?囲まれた空間に意味があるのか?皮膚のような針金表面の淡さが大事なのか?あるいは、見慣れない囲まれ空間だから、それに接して驚いたりする我ら鑑賞者自身の感覚にあるのか?場の交流にあるのか?設計・制作者自身がそれら全体を眺めることか?物質、空間、交流?

 作家は明快に語っている。
  「目指すのは構造体そのものではなく」
  「私の抱くイメージとその感覚の表現です」
  「物質と非物質との中間に位置する様な感覚を空間の中に具現化したい」



 作家に即して理解をしようとすれば、極論「檻のような物体を見るな」になってしまう。「針金を見るな」、「垂れ下がっているような、囲っているような形を見るな」ましてや「針金の溶接などを見るのは論外だ」だ。
 ところが私や我が細君は、そういう物質的なものばかりを見ている。そして、「作家は何をしたいのかは解らないが、よくぞここまで変なものを設置したな」と感動すら覚える。
 アゴを上げ下げして構造物を眺める。その場の空気感とか、針金越しの辺りの風景とかも楽しむ。いろいろと感心しながら「ふむふむ、ふむふむ」と小さな驚きで辺りをうろつく。

 僕は確かに知っている。川上りえがこの檻のような物を作りたくて此処に設置したのではないことを。目的が何であれ気分の大きな人だから、大きく大きく制作して作品が発散する何かを確認していることを。サービス精神豊かな人だから、見る人を川上ワールドに包んで楽しませたいことを。


 今回のタイトルは「MIRAGE(蜃気楼)」だ。確かに檻(制作物)の中を見ていると蜃気楼だ。檻から外を眺めても蜃気楼だ。では蜃気楼を作るのが目的か?「蜃気楼」、良い言葉だ。全ての知覚現象をそう呼べないこともない。
 今展が「人と人、人と空間との新たな模索」と言ってくれればまずは安心するのだが、そんな普通のことは語らない。

 
 「蜃気楼」が科学的(知的)に説明できるように、どこか知的頑固を感じてしまう川上美学だ。きっと、「感覚の具現化」のために目一杯思考を懲らせているのだろう。作家自身は美的には全ての自己作品に満足していると思うが、「川上知性」は全作品に「まだまだ」と神の声のように振る舞う。彼女も「きっとそうだろう」とうなずいては、新たな構造体とその環境にチャレンジしていく。


 「彼女の抱くイメージの具象化」、今展がその一つならば難しい内容だ。禅問答のようで、この檻の中で禅僧が居るようだ。だから、彼女の言葉から作品を楽しむのをよそう。
 僕にとっての川上ワールドの魅力は、純粋感性とでも呼びたいものを、必ず形とその親和力で何とかできるという信念、その知性と強さだ。そしてその知性と感性の「ズレ」だ。
 
 川上ワールドには男性作家のような「女を求めるエロスやロマン美、色気」などはない。女が作る「物質と非物質の中間感覚」、それはロダンや佐藤忠良風の古典的造形美から離れた「空間なり皮膚感なり、関係性にも重きを置いた造形美」なのだろう。出てくるものを次々にこちらもキャッチしてより簡潔に投げ返したいものだ。






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by sakaidoori | 2014-07-22 09:39 | (茶廊)法邑


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