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栄通記

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2014年 07月 17日

2413)「藤木政則 もうひとつの『都市と自然』」 cai02 7月12日(土)~8月2日(土)

  
  


藤木政則 

  もうひとつの都市と自然
        




         
 会場:CAI02
      中央区大通西5丁目 昭和ビル・B2   
      (地下鉄大通駅1番出口。
    ※注意⇒駅の階段を下りてはいけません。
          昭和ビルの地下2階です。)
     電話(011)802-6438

 会期:2014年7月12日(土)~8月2日(土)
 休み:日曜・祝日  
 時間:13:00~23:00

※ オープニング パーティー ⇒ 7/12(土) 19:00~

ーーーーーーーーーーーーーーー(7.15)



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 老いる男の旅を見た。

 (以下、敬称は省略させていただきます。)


 一本の柱在を持ち合うようなシチュエーションで二つの映像が組み合わせて流れている。おじさん(作家)が行きずりの男女と会話している。二つの映像は同じ設定だが、場所や背景を変えている。しかも、エンドレスの映像なのだが、切り替え時間が左右で異なっていて、二つの組み合わせは時間と共に微妙に変わっていく。



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 左側の映像、背景は札幌の風景のみだ。柱材を持つ人は札幌在住の行きずりの人だ。聞かれたことに応えている。質問は、「出身地は?札幌在住か?故郷はどこか?札幌の住み心地はどうか?故郷に帰る気持はないか?・・・?」だ。回答者は概ね札幌生活に満足している。帰郷意志の有無はいろいろだ。これまた概ね札幌定住指向だ。理由はいろいろ、故郷に帰りたくとも仕事がないとか・・・何より札幌が気に入っているのだろう。





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 右側の映像は作家本人だろう。質問をしているというシチュエーションだが口も動かさず何も語らず不動だ。背景のみが変わる。背景、そこが問題だ。自然といえば自然なのだが、牧場であり、原野であり、過疎地であり、廃墟であり、わびしい。原子力関連施設もある。決して自然賛美ではない。

 単純に言えば、都市・札幌と、地方の現状との対比だ。その両者を繋ぐのが柱材で、田舎を故郷に持つ札幌市民の言葉だ。彼等の言葉は作家とは初対面とは思えない明るさだ。

 作家は何が言いたいのか?僕は次のように明快に判断した。
 「田舎が寂れたのは、札幌が人をみんなかき集めたからだ。田舎(地方)のエネルギーを札幌が吸い取って、吐き出さないからだ。みんなみんな札幌という都市がこうさせたのだ」、だから「札幌が諸悪の根源だ」と。
 ただ、その言い切りは若干保留気味だ。つまり、作家・藤本政則にとっては結論を持っているのだが、だからといって、「資本主義が悪いのだ、拝金主義の都市文化が悪いのだ」と叫ばない。藤木政則はただ柱材を持つだけだ。しかも初老スタイルで。あたかも傍観者のようにしてそこにいるだけだ。激しい怒りを持っている、闘争心もある。だからこんな無益と思える作品を作るのだ。藤木政則というただならぬエネルギーがある。まさに『老いにむち打つ』だ。が、するーっとかわすように結論を見る人にゆだねる。そういうポーズをしている。


 それは確かにズルイ。映像を見れば作家の主張は至極明快なのに、間違いなくズルイ。だだ、「美術行為は告発にあるのか?問題提起にあるのか?主義主張のお仕着せにあるのか?」という判断の停止があるのだろう。


 それと、作家・藤木政則の世代問題もある。1952年生まれ。(何と、私と同じではないか!)この世代は今の日本を引っ張った団塊の世代の次ぎに来る人達だ。
 高校時代、テレビで大学闘争の熱気をいつも見ていた。「自分が大学に入ると、ああいうことをするのかな?すくなくともそういう環境に身を置くのだろう」と思って入学した。受験戦争ごだから、ぱっと自由にしたいのだ。みんなと騒げれば最高だ。が、灰がブスブス燃えているだけで、熱気は皆無だ。この日から夢と情念溢れる「闘争」だとか「革命」だとかは死語に進んだ。「しらけ世代だ」。が、社会に対して何か言いたい!でも誰も言わない。全ては終わっていた。熱いシュプレヒコール・・・は見果てぬ夢になっていた。

 決して傍観者ではないのだが、結論をバーンと全面に出すことをしない。比喩で言えば、岡部昌生氏との違いだ。彼は言う、「子供たちに残すべき未来はあるのか?日本の将来は本当に大丈夫か?」藤木政則はそんな臭いことは恥ずかしくって言わない。そのことに本当に悩んでいるのなら別だが。結論を持ってはいるが、それは私的なことだ。社会的結論は他人任せだ。だって、自分と他人は違う存在なのだ。結論を共有したいが、それは適わぬ夢か幻ではないか。・・・だから藤木政則は旅をする。
 今展は社会性の強い作品ではある。いや、社会派作品と断定する。が、それとは違って、結論をバーンと言えない男の、老い深まりつつある男の、自己確認と社会との共生を求めての旅でもある。映像とは違って、まさしくエンドレスだ。

by sakaidoori | 2014-07-17 00:49 | CAI02(昭和ビル)


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