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栄通記

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2013年 11月 26日

2313) 「林 教司作品展」 たぴお 11月25日(月)~11月30日(土)

  



林 教司作品展  

(1986~1995)全道展作品 (小品)女、花、果実を描く  

    

 会場:ギャラリーたぴお
      中央区北2条西2丁目・道特会館1F
      (中通りの西側の郵便局のあるビル。)
      電話・林(090)7050-3753

 会期:2013年11月25日(月)~11月30日(土)
 休み:日曜日(定休日)
 時間:11:00~19:00
     (最終日は、~17:00まで。)


◎ 移動開催

 会場:ダイニングバー イソムニア 
      中央区北10条西16丁目1
      電話・(011)640-6400

 会期:2013年12月3日(火)~12月15日(月)
 休み:日曜日(定休日)
 時間:11:30~23:30


------------(11.25)

 回顧展です。個展というものが常にそうであるように、リ・スタート展です。

 やはり記念すべき個展だ。画家が自己を省みると同時に、見る側は「林教司とは何であったか?」を刻むものであった。特に、40年前の大作は印象深い。「この時点でこの作品!これ以上を描くということはどういうことか?これ以上が描けたか?・・・」

 初日は個展を祝ってのオープニング パーティーだ。その様子を伝えるような会場風景になりました。関係者各位、ご寛恕を。


 (以下、敬称は省略させていただきます。)



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 氏はおびただしい作品を残していたはずだった。実に残念なことだが二、三年前の豪雪で、保管していた建物は崩壊し多くが消滅してしまった。今展の作品は、そういう中で生き残った作品群だ。

 ではあるが、初期の大作をこうして見ることができる。お伝えしたい。



  1947年     室蘭に生まれる
  1965年(18歳) 独学で油彩を始める
  1967年(20歳) 第1回個展(室蘭丸井デパート)
  1970年(23歳) 室蘭美術協会公募展初出品 協会賞・同会員
  1974年(27歳) 全道展初出品・入選 
  1977年(30歳) 自由美術展入選   
  1989年(42歳) 全道展会友推挙
    (年齢は全て推定。)



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   ↑:「月と羅漢」・1973年(26歳) 120号。



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   ↑:(上掲作品の部分図。)



 静かな作品だ。深い世界だが、極端を排して淡々としている。それは羅漢に託した「老い」の姿だ。進でも退くでもなく羅漢はたたずむ。太い両手両足は別の存在のようにして自己主張している。確かに顔は前を向いて前傾だが、一人の目は閉じられ、一人の目はこちらをにらみ返している。諦念と不遜さ。赤いマントは身を包み、自身の素肌、生の精神を塞ぎ込んでいる。赤をはぎ取れば醜く卑小な体があるだけだろう。

 それよりも何よりも黒くて暗い。全面が暗いから、かえってトコトン手前で暗さは留まっている。その留まる踊り場に二人の羅漢は身を守るようにたたずんでいるのだろう。その先に暗さを見るのは自分の仕事ではないと悟りきっているようだ。「先に進めるか!」と、一人の羅漢はこちらに投げかけている。当然、その羅漢は画家自身であり、投げかける相手は社会であり己自身だ。己己己が羅漢にも黒にも赤にも手足にも、幾重にも重なっている。

 暗い先に画家(羅漢)が見つめているもの、それは月に照らされた希望かもしれない、悟り(死)かもしれない、この安定した闇夜とは異質な混沌かもしれない。
 まるで以後の林教司の活動はその闇夜を突き抜けて、先を見定めようとした悶えだったのかもしれない。人生的要素や絵画的要素が装飾されて作品は姿を変容していった。不可思議な象徴としてのシュールな世界、曼荼羅的完璧を求めてのシンメトリー、その曼荼羅は姿を変えて抽象へ向かう。一方で、男の性(さが)は女へ向かい、ロマンと見果てぬ夢に華を咲かせて昇り詰めては、急展開にも落下しかねない。落下や格闘は血への闘争だったかもしれない。父へ、母へ、愛人へ、知己への愛憎・・・。

 その全貌を今展で見ることはできない。ただ、この闇夜の緊張感を維持しながら作品は間違いなくある。その緊張感を乗り越えたかどうか!
 まだまだ林教司は生きる。26歳時の傑作を乗り越えることはできないだろう。だが、そこには観念的「老」があった。今、「老い」という年齢に達した。本当の「老」の傑作を、生き様を楽しみにしよう。






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   ↑:「足音」・1988年(41歳)。


 いわゆるシュールリアリズム。
 どう見ても良いのだが、僕の画題の解釈を記しておきます。

 男根を意志でへし折り、反吐を吐き、両足をくにゃくにゃにして、横たわりへたばった人物画だ。
 一つの断末魔とも言える。が、両側の黒い部分は人の体をなしていない両足と頭だが、中央の王道は明るい綠で、希望のドアの前で横たわっている。たとえ折れて血を噴出しそうだが男として存在している。「不信」を背にして「自信」が立っている。



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   ↑:(上掲作品の部分図。)







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   ↑:「異境にて」・1986年(39歳)。



 シュールな作品だが、空の青や海の青はそのものズバリの清々しさだ。タイトルは故郷「室蘭」を詠っている。
 やはり故郷とは離れて懐かしく想うものだ。離れれば良きことのみが想起する。もちろん、人にもよるが嫌なことが詰まった場でもあろう。が、そういうのを忘れた時には綺麗な作品が生まれる。果たして氏にとっての「故郷」とはどういうものであったか。この綺麗な海空、そして象徴化された岸壁(岬)と不可思議な物たち・・・。







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   ↑:「Water seed (水の種子)」・1999年(52歳)。



 空、水平線、大地、海、波、卵、女、諦念、挽歌・・全ては抽象化し象徴化され、シンメトリーという美の形を与える。胎内回帰・再生というテーマで世界を覆われる。

 静かだ。
 今展を見て、氏にとっての「静かさ」に強く惹かれた。激しき自己自身の完璧なまでの裏返し。「静と動」、「完璧と混沌」、「諦念と恨み」、「天国と地獄」、「女と男」、後者の情念情動に支えられて前者の桃源郷が開くのだろう。





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   ↑:「陀羅尼(DARANI)」・1996年(49歳)。


 記すのが遅れましたが、氏はお寺の次男坊です。お寺の後継者となるべく、しっかりと修行をされた方です。日蓮の流れをくむ法華宗です。人生色々で、お坊さんになることなく絵画道の人生です。
 ですから、絵画から発する仏教臭は血肉化しているのです。






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   ↑:「種子」・2011年。





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by sakaidoori | 2013-11-26 14:15 | たぴお


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