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栄通記

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2013年 11月 11日

2300) 「ELINA SIPILÄ (エリナ・シピラ個展) in Sapporo」 レタラ 11月7日(木)~11月17日(日)

ELINA SIPILÄ (個展)  in Sapporo 



フィンランドより、リトグラフ作家 エリナ・シピラ個展  
        




 会場:ギャラリー レタラ 
      中央北1条西28丁目2-35 MOMA place 3F
      (アメリカ領事館の斜め向かいの白いビル。)
     電話(011)621-5600

 会期:2013年11月7日(木)~11月17日(日)
 休み:火曜日(定休日)
 時間:12:00~18:00
      (最終日は、~16:00まで。)

※ オープニング・パーティー ⇒ 初日 18:00~
                  19:00~ 佐藤美津子カンテレ・コンサート 500円  

ーーーーーーーーーーーーー(11.9)


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 フィンランド人。30歳台前半。技法は石によるリトグラフが大半。見ても分かるように白と黒の世界。画題は生き物と自然。


 白夜、あるいは黒昼の国、フィンランドのラップランド地方、その中心であるロバニエミからの来道だ。昨年、作品のみだが札幌のグループ展に参加し、ここが気になっての来札だ。本当に嬉しい。ありがとう。

 やはり、日本人とは異質の感性だ。間違いなく生き物や自然、歴史風土に対する愛の眼差しで、言葉に置き換えれば日本人の対応と変わることはない。が、自他の分別は鋭く強く、最終的には自他は統合されているのだが、その接着剤として宗教的な精神性を感じる。
 会うなりクリスチャンかと確認した。「イエス」との返事だ。


 本人の写真を始めに紹介した。その潔い立ち姿を見てもらいたかったから。以下の作品で、彼女の直視を背に受けながら見て欲しい。



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 全体を二つの言葉でくくりたくなる。
 白と黒。厳しさと優しさ。冷たさと暖かさ。大ざっぱで繊細。風土と生き物。町と自然。今展の場合、それらは決して対立概念ではない。が、明解な「他者」を前提にしているから、一本の縦筋が貫いている感じだ。その縦筋の象徴のようなものが、作中に沢山浮かび上がる「顔」なのだろう。
 「他者」、社会とは自己と他人で成り立っているのだが、日本人は「自分と身内」に置き換えたがる。美術界も大半はそうだと思っている。他者無き自然賛歌であり、祈りだ。

 黒の表現と言ってもよさそうだから白夜は関係あるのかと尋ねた。(もちろん通訳者を交えて。)
 「白夜は生活の上では当たり前のことだから、そんなことは考えたことはない」
 黒い日中の世界、あるいは白い夜の世界に対する感慨を期待したが、アッサリとした返事だ。

 トナカイ、気になる作品だ。この作品は昨年見ている。形(造形)は変というか不思議なのだが、間違いなく愛情表現だ。
 トナカイの意味を尋ねた。
 「父がハンターで、私はトナカイの肉を食べて育った」。その返事に、私を含めて周りにいた訪問者は驚きの様子を浮かべる。間髪を入れずに言葉は続く。
 「トナカイは私を育て育んでくれた。(自然の中での大事な存在だ)」
 『「食べる」とはそういう意味か』と、たじろぎと安堵が交差する。



 (寸法は描かれた紙の大きさです。以下の写真での表現部分の大きさではありません。)



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   ↑:「Kylä/Village」・2012年 石によるリトグラフ 53×38㎝。


 街並みがあって、海があって、山のような風景があって、黒い空がある。山に見える部分が幻想的で自然の象徴みたい・・・そういう解釈も成り立つが、これは洞窟からの「風景」だろう。実際に見える風景かもしれないが、やはり全体を幻視と思いたくなる。なぜなら、その視点の位置が、古代に人が住んでいたかもしれないような洞窟だから。画中の時間は石器時代と今とを往還している。洞穴の向こうの風景・・・それは今なのだが・・・に対する不動の時間軸と、それを成り立たせている愛を見つめているのだろう。

 
 作品のリトグラフは「石」という古典的材料だ。まさしく石版画だ。作家の風土や歴史への拘りが「石」を選択したのだろう。




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   ↑:「Oksat/Branches 2013年 石によるリトグラフ 72×56㎝。


 
 「Branches」、「枝」が絡み合っているのだろう。



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   ↑:「Juuret/Roots」・2013年 石によるリトグラフ 112×78㎝。



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   ↑:「Kare」・2013年 セリグラフ 107×75㎝。


 他にもあるのだが、何かに巻き付かれた「顔」を表現している。一番上の作品、真ん中が顔に見えるが、作家の意図せざる結果とのことだ。 

 どういう意図かはわからないが、画家の根底には「人」がある。全てを築き上げて、これからも生きていかねばならない存在、「人間」を正面から見つめる行為の結果が作品になるのだろう。人は「他者」無くしては生きてはいけない。その他者とは「根」であり「枝」であり、自然の息吹なりを伴って存在している。父への感謝とか憧れへもあるのかもしれない。作家にとって自然とは「母」よりも「父」に近い存在なのかもしれない?




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   ↑:「Railo/Crevasse」・2012年 石によるリトグラフ 70×100㎝。



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   ↑:「Määränpää/Destination」・2010年 石によるリトグラフ 73×56㎝。


 「Destination」、「目的地」。洞窟という過去から明日を見つめている。変わらぬ自然であり、それに包まれた世界であろう。もちろん、願望を含めた理想郷だろう。



 以上、メモ描きのような感想です。
 やはり、きつい眼差しと、それと不可分の愛情表現が魅力の展覧会です。めったに見れない異人の個展です。来札の経費等は公費の利用があったかもしれないが、今展は非常に私的なものです。今展実現に至るまでの意欲、パワーにも感じ入ってしまった。



 追記:
 ラップランド地方でのハンターといえば、狩猟遊牧民族であるサーミ人が思い浮かぶ。国境をまたいで生活する少数民族、そんなテレビ番組を見たことがある。アイヌ同様に、今ではサーミ人とて伝統的生活スタイルを維持している人は多くないだろう。
 彼女がサーミ人かどうかは知らない。オーロラ同様に、まだ見ぬ未知の世界への入口展でもあった。

 今冬(2014/1/11~1/17予定)、札幌(北海道)から作品と人間がエリナ・シピラさんの処に行かれるとのことだ。交流展だ。更に拡がる交流の輪だ。月並みですが頑張って下さい。

by sakaidoori | 2013-11-11 13:31 | レタラ


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