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栄通記

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2013年 10月 31日

2282)②「第88回/2013 道展」 市民ギャラリー 10月16日(水)~11月3日(日)



   
  

第88回/2013  道展  




 会場:札幌市民ギャラリー 
     中央区南2東6(北西角地)
     電話(011)271-5471

 会期:2013年10月16日(水)~11月3日(日)
 時間:10:00~17:30
      (最終日は、入場~16:30まで。)
 休み:月曜日(定休日)

 料金:一般800円 大学生500円 高校生300円 中学生以下無料

 主催:北海道美術協会

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー(10.23)

 2276)①の続き。


 前回は「華としての第1室」とその部屋の立体作品を何点か載せました。
 今回は「これが道展の実力」とでも言いたい第2室を載せます。

 (以下、敬称は省略させていただきます。)



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 第1室、第2室の中から何点か個別作品を載せます。



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   ↑:会員・伊藤光悦(北広島市)、「僕の街」。


 一昨年の大震災跡地だ。地平線に防風林が見える。海岸近くだ。津波であたりの家屋は全壊して、住宅の基礎だけが残った。
 晴れた日の、当地のある時期の姿はこんな感だろう。復興が遅れている地域では今でも見れると思う。「ゴミ」らしきものは整理されていて、何の知識もなければ津波跡とは、直ぐには分からないかもしれない。
 防風林を見て欲しい。震災前は間違いなくびっしりとそこには樹が生えていた、並んでいた。このスキッパーな木立姿が津波によると知らされる前までは、これが普通の景色なのかと思って僕は見ていた。もちろん、変な感覚ではあったが。

 伊藤光悦は現場を見つめる。淡々と瓦解した住宅基礎の風景を描く。それは写真による記録行為と同じであろう。彼は写真家ではなくて画家だ。画家として、この事実を記録して描き残したいのだと思う。もちろん、鎮魂の意味はある。黄色いリボンの旗が見える。これは創作か?創作であれ、事実であれ、画家にとっての希望の象徴だろう。
 晴れた日の家のない風景を淡々と画家は描く。旅人として僕も見た。それを思い出す。





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   ↑:一般・森田知穂(札幌市)、「13-1」・油彩。


 線描的心象風景に色で塗りつぶしながら、輪郭を消そうとしたのか?逆に、心象的な色気分の世界に、輪郭線を挿入しながら何かが立ち現れるのを表現したかったのか?

 もっと激しく描こうか描くまいか?輪郭線はあったほうが良いのか?無いほうが良いのか?でも、色は好き、線も好き。好きなものを淡くみんな入れて、心気分を伝えることができたら。伝える?いや、それはおこがましい、目に見える姿で自分だけでも確認したい。






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   ↑:会員・古畑由理子(札幌市)、「うつろひ17 セグウェイ」・油彩。


 タイトルから理解すれば、人物は17歳の女の子なのだろう。僕は自画像として見た。
 家族を画題にする画家だ。基本は「愛しきものたち」への眼差しだ。煌びやかな色と面で画面を仕上げる。どこか画学生的な堅さ、率直さが残っていて、そこが良いような、良くないような実直な画風だ。
 実直な人はもっともっと徹底的に実直に素直であったほうがいい。今回、「自分」を見つめている姿勢に好感を持った。右側のゴチャゴチャした部分、何を描いているのかが分からないのが良い。あまりに人物を明解に描いているのだから、こういう不思議さがあった方が画面全体を広く見れる。もっとも下の方は仏像を描いているようだ。
 





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   ↑:一般・佐々木睦(神奈川県)、「誰も知らない」・油彩。


 側で見ていた某婦人が、「あら、神奈川県からだわ。そんな遠いところからの参加なんだから、何かの賞をあげたらいいのに」と、仲間と語らっていた。作品を認めての言葉ではない。全くその通りの意味で会話をしあっていた。
 「フムフム、それも良いかもしれないな」と、心で同意をしてしまった。

 それはともかくとして、「白」中心の世界だ。しかも人物らしき姿はダンスダンスみたいで、動きや即興を感じ、「白とリズムのハーモニー」と呼びたくなる。目立つ作品で、受賞も可なりと思うが、審査は厳正にして、僕や某婦人の気持ちなどは考慮外であった。






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   ↑:会員・浦隆一(砂川市)、「Amy of Food Court」・油彩。



 不気味な絵だ。
 楽しく面白く、そしてチョッピリ不思議に、そんな絵を描く人と思っていた。意外であると同時に、まじまじと見てしまった。「過食」などに対する現代社会風刺・批判があるのだろう。それを漫画的なキャラを使って、絵空事とシュール感覚で現実を見つめている。
 それにしても、画家自身がこういう料理を食べ尽くさんばかりのエネルギーがないとなかなか描けないと思う。意欲旺盛な画家に会えて頼もしかった。

 さて、アミ―ちゃんは何から食らいつくのだろう。





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   ↑:会友・島常雄
(小樽市)、「アイアンホーンの転車台」・油彩。



 つい先日、JRニセコ駅に転車台を見てきた。駅構内から小樽方面に線路に沿って1、2分歩く。草むらに覆われていたが、しっかりとその姿を確認できる。歩き回ることもできる。

 絵画はかつての手宮線時代を彷彿させる。弁慶号だかが走っていた時代だ、明治初期だ。可愛らしくて、絵日記の一コマのよう。素晴らしき良き時代、それは「小樽全盛時代」でもあろう。「小樽への愛を込めて」だ。



     ~~~~~~~



 写実力に関しては年々レベルアップを感じる。描写力中心の単なる風景画になってしまったら、入選するのは大変だ。
 写実力としての入選レベル・アップは、さらなるレベルを会友や会員に見たくなる。その期待に応えるのが具象絵画中心の中堅やベテラン画家たちだ。ここんところが問題というか、絵画の難しいところで、もうこの辺りになると確かに上手いのだが、いろんな意味で見る人をうならす作品は少ない。「北海道具象絵画はどこに行くのか?あるいは、何を目指すのか?」という問題になるのだろう。

 現代社会は激動していると言われるが、「豊かさ」のレールの上から眺めれば、安定した一方向に向かっている。だから、日本社会の中で絵画全体に「激しさ」とか、「新奇」とか、「泥臭さ」はそぐわないのかもしれない。「微差」の中でのそれぞれの個性発揮なのだろう。
 そういう時、見た目にわかりやすいのは、唖然とするような技術力であったり職人的な巧みなのかもしれない。丁寧さ、綺麗さが、結果としては行き着く先なのかもしれない。大いなる隠し味として宗教的精神性を埋め込む。幸いというか北海道は、それほどの隔絶した技術力を指向してはいないようだ。日本伝統工芸や国宝級日本美が道内の生活空間から遠いからか。職人的技術や伝統美も普段着の対象ではない。代わりに、隔絶した寒さと白一色の雪世界がある。
 幸か不幸か、比較すべき他者が海の向こうで遠いから、厳しいが恵まれた風土に包まれて独自にマイペースで歩んでいるみたいだ。もっとも、雪的な白さやボリューム感を感じさせる作品もそれほど多くは見つからないが・・・。

 ただ、若い時期はいつの時代も精神的な飢餓状況というものがある。人生なり画業の一時期としての「吐き出し行為」、「人間臭さや泥臭さ」は社会にとって、自然な姿だと思っている。が、そういう激しい作品は少ない。若きエネルギーは「吐き出し」ではなくて、違う方向を向いているのだろう。あえて言えば、「優しさ」というオブラードが必携のようだ。全ては「優しさ」という雪でくるむのだろう。



 ③に続く

by sakaidoori | 2013-10-31 12:25 | 市民ギャラリー


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