2013年 10月 04日
交差する眼差しの方へⅡ '13書展 遠藤香峰 大川嘉美子 須田廣充 竹下青蘭 吉田敏子 会場:コンチネンタル・ギャラリー 南1条西11丁目 コンチネンタルビル・B1F (西11丁目通の西側) 電話(011)221-0488 会期:2013年9月24日(火)~10月6日(日) 休み:? 時間:10:00~18:00 (最終日は、~17:00まで。) ※ ギャラリートーク ⇒10.5(土) 14:00~ ーーーーーーーーーーーーーーーーー(9.27) 所属団体を異にする5人の書展。 「所属団体を異にするグループ展?何だ、当たり前ではないか」と思われるだろう。全くその通りだ。が、書壇という所は不思議なもので、なかなか他の団体との交流展は少ない。女流展とか公募展とか、オール北海道書展などは、確かに交流も兼ねている。が、メンバー個々の責任は問わない。そこから、性別、年齢、学閥、師弟関係、書風や書歴、果ては実力を無視して、真に芸術的錯乱が生まれればいいのだが。 その珍しい、交流書展だ。果たして一般美術愛好家、美術制作者、書家にとってどれだけ刺激的だったか? 僕は結果を抜きにして、こういう交流がもっと増えればと願っている。 ![]() 入り口に、顔見せとして5人の作品が1点ずつ並んでいる。 その後は竹下青蘭を先頭にして、個人個人が順番に並ぶ。 ![]() ![]() ![]() それぞれがそれぞれの方向で意欲的な作品を出している。その意欲と作品数が重なり合って、少しうるさく思う人がいるだろう。曰く、余裕がないと。曰く、思いが強すぎると。 今展は余白美よりも交差に重点を置いている。思いの強さが、深度と拡がり、あるいは自己耽溺を越えて新鮮さを生んだか?その可能性を見るべきだろう。 順番に印象を書いていきます。 (以下、敬称は省略させていただきます。) ![]() ![]() いわゆる前衛書。 青蘭女史の作品を見ていつも思うのだが、ここまで来れば「書」と言おうが、「絵画(墨画)」と言おうが、「日本画」と言おうが、構わないだろう。 書は「文字」だ。文字を構成している線と線質、そこから醸し出される印象が書的なのだろう。 何より、描き手自身が「書」に拘っていないのでは。紙と筆と墨で、線を中心にして青蘭美学を作り上げる、青蘭水墨画を誕生させる、そういう意気込みを見た。 それはともかくとして、上部の塊からこぼれ落ちる線と墨の塊、その緊張感、鋭さは見応え充分だ。 もともと鋭い世界を表現していたが、まだ全体が遠目には草書風の雅も残していた。今回、求めるものに気づいて、真一文字にそれと向かい合っている。そこから生まれる緊張感だ。 ![]() ![]() どの作品をとっても情熱が外に発散している。もちろん、書家は情念を内に溜め込んで、爆発直前の心意気を表現しようと目論んではいるが。 そして字がある種の完成形に近づいている。色々な書風の字を書いてはいるが、勢いなり、筆裁きなり、墨の濃淡なりに統一感が生まれている。問題は、この統一感を更に推し進めるのか?あるいは、一度はがらっとまろやかな字などを試みて、芸の幅を一層膨らませるのか? いずれにせよ、今の才溢れる力強さ・闘う姿勢に何が加わるかが焦点だろう。個人的には雅とかよりも「不思議さ」や「膨らみ」を見たい。 間違いなく、今後、道内の中心作家の地位を固める人だ。大いに個展を開催して、更に引き出しを増やしていくだろう。 ![]() ![]() 上の字、僕には「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と呼んでしまった。字という造形が、三途の川を呪文という態を形作って仁王立ちしているようだ。 書家の根っこに持つど根性精神が、晩年になっても枯れずに「造形」として輝いている。 ![]() ![]() 流麗に陥らず、木訥な風を残し、それでいて流れる気分。 かなの草書はほとんど読めない。読めないのはこちらが悪いから、書家にどうこう言っても始まらない。今作、適度に読めて、ほどほどに意味が分かる。そこも書家の狙いだろう。 漢字の書家に負けないかな書、それでいてしっかりしたかな書を模索したのだろう。 ![]() ![]() 今回、いつもの黒々墨を排して、薄墨に線の勢いを絡ませている。 吉田敏子は墨人会に属している。大きな筆で一文字を書くグループだ。なぜ大きな字かというと、小筆だと小手先でコネコネとしたものになる。足運びを含めて体全体で字にアタックするためだ。心の気を内面からググッとあふれ出す、が信条だ。 今回、吉田敏子は内面性を一端不問にして、筆の自由さ、リズム、その痕跡を主張した。そして字と対峙した。 実は、彼女の書には、本人の自覚・意志とは無縁の魅力がある。黒々した字の流れと、それを取り巻く余白との間に、女性らしいしなやかな美が誕生する時がある。字の魅力ではなく、字を溜め込んで書いた結果としての静寂な余白美だ。絵画的な魅力と言ってもいい。絵画的造形美といえばいいのか。 だが、彼女にとっては字ありきだ。今回はますます先行して字があって、果敢に字を追跡して、強引なまでに美を定着させようとしている。伸びやかで格好いい字が生まれた。 つまり、強引さが出てきた、野心が露わになった。遠慮がちな自信をようやく強き形にしようとしている。あくまでも字として。 ![]() 彼女にしては珍しい字だ。朴念仁的な明後日を向いた「生」だ。遊び字か? ふと、同じ墨人会の樋口雅山房の世界を見てしまった。 影響と言うより、「私だってこれくらい書けるわ。その気にならなかったから書かなかったけど、書いたら結構楽しかったは」、そんな声を感じた。
by sakaidoori
| 2013-10-04 07:57
| コンチネンタル
|
アバウト
![]() 丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
検索
最新の記事
ファン
カテゴリ
全体 ★ 挨拶・リンク ★ 栄通の案内板 ★アバウトの写真について ★ 目次 (たぴお) (時計台) 市民ギャラリー (写真ライブラリー) さいとう 大丸藤井スカイホール (ユリイカ) ミヤシタ テンポラリー af 北専・アイボリー CAI(円山) CAI02(昭和ビル) (大同) アートマン アートスペース201 大通美術館 STVエントランスホール コンチネンタル 資料館 門馬・ANNEX 百貨店 (カコイ・ミクロ) 4プラ・華アグラ 石の蔵・はやし (シカク) ☆道外公共美術館ギャラリー (アッタ) 奥井理g. ★ 案内&情報 ★ 訪問客数 ◎ 樹 ◎ 花 ◎ 山 ◎ 本 ◎ 旅・飛行機・船 ◎ 温泉 ◎ 個人記 ◎ 風景 ◎ 短歌・詩・文芸 ☆★ ギャラリー巡り 写真)光映堂ウエスト・フォー (いろへや Dr.ツクール) JRタワーARTBOX ポルト 写真)富士フォト・サロン 道新プラザ 紀伊國屋書店 S-AIR ◎ 自宅 (ニュー・スター) 札信ギャラリー (マカシブ) (自由空間) 真駒内滝野霊園 サード・イアー (どらーる) 区民センター ★★ 管理人用 山の手 富樫アトリエ (プラハ2+ディープ) ★ギャラリー情報 ★ パンフより 創(そう) (オリジナル) ATTIC 美容院「EX]内 ADP 粋ふよう エッセ ◎ 雑記 ★「案内版」アバウトの写真 ☆北海道埋蔵文化センター ☆三岸好太郎美術館 ☆本郷新彫刻美術館 ☆芸術の森美術館 ☆函館美術館 ☆札幌・近代美術館 ☆モエレ沼公園 ☆旭川美術館 ☆北海道開拓記念館 ☆帯広美術館 ☆関口雄揮記念美術館 (☆夕張美術館) ☆(倶知安)小川原美術館 ☆(岩見沢)松島正幸記念館 ☆(室蘭)室蘭市民美術館 ☆北武記念絵画館 ★その他 【道外・関西】 ー [石狩] [ニセコ]有島記念館 [岩見沢]キューマル 他 [音威子府] [深川] [苫小牧]博物館 [洞爺] ☆小樽美術館 市民ギャラリー [美唄] [江別] [室蘭] [小樽] [帯広] [恵庭] 夢創館 【北広島・由仁】 [函館] [夕張] [三笠] [赤平・芦別] 【幌加内(政和)】 (くらふと)品品法邑 (茶廊)法邑 (カフェ)れんが (ブックカフェ)開化 (カフェ)アンジュ (カフェ)北都館 (カフェ)エスキス (画廊喫茶)チャオ (カフェ・soso) (カフェ)ト・オン (カフェ)アトリエムラ (カフェ)サーハビー 槌本紘子ストックホルムキ記 (画廊喫茶)仔馬 (ギャラリー&コーヒー)犬養 Plantation CAFE BLANC(ブラン) - コレクション ■ 複数会場 公共空間 ー ◎ 風景 新さっぽろg. ー ○ 栄通日記 学校構内 ー ◎ライブ路上パフォーマンス 道銀・らいらっく (コジカ) ▲個人特集 (風景)サイクリング・ロード (風景)札幌・都心 A.S.T(定山渓) 趣味の郷 公共空間・地下コンコース 六花亭 ◎今日・昨日・最近の風景 500m美術館 Room11 アルテポルト・ART SPACE サテライト 【2010年旅行記】 【2010年 ロシア旅行】 【海外旅行】 【2012年上海旅行】 【震災跡地2回目の旅】 【2013旅行記】 ◎ 川・橋 OYOYO コケティッシュ ・我が家 レタラ カモカモ 北のモンパルナス チチ クロスホテル札幌 黒い森美術館 Caballer ▲原田ミドーモザイク画 SYMBIOSIS (ハルカヤマ藝術要塞) 群青(2016) チカホ space1-105 100枚のスナップを見る会 北海道市民活動センター 群青(2018) HUG(教育大文化施設) 札幌グランピスタ 大洋(大洋ビル) - 未分類 タグ
個展(242)
グループ展(183) 油彩画(183) 企画展(153) インスタレーション(115) その他(98) 学生展(93) 現代美術(74) 写真(71) 公募展(70) 写真展(59) 総合・複合展(43) 温泉・山・旅行・雑記(42) 彫刻・金属・ガラス・陶(40) 日本画(38) 北海道教育大学(37) 版画・イラスト(31) シルクスクリーン(26) 藤谷康晴(25) 卒業展(24) リンク
○ 美術関係以外
古い日記 (サカイ・ヒロシさんのブログ) ○ 美術愛好家のブログ Ryoさんのイートアート (サカモト・キミオさんのH.P.) 散歩日記V3 (SHさんのブログ) ○ 表現者のブロブ(相互リンク?) Photo Foto Blue (コバヤシ・ユカさんのブログ) 水彩の旅 (タケツ・ノボルさんのH.P.) アートダイアリー (マエカワ・ヨシエさんのブログ) 画像一覧
最新のトラックバック
以前の記事
2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2017年 08月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 02月 more... ブログパーツ
その他のジャンル
記事ランキング
ブログジャンル
|
ファン申請 |
||