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栄通記

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2013年 09月 28日

2230)「今村遼佑個展 『雨の日/A rain day』」 コジカ 8月30日(金)~9月28日(土)

 



今村遼佑個展 

雨の日/A rain day」
           




 会場:サロン・コジカ
      中央区北3条東2丁目中西ビル1F
      (東西に走る南側。)
     電話(011)522-7660

 会期:2013年8月30日(金)~9月28日(土)
 休み:日・月曜日(定休日)
 時間: 14:00~22:00

※ オープニング パーティー 初日 19:00~

ーーーーーーーーーーーーーーー(9.28)


 またまた最終日に行った。会期は一ヶ月もあったのに悪い癖がでてしまった。今日が最終日だから、つい数時間前のことだ。このブログを見ていく人はもういないだろう。



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 会場の中・・・、な~んにもない。
 『床の補修跡?これが作品?・・・一枚の絵画?このための展示?』
 不気味なまでに何もない。辺りも見回す。



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 やはり展覧会らしい雰囲気はない。何もないのがかえって不気味だ。


 そんな訪問客の戸惑いを確認しつつ、ようやく関係者が説明に来る。こちらからの質問の前に現れる絶妙のタイミングだ。


 「今回は音です。このヘッドホーンを使って下さい。このイスに座って向こうの壁を見ながら聴いて下さい。人の鼓膜に合わせたような自然な音が流れてきます。5分くらいです」
 「音響作家?」
 「そんなわけではないです。今回がたまたま音です」


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 幾秒か何も聞こえない。おそらく、誰もが無音に不安がるだろう。チャンと機械は作動しているのかと・・・。


 後ろで飲食のお客さんと店の人のやりとりがかすかに聞こえる。
 何となく世間の雑音らしい音も・・・、何やら聞こえる。

 「カランカラン、カランカラン」金属音?ガラスが砕けて落ちる音みたいだ。始めは静かに・・・「カランカラン、カランカラン・・・」、長い間一定の音が続く。だんだん大きくなる。自分の周りで本当に何かが砕けて落ちているのではないかと心配になる。頭を左右にきょろきょろする。何も変わってはいない。音はより大きく激しくなり、「落ちる」ではあるが「崩れる」、「崩れていく」という錯覚に陥る。だが、「崩壊の美学」と言うには音があまりに美しすぎて、身を任せてたくなる。・・・

 ひとしきりしたあと落ちる音は止み、後ろの人達の会話が遠い世界からのようにして微かに聞こえる。
 その人の声を聞いていて、「あ~、個展は終わったのだな」と気づく。

 目の前の壁を見ていたのか、落ちる音に幻影を見て辺りの空気ばかりを気にしすぎていたのか、とにかく不思議な体験は終わった。



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 明らかに「落ちる」というテーマがある。それを「崩れ」、「崩壊」と言うにはあまりにやさしい。そして綺麗だ。
 「虚々実々」というテーマを問題にしてもいい。バーチャルな音楽体験で、音が実在か、聞く自分が虚なのかわからなく錯綜する。だから「存在・在るということ・実感」をテーマと思っても構わない。だが、作家はその辺をするーっと通り抜けて、消えていった感じだ。
 一つの嘘を見せてくれたのか?あるいは本当を見せてくれたのか?




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 四隅に別作品があった。やはり音を聞くのだが、こちらは映像を見ながらだ。蛇口からの雫の落ちる音を聞く感じだ。
 「落ちる」が、メインの作品と共有するが、メインの作品の緊張度には及ばない。会場の静けさの装飾として、あるいはメイン作品の余韻としての陳列だろう。



 とにかく優しさが心に残った。「崩壊」ですら優しくなければならないという美学か?「崩壊」というものは優しものだ、ということか。この若き感性に返す言葉が見つからない。



 追記9/28、10時25分

 もしかしたら、誰かとの抱擁を求めているのかもしれない。今は無言の中での音と耳だけ。それを繋ぐのは美しさ。その美しさのように、「人々」に包まれたいのかもしれない。孤独との会話、その先の人との抱擁。そんなヒューマンリレーションを隠しているのかもしれない。
 日本人が、目と目と見つめ合って現代美術を実践するには恥ずかしい。それに、そこまで他者を求めてはいない。音を通して間接的に人の繋がりのメッセージを送っているのかもしれない。




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   ↑:左側、壁面に飾ってある作品。 
   ↑:右側、今回のフライヤ-。



   1982年 京都生まれ
   2007年 京都市芸術大学大学院美術研究科 修士課程彫刻専攻修了






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by sakaidoori | 2013-09-28 21:39 |   (コジカ)


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