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栄通記

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2013年 08月 30日

2175)②「北海道教育大学油彩画研究室 大学院生展(山越美里の場合)」 時計台 終了8月19日(月)~8月24日(土)

   


北海道教育大学油彩画研究室 

  大学院生展
      
        


 会場:時計台ギャラリー 2階 A・B室
      中央区北1条西3丁目 
       札幌時計台文化会館
      (中通り南向き)
     電話(011)241-1831

 会期:2013年8月19日(月)~8月24日(土)
 時間: 10:00~18:00 
      (最終日は~17:00まで。)

 【参加学生】
 山崎麻乃 村岡陽菜 清武昌 橋本知恵 山越美里   

ーーーーーーーーーーーーーーーーー(8.23)

 2167)①の続き。

 (以下、敬称は省略させていただきます。)


山越美里の場合


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 以上、全作品。
 幸い、学生との会話ができた。「壁」から会話は始まった。


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   ↑:「studio JJ」・油彩 キャンバス。



 僕は「壁」に興味を持っている。

 紀伊國屋書店のあるビルに、道教育大学の札幌街角派出所のような一室がある。美術の展示会場「サテライト」で、ご存じの方もいるだろう。そこで昨春、院生4人の展覧会を見た。展覧会としては清武昌に意欲を感じたが、他の3人は身内展の様相で、小品による自分の関心世界を軽く紹介していた。

 その時、山越美里が「壁」に取り組んでいるのを知った。
 僕は「壁」に異様に反応する。が、僕好みからは遠い作品だった。小品ばかりだから、個々の作品に深みのないのは仕方がない。そして、「壁」が好きなのもわかる。が、何故「壁」に拘るかが伝わってこなかった。以来、彼女の「壁」を見る機会があるが、思いは同じだ。
 「壁」の一襞一襞にのめり込むのでもなく、「人生(青春)の壁」とでもいいたい断絶感もない。異次元空間を想起させる象徴でもない。単に壁の質感が好きかというと、それほどマチエールを追求していない。「壁」の何に拘っているのかが伝わってこない。悪くいえば平々凡々、良くいえば自分のこだわりを溜め込んで、将来の爆発のためのエネルギー作り、と解していた。


 今作の壁も以上の意見範囲で収まるだろう。
 結局、好きだから「壁」を描いている、に尽きるようだ。
 そのことをあれこれ言っても始まらない。僕好みが反映されていないからと言って、とやかく言う問題でもない。

 それならば、彼女らしさが本当に出ているのだろうか?好きな画題を直向きに描く、それは制作の過程の問題であり、真摯さは間違いなく伝わる。それは大事と言うよりも画家としては当然なことで、そのエネルギーが結果としてどういう種を生んだかが大事だ。不特定の他人に見せると言うことは、その辺の緊張度が問われる。


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   ↑:「island」・油彩 砂 綿布。


 大学4年時の作品だが、彼女の持ち味としてはこれが一番良いと思う。何が良いか?威張っている。存在が太くて強いだけでなく、相手を見下ろしている。丸みを帯びて太く迫る、そういう絵画特質も充分に出ている。

 こういう威張った特徴ある個性的な「壁」を描けばいいのに、院に行ったとたんにおとなしくなった。自己のセールス・ポイント、チャーム・ポイントを自覚することなく、ひっそりと壁を描き続けた。


 思うに、社会的生活は知らないが、絵に対しては相当に自信家だったと思う。今は、自信喪失とまでは言わないが、自分の中にだけ入っているように見える。





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   ↑:「壁」・油彩 砂 キャンバス。


 今展の中で一番好きな作品だ。壁の外部を描いていないから。
 確かに壁に掛かるハシゴだとかチューブのようなものを描いてはいるが、それは壁の一部だ。
 そもそも、「何故壁を描くか?」という問題意識から出発してはいない。ただ好きな壁を描き続けることに意味がある。その時に、壁のもたれて遊ぶ仲間を発見して嬉しかったのだろう。ようやく描きたい世界に飾りが生まれた。壁も膨らみそうだ。

 この壁もどこか威張った感じがする。そこが良い。彼女の「我(が)」が心地良い。

 壁の象徴性とか、マチエールとか、そんな問題は二の次なのだ、彼女の作品の魅力は。ただ、描き手は意図的に何かを追求してはいないから、とりあえずは技術的に具象力を高める方向を選んでいる。少なくとも、絵は上手く見られるから。「上手く描きたい」という動機はあるのだから。




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   ↑:「01mo」・油彩 キャンバス。


 結局、彼女にとっての「壁」は支持体なのだろう。何かを描くための下地の世界。この壁で楽しく絵画物語を語りたいのだろう。いや、ようやく無意識に物語を作ろうとしている。

 おそらく、「壁」だけを描く時期は終わったのだろう。よくはわからないが、やっと何かを描きたくなった。遊びたくなった。ドアには無意味とも思える装飾的な飾りが侵入し始めた。標識にも、付随的な張り紙を楽しそうに貼った。

 絵としては支離滅裂な感じがするが、やっと太っ腹な両の手のひらの中を楽しく遊び始めた。

 威張り根性と細やかな遊び心、これがもっと上手い具合に両立したら、今より矛盾する形で赤裸々になれば面白い。
 方法はある。もっと自分に自信を持つことだ。絵の中だけでは威張っている自分を誇りに思うことだ。




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   ↑:「(路地だったか?)」・油彩 キャンバス。



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   ↑:「野町」・油彩 砂 キャンバス。



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   ↑:「Calle Toled MAD.」油彩キャンバス。





   1988年 北海道池田町生まれ
   2012年 北海道教育大学岩見沢校 芸術課程 美術コース 卒業



 他の3名も掲載したいのですが時間がありません。少なくとも個別作品の掲載だけはしたいと思っています。
 
 ということで、続かないかもしれませんが③に続く



 

by sakaidoori | 2013-08-30 10:01 | 時計台


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