栄通記

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2013年 08月 03日

2125)「2013年 富樫正雄アトリエ展 -生誕100年『におとポプラ』-」 富樫邸 7月27日(土)~8月4日(日)

2013年 富樫正雄アトリエ展 

 -生誕100年「におとポプラ」




 会場:富樫正雄アトリエ・ギャラリー
     手稲区富丘2条7丁目2-13  
     (JR手稲駅より徒歩約10分。
     国道5号線沿いのバス停より徒歩約3分。)
     電話(694)4218 (富樫耕)

 会期:2013年7月27日(土)~8月4日(日)
 休み:8月2日(金)
 時間:11:00~17:00
     (8日はコンサートの為、~13:00まで)


ーーーーーーーーーーーーーーー(8.1)

 この日は本当に光り燦々だった。なのに風景写真を一枚も撮らなかった。なんという余裕のなさ。



 富樫邸の富樫アトリエ展。会場風景を載せます。会場に差し込む強い光、そのさわやかな影、部屋を満たす太陽の力、そして外の空気も想像しながら作品を見て下さい。



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 今回のタイトルは、1975年夏制作の「におとポプラ」です。
 まず、その作品を載せます。
 そして、制作年「1975年」に拘りながら、その作品を中心にして書いていきます。


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   ↑:「におとポプラ」。


 「にお」とは、「刈稲を円錐形に積み上げたもの」、と某辞書にある。北海道では酪農用の牧草を積み上げたものを「にお」と呼んだようだ。道外全域で「にお」と呼ばれていたかどうか?この言葉自体も方言的要素が強いと思うが、「稲藁」転じて「牧草」になったところが興味尽きない。


 それはともかく、作品は「にお」に焦点を合わせて大きく堂々と描いている。富樫風景画で、一点中心主義で描くのも珍しい。初めて見る作品でもある。それが、今までにない構図であり画題だと思うと強く興味が惹かれる。
 今展で、こういう作風の作品がないかと見渡したら・・・あるではないか。しかも、今までは一点中心主義の絵画としては全然見ていなかった・・・。


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   ↑:「春近い泉のほとり」・1974年制作


 氏の代表作の一つだ。
 雪のボリューム感の力強さは、「春は近いな~」というのんびり心ではない。春とか、夏とか、秋とか、冬とか、そういう季節感なり詩情とは趣を異にしている。もちろん、北海道人だから春への思いは強いだろう。だから、見る人も画題としての「(季節としての)春近し」、に焦点を合わせがちになる。
 一方、窪地の草々は至って普通だ。その普通さと雪の強さが対比をなしているのが一大特徴で、ある意味では雪しか描いていない。表現上は真ん中を抜かして描いているが、一点中心主義の絵画と見ても構わない

 この作品は1974年だ。「におとポプラ」の一年前だ。(氏の画歴から判断すべきだが、僕は勝手に今展のみで以下のことを判断した。)

 1974年を頂点にして、独り立ちする個の力強さを求めた頃ではないか。その余韻が「におとポプラ」だ。74年作の雪がそうであるように、この「にお」を擬人化してみてもいい。一点の「にお」を見る、そして「描く」・・・。が、この作品は氏にとっては思い深いものであろうが、代表作にはならないだろう。木の葉の一枚一枚の動き、その隙間の息吹、生命力を、全体風景の中で生かす作家だから。あまりに一点のみに拘ると、氏のもつ調和精神や詩情が弱くなる。いや、見えなくなる。


 そして、1974年、1975年の意味だ。61歳頃だ。
 (以下は、これまた僕の勝手な想像だ。)

 その頃は、1970年安保闘争という熱き政治が完全に終わった時期だ。中近東で局地戦争も発生したが、政治を語るのではなく、油輸入減→油代高騰→油関係の商品不足→トイレット・ペーパーがお店から無くなる、→・・・。ということで、テレビの話題は戦争を素通りして、トイレット・ペーパーなどの日常品確保が話題の中心になった。

 氏は戦後、生活派を標榜して絵画活動に専念した。この作品を描いた頃は、焼け跡時代の戦後とは違った意味で、「個」の問題を意識した時期ではなかったか?それが「強い雪」になり、「個のような『にお』」になった。

 が、特定の命題を追い続ける画家ではない。この絵の中にある「力強さ」を保ちながら、どちらかと言えば「風の人・会話する人」、として風景全体を見つめていった。
 熱き政治が終わった頃、改めて「個と社会」を強く意識し、そこから離れていった時期・・「におとポプラ」をそんな風に見た。


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   ↑:「手稲の秋」・1970年代。



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   ↑:「三月のサンタルベツ川」・1987年。




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by sakaidoori | 2013-08-03 13:18 | 富樫アトリエ


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