2013年 05月 23日
[現代書と彫刻のコラボレーション] -環境空間アートの提案- 会場:ギャラリー・エッセ 北区北9条西3丁目9-1 ル・ノール北9条ビル1階 (南北に走る片側2車線道路の東側。) 電話(011)708-0606 会期:2013年5月21日(火)~5月26日(日) 休み:月曜日 時間:10:00~18:00 (最終日は、~15:00まで) 【参加作家】 書 :太田秋原 太田俊勝 小林靖幸 樋口雅山房 吉田敏子 渡邊佐和子 彫刻:小林一夫 西村潤 ※ 長野巡回展 2013年6月1日(土)~6月9日(日) ーーーーーーーーーーーーーーーー(5.22) 書は墨人会の有志です。書家と彫刻家の関係はわかりません。仲間達でしょう。 書の空間作りに立体作品が邪魔せずに静かに参入。書そのものは伝統と文化の塊だ。書家それぞれがなんとか現代性を出そうとしていて、それぞれの書風同士が、「何かを出せたか?」をさらりと確認しているみたい。 そういう書家の「古典-現代」のささやかな格闘に対して、現代立体作品がフワーッと相槌をうって応援している、そんな見方を僕はした。 道外からお二人の書家が参加している。 その方達から載せていきます。 8名の参加です。中途で終わるでしょう。 (以下、敬称は省略させて頂きます。) ↑:左側、上から 「光」・(全て)70×45㎝、「土」、「水」。 ↑:中央、「行」・90×70㎝。左側、「色」 左側の作品は分かりやすいし、見ていて楽しい。 対して、右側の2作は意味不明な感じで戸惑ってしまう。 もし、右側の2作だけの出品だったら見過ごすだろう。左側の明快な主張のある作品があるから、書家の実力を感じて、改めて右側の2作をしげしげて見定めることになる。 前衛的な試みと解したくなる。 肉をそぎ落として骨格だけにしようとしているみたい。何のためのそぎ落としか?骨格だけによる力強さとか、美学とか、そういう枠内に収めたくないみたい。北宋・徽宗(きそう)皇帝の針金文字が有名だが、彼の字には強さと品がある。何より男の色気が漂っている。渡邊佐和子・書、気分は針金的だが、皇帝の字とは心意気が全く違う。 幸い書家がおられた。「新たな試みというより、もともと自分自身にあったもの・・・」、そんな風な言葉をもらった。 「書そのもの」の探求から生まれた姿ではないようだ。「書と自己自身」の関係から生まれようとしているのだろう。だとすれば、絵画的美術を通り越して、現代表現そのものだ。美とか分かりやすさから離れがちになるのも当然かもしれない。 ↑:左から、「清」・90×70㎝。「鬱」・140×90㎝。「願」・70×90㎝。 一文字には違いないが、表現に幅がある。それは前回の渡邊女史にも言えることだが、見ていて感心する。 「書」にとって引き出しの多さは絶対だと思っている。「字」という約束事に縛られた芸術だから、すぐに型にはまりやすい。ある意味、芸術一般は「型」と言い切っても構わないかもしれない。古典は伝統という型、現代は表現者自身という型だ。その表現者自身に型があるのは仕方がないが、可能性を制約させる型であっては困る。 書かれた字について。 渡邊女史の字は中国八卦のような字の印象だ。「空」というか「直感」的な感性による自由表現か。 対して、小林幸康は僧侶的な字を思った。個人の安心立命というか、慾多き心の有り様を書で解放しているみたい。濁を背景にして、書で自由を確保しているのかもしれない。気楽度が高まれば、より文人肌になっていくのかも。 ↑:左から、「己」・70×50㎝。「燃」・50×70㎝。「道」・50×70㎝。 「己の燃える道」、それが太田俊勝・道かもしれない。確かに願望かもしれない、見果てぬ夢かもしれない、燃えるような「書」を目指していたのかもしれない。 北海道墨人展で親しんでいる書家だ。今展の3作、普段の団体展とは違って、素直に綺麗に格好良く自分の気分を出していると思う。確かにこういう字は能書家のものであり、競争展で見ても上手さが目立つだけで面白味に欠けるかもしれない。 だが、時にはこういう字を世間に見せるのも良いことだ。「太田俊勝は上手いぞ!どうだ、上手いだろう」といつになく威張っている。心地良い威張りだ。 ↑:左から、「道」・70×68㎝。「心」・68×70㎝。「微」・68×70㎝。 薄墨で筆先露わにシャープな線と綺麗な空間を表現している。才長けた調子だ。 なぜ薄墨かを尋ねた。筆先の乱れた線を強調したかったからか?ご本人は、「なかなか濃い色がでないのです」とのことだ。すかさず他の書家が、「筆は柔らかいのですか?」「いえ、硬いです」 僕は薄くても濃くても構わないのだが、できれば吉田敏子には濃さ加減を自由に使いこなして欲しい。 基本的には彼女は字を書く人だろう。結果的に、字と余白のバランスが絵画的で心地良い空間を生んでいると思っている。おそらく、書家の本意とは違った魅力があると思っている。その書家の本意と絵画的魅力を繋ぐものが、線の流れと色の濃さなのだろう。 精神の自由が流れになり、意欲が濃さに現れる。そんなことを今作で思った。 ↑:左から、「楽」(古文)・100×54㎝。「舞(古文)」・112×90㎝。「遊(古文)」・90×58㎝。 いつもながらサービス精神旺盛な樋口雅山房だ。 板に書いている。細胞の塊のような筆跡が面白い。線ではなく、筋の表現になっている。伺えば、「たまたまです」との返事だ。板の下地処理が、こういう結果を生んだのだろう。絵の好きな書家でもある。思わぬ絵画誕生に一人舞い上がって楽しんだことだろう。遊び心のなせる技だ。 ↑:左から、「樹」・142×180㎝。「この命ひとつ」・140×40㎝。「花」・24×67㎝。 植物に託す生命力を書の内発力で表現したものだ。ストレートな生命賛歌だ。 1941年生まれと図録にある。71歳か?真一文字で元気な字だ。これからがオレの字だ、と言わんばかりだ。精神の若さ、それを保つ人なのだろう。 立体作品、愛おしい作品が会場でたむろしています。学生諸氏には間違いなく勉強になる作品です。見に行って欲しい。書にこだわりすぎて、あまり掲載できません。 手の中の宝物のようだ。書の片手間に楽しむようなものではない。会場のある建物は、現在外壁工事中だ。外からこれらの作品は見にくい。本当に残念なことだ。 小諸市の人だ。藤村の「千曲川、小諸なる古城のほとり・・・」を思い出す。一度だけだが、通りすがったことがある。高台から憧れの小諸川を見た。近くの美術館にも立ち寄った(小山敬三美術館)。もう一度行きたいものだ。 立体作品群、目立たず騒がず、キラリと小さく・・・。 ~~~~~~~~~~~~~ 書を語るのはシンドイ。こちらに書の実践と素養がないというのが大きな理由だ。ただ今、中国史を勉強しているので、素養の無さを中国史でカバーしようと思っている。 「書の語らい」をあまり聞かない。語るルールが無いようなものだ。これは書家や文化人の怠慢だと思っている。 そして、書家は人生のベテラン達が大半だ。そういう方達を感想ではあっても一刀両断的な言い切りで進めていくのは難しい。失礼なことこの上ない。 が、「字」は日常茶飯事としてそこにある。「書」も人生の流れで親しんでいる。本質に迫れなくても、何かは書けるだろう。本質に迫る必要はない。「語り」こそ人生だ。「栄通記」、楽しんだ展覧会は記したい、語りたいと思っている。
by sakaidoori
| 2013-05-23 11:25
| エッセ
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丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
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