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栄通記

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2013年 05月 10日

2043)「森本めぐみ 個展 『とがった いわ』」 門馬 4月19日(金)~5月11日(土)

  

森本めぐみ 個展 

とがった いわ    

   
 会場:ギャラリー門馬 & ANNEX 
      中央区旭ヶ丘2丁目3-38
       (バス停旭ヶ丘高校前近く) 
     電話(011)562ー1055

 会期:2013年4月19日(金)~5月11日(土) 
 時間:11:00~19:00

 ギャラリートーク & パーティー ⇒ 4月21日 16:00~ 
                         聞き手・薗部容子(近美学芸員)

ーーーーーーーーーーーーーー(5.4)

 (以下、敬称は省略させて頂きます。)


 母屋全館を使っての展示。
 タイトルは「とがった いわ」。

 「エエンイワ」、頭の尖っている山の意で、支笏湖に面した恵庭岳のことです。「とがった いわ」とはその山を原点にしての創作衝動を表現した言葉でしょう。作家が通学路の歩道橋で目にしていた山とのことです。

旧作が沢山ある。その一つ一つが「とがた いわ」を意識してのものではないだろうが、今の作家の心をしめているのが「とがった いわ」だから、そこに至る道程として、それらはあるのだろう。見る方としては、「あっ、あの時の作品だな」とか、「見慣れた作品が全然ないな」とか、今展の全体に関係なく作家の今のありようを想像してしまう。無い作品ははっきりしている。強烈な「目」のあるキャラクター絵画だ。

 それはともかくとして、滞在作品は印象深い。



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 写真を撮っている位置の左側に巨大な作品がある。全体写真を撮り忘れたので、廻りとの関係が見えにくいでしょうが、その作品がこれです。


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     ↑:「くぼみ火山(真夜中に)」・2013年 水彩紙 アクリル絵の具。


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 玄関から洒落た廊下を通って、半間のドアを開け、リッチな居間に入ることになる。そのドアの向こうの目の前に作品がある。絵画があまりに大きくて、ドアの位置からは全体は見えない。見えるのは・・僕の場合は白い楕円形の部分だ。大きな目だ。吸い込む吐き出す巨大な白目だ。

 何を描いているわけでもなく、実に色気のない絵だ。画題の何かにおもねることなく、岩が尖っていようがいまいが、「恵庭岳という原風景」から限りなく遊離して、いや、「とがったいわ」と言うへばりついては現れる自分のイメージにチャレンジしている。
 絵には金色銀色吹雪が舞っている。
 その吹雪が何だろう。噴火の痕跡といえば大過ないが・・・支笏湖の自然史を讃歌なのだろうが・・・、画家自身の情熱なのだろう。若くて明るくて、前向きな舞いだ。輝きたいのだろう。

 そんなことより、やはり「白い目」だ。何かを描くことに、表現することに喜々としていた人が、まるで喜びも悲しみも関係ない。「私の目」という存在と向き合っているみたいだ。



 2階に行きます。

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 僕はこの手とピーナッツのデッサンが大好きだ。
 大きな手だ。「手の人・森本めぐみ」と呼びたいくらいだ。実際、彼女自身も「手」に多大な関心を抱いているのでは。今は「何かをいじり、感じる手」という動作・触覚の主人公だが、手そのものにも、いつか強烈なアプローチをするのではと勝手に想像している。


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 ピーナッツを描きたいわけではないのだろう。「百体めぐみ手」だ。とにかく優しくいたわるように「手」を描いている。




 隣室では映像作品が流れている。昨年、北広島で発表していた。やはり「手」が主人公だ。まろやかで、健康的な手だ。触っている、こねくり回す、動いている。



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 もう一度1階に降りて、居間にあるスケッチ小品を載せます。


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     ↑:(大作の部分図。)


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 最後に、玄関先の廊下(踊り場)に展示されている小品を載せます。



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     ↑:左側、「布団山(青かべの前の)」・2012年 板 アクリル絵の具 ニス。
     ↑:「布団山(蝶柄の)」・2012年 板 アクリル絵の具 ニス。




 さて、最後に。

 山もいい、手もいい、回顧風もいい。が、会場のリッチな気分には弱々しく感じた。
 「理」の強さを感じた。
 「とがった いわ」という言葉に心が占められて、「まろやかな森本めぐみ」になりたいみたいだ?逆手にとって「とがった 森本めぐみ」で行けばいいのに。

 森本めぐみは華のある作家だと思っている。心に悩める塊があり、その塊をまさぐり、あれこれと試行錯誤する、その一つの区切りが今展のようだ。それはそれでいい。が、そういう探求軌跡は心に仕舞い込んで、華ある中の味の素にして、グイグイと人に迫り、感性剥き出しで、画題の人間と色と形と喜怒哀楽を共にする、そんな姿を勝手に夢見ている。

 今展の大作は素晴らし。が、全く人がいない。意図的に「人」を封印している。大事な「人」を封印する年齢ではないと思うが。「人間」、「人間群像」のある大作をより見たい。たとえそれがキャラクターであっても。トゲある目があろうと無かろうと、人人人で迫る、華華華で乱舞する・・・、そんな「表現者・森本めぐみ」だ。

by sakaidoori | 2013-05-10 19:21 | 門馬・ANNEX


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