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栄通記

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2013年 03月 28日

1995)②「山田航歌集『さよなら バグ・チルドレン』をめぐる変奏展」テンポラリー 3月16日(日~3月31日(日

  
山田航歌集 「さよなら バグ・チルドレン

             をめぐる変奏 展
        



 会場:テンポラリー・スペース
      北区北16条西5丁目1-8
       (北大斜め通りの東側。
       隣はテーラー岩澤。)
      電話(011)737-5503

 会期:2013年3月16日(日)~3月31日(日)

 休み:月曜日(定休日)
 時間:11:00~19:00 

 【参加作家】
 野上裕之(彫刻) 藤谷康晴(絵画) 佐々木恒雄(絵画) 森本めぐみ(造形)
 高臣大介(ガラス) 久野志乃(絵画) 吉原洋一(写真) アキタ ヒデキ(写真・文)
 ウメダマサノリ(造形) 森美千代(書) 中嶋幸治(造形)
  メタ佐藤(写真) 藤倉翼(写真) 竹本英樹(写真) 及川恒平(ソング)
  
    ・・・(ブログ「テンポラリー通信」よりコピー)


ーーーーーーーーーーーーーー(3.22)

 1988)①の続き。
 (以下、敬称は省略させて頂きます。)



1995)②「山田航歌集『さよなら バグ・チルドレン』をめぐる変奏展」テンポラリー 3月16日(日~3月31日(日_f0126829_22454594.jpg



1995)②「山田航歌集『さよなら バグ・チルドレン』をめぐる変奏展」テンポラリー 3月16日(日~3月31日(日_f0126829_22462287.jpg
     ↑:森美千代、「掌のうへに熟れざる林檎投げ上げてまた掌にもどす木漏れ日のなか」


 「投げ上げた書がひらひらとテンポラリーの西日の中に漂いそう」、そんなムードで、書は落ちずに天井にある。
 が、短歌の含意はそうではない。
 掌に青みがかった林檎がある。その林檎を上に投げる。視線は乙女を追うようにして林檎の軌跡を愛おしむ。日が当たる。その中に乙女を愛でるようにして林檎は掌に帰ってくる。愛撫する。かじろうか、そっとしようか。熟す(大人になる)のを止めたい。
 きっと評者は動きや光や色をも捉えた瑞々しい青年の感情、恋心の機敏に感嘆することであろう。

 森美千代は写真もする。写真の方が自由に表現している。
 「書(かな書)」・・・習い事という約束事に身を置いて、さらに「文字」という約束事を倦まずにもくもくと書き続けている。自己表現と言うよりも、筆が約束事の文字をスルーっと自由に描ききる、その時が来るのを待っている。律儀に真面目に自由が筆や腕に乗り移るのを待っている。そういう意味で、書に関しては努力し、待つ女だ。
 そういう堅さ律儀さが彼女の書にはあった。今もある。が、大きくのびやかな気持ちが、今回はある。熟女的乱舞する姿は皆無、乙女的パリパリ感を通り過ぎて、独り立ちしよう、そんな書に見えた。



1995)②「山田航歌集『さよなら バグ・チルドレン』をめぐる変奏展」テンポラリー 3月16日(日~3月31日(日_f0126829_23454287.jpg
     ↑:(赤い作品) 中嶋幸治、「楽器庫の隅に打ち捨てられてゐるタクトが沈む陽の方を指す」


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1995)②「山田航歌集『さよなら バグ・チルドレン』をめぐる変奏展」テンポラリー 3月16日(日~3月31日(日_f0126829_23494845.jpg



 捨てられたタクトの目線は何処だろう?滅びの美学か?指さす希望か?
 中嶋幸治・作品、タクトに注目すべきか?全軍の指揮者か?独立独歩の象徴か?
 血潮のほとばしる手に注目すべきか?それは意志力か、権力か?

 彼の作品には常に滅びと強さが同居し、それらが色に包まれていた。砂の白、圧迫線の黒、紙のクリーム色が意志と美学を象徴していた。そして今展は赤だ。

 手は武骨なまでに大きく力強い。美術品としてはいつまで存在できるのかと惜しみたくなる。無くなることを作家は意に介さない。無くなる一歩手前の存在に常に向き合っている。

 キツサと強さとシンプルな美学、そして「中嶋幸治、我が道を行く」ということか。




1995)②「山田航歌集『さよなら バグ・チルドレン』をめぐる変奏展」テンポラリー 3月16日(日~3月31日(日_f0126829_0203128.jpg
     ↑:梅田マサノリ、「旅行鳩絶滅までのものがたり父の書斎に残されてをり」


 最近の梅田マサノリは標本シリーズを一端中止している。今展、先祖帰りのようにして標本でご挨拶だ。

 氏の標本シリーズの特徴は、すこぶる真面目で本格的なのだが、どこかが何かが変なのだ。意図的なのか、たまたまなのか、氏の性なのか?今作もそうだ。どうのこうのと言うほどのことはないのだが、腫瘍がベタッとこちらの肌に引っ付く感じだ。作家は良い人だから良性の腫瘍だろう。でも、作品は悪い人で悪性かもしれない!



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          ↑:藤倉翼、「永遠といふ名の青い週末に死よりも少し愉しい旅を」。


 短歌は楽しくないものだが、美人がニッコリしていてホットする。
 白装飾は黄泉への旅立ちなの?そんな無粋な。抱きしめあって昨日や明日を忘れよう。それが美女という仙薬だ。普通にロマンティックにくつろいでいる写真家・藤倉翼だ。



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     ↑:メタ佐藤、「真っ白なことばが波に還ってもこの国道は続いてほしい」。


 写真作品、私や回りが写り過ぎですいません。見た人にとっては記録になるでしょう。
 余計な現象を想像力で消去して、原作回帰を試みて下さい。これも「メタ」作業かもしれない。


 
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     ↑:久野志乃、「粉と化す硝子ぼくらを傷つけるものが光を持つといふこと」


 最近の久野志乃作品に、傷つけられる弱さはない。自信に満ちて強い青で何かに突き進んでいる。
 その彼女が、こういう自傷の句を選んだ。彼女が求める光には「ガラス」という刃があったのか?この句を知って、あらためて自身の光を再考したのか?
 こういう句を選んだ画家に一抹の不安を覚える。今の強さは強迫観念ではないと思いたい・・・。



1995)②「山田航歌集『さよなら バグ・チルドレン』をめぐる変奏展」テンポラリー 3月16日(日~3月31日(日_f0126829_0585393.jpg
     ↑:森本めぐみ、「世界といふ巨鳥の嘴を恐れつつぼくらは蜜を吸つては笑ふ」


 どうも、森本めぐみという人は、グループ展になったら小さく見える。考え過ぎなのか、どこか性格が引っ込み思案なのか?確かに、こういうお伽噺のような小さな世界も作る人だ。が、僕には解しかねる。チャレンジ精神が皆無だ。おそらく、自分の世界に没入しているのだろう。それはそれで精神の安定には欠かせないのだろう。

by sakaidoori | 2013-03-28 08:04 | テンポラリー


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